アメリカと日本で活躍する不動産投資家、石原博光さんが、アメリカ不動産投資の方法や、日本でも参考にできるノウハウをお伝えする本連載。第5回目の今回は、リフォームやリノベーションの方法、アメリカの物件の設備などについて紹介いただきました。
たくさんの写真とともに、お楽しみください。
「原状回復」の考え方に違いは
こんにちは、石原博光です。今回は、「リフォーム」や「リノベーション」について、お話をさせていただきます。
アメリカと日本の文化ではまったく違う部分もありますが、一方で、実は日本の物件においても参考にできる考え方もあるのではないかと思います。少しでも参考にしていただければ幸いです。
まずは、「原状回復」についてお伝えしましょう。
とは言え、アメリカ不動産投資における原状回復も日本とそこまで変わりません。敷金はデポジットの形でいただき、退去の際には修繕に必要な分を差し引いてお返しします。経年劣化部分は大家側の負担になりますが、法律で明確に範囲が定まっているわけではありません。請求できるかどうかは管理会社の腕次第…という部分も多いですね。
原状回復費用は物件にもよりますが、1戸あたりだいたい2500ドル前後になるでしょうか(と言っても、入居者の使い方次第ではありますが…)。僕が所有しているのはすべて建物面積100平米以上の戸建てですが、先日おこなった時はそのくらいでした。家賃の2倍程度です。このうち、約半分が入居者負担となりましたので、家賃1月分の出費となりました。
流血沙汰はよくあること!?
原状回復で対応する内容の1つが、「壁の穴埋めと塗装」。これはほぼマストになります。
「穴埋め」とはどういうことかと言いますと…実は、退去した部屋を見てみると、だいたい壁に穴が開いているんです。蹴飛ばされたり、パンチされたり、あるいは物が激突したりで開いた穴です。びっくりしますが、アメリカではよく見られます。
僕の物件でも、一度「流血」の跡が見つかったことがありました。どんな事件があったのかと怖かったのですが、実は夫婦喧嘩が原因だそうで…。壁どころか天井にまで飛び散った血しぶきがそのままだった状態にも驚きましたが、管理会社の担当者によると「よくあること」だそうです(笑)。
そんな風に開いた穴ですが、塗装業者に依頼をすれば、そんなに費用をかけずに修繕が可能です。アメリカの物件の壁は、クロスではなく基本的には塗装。壁の穴埋めと一緒に塗装を頼みます。
ちなみに、塗装は既存の塗料と同じものを重ね塗りしてもらうことがポイントになります。費用を抑えることができるのに、重厚感やつやが出てきますよ。アメリカでは、ガレージにその物件で使用している塗料の缶を保管しておくことが多いです。そうすれば、いざ塗装をするとなった時に同じ塗料を使うことができます。
このほかにも、割れてしまったタイルやよれてしまったカーペットといった、床の原状回復ももちろん行っていきます。カーペットは全部取り替えるのではなく、染み抜きやしわ伸ばしの専門業者を使って、費用を安く抑える工夫をします。全て張り替えた場合に比べて、数分の1程度の費用で済みますよ。
また、タイルは割れてしまったところに同じものをはめ込むのですが、数年後に同じ柄模様のタイルが売っていない…なんてこともありますので、基本的には予備のタイルを複数枚保管しておきます(これもだいたいガレージに積んであります)。それか、絶対に廃れない「テッパン」の柄を使うのがおすすめです。
とにかく巨大なエアコンにお金がかかる
次にお話するのは「大規模修繕」について。戸建て中心の米国不動産投資で、大規模修繕時に最もお金のかかるものの1つが「エアコン」です。
暑すぎる、寒すぎるといった状況は生命の危機にかかわってしまうため、物件の大きさによって、どのくらいの出力のエアコンを使わなければならないかが法律によって定められています。およそ250平米までの広さであれば1機で事足りますが、この1機の設置にだいたい1万ドル(100万円前後)かかります。20~30年に1度交換が必要になってくるので、こうした時に出費がかさむんです。
ただ、20~30年で100万円と思えば、安く思えるかもしれません。なお、1万ドルというのはダクト工事やクレーンを使って既存品の撤去をしたり新設をしたりする施工費も含むので(専用架台の設置、役所の検査官によるテストもあります)、エアコン単体であればだいたい2000~3000ドル程度です。
また、大規模修繕と言えば、屋根。アメリカの物件でも、当然修繕を行います。多くの物件の屋根には、「アスファルトシングル」という屋根材が使われています。耐久性に優れたシート状の屋根材です。
瓦に比べれば耐久性は劣りますが、最も短くても10~15年は持ちます。また、シートなので軽く、躯体への影響が少ないことがメリットでしょうか。先日、僕の貸している物件でも、雨漏りの部分補修と言う形でアスファルトシングルの重ね張りを行ったのですが、だいたい1200ドル(12万円くらい)でした。
キッチンも巨大、総入れ替えで50万円超
キッチンについてもお話しておきたいと思います。アメリカのキッチンは、日本に比べて高額です。なにせ、とにかく広いんです。日本だと、ファミリータイプでもだいたい2~3メートルくらいの幅のものが多いかと思いますが、こちらでは、5メートルくらいのものもザラにあります。
僕の物件でもキッチンの総入れ替えをしたことがありますが、全部で5、6000ドル(約50万~60万円)かかってしまいました。
一般的なキッチンには、ダブルシンクや蛇口、換気扇にキャビネット、天板、ストーブ(オーブン付コンロのことです)、マイクロウェーブ(電子レンジです)、食洗器、ガベージディスポーザー(生ごみ処理機)なんかが作り付けてありますが、それぞれ別売りとなっているものを1つずつチョイスして、完成させます。
コンロも、5口、6口あるのが当たり前。買った物件のコンロがやや小さかった(それでもしっかり4口あったのですが)時には、「こんな小さいストーブじゃダメだよ!」と管理会社や工事に来たオジサンたち全員からダメ出しをされ、わざわざ買い替えたほどです(笑)。日本人からすると、信じられないですよね。
日本でも塗装をしてみては
さて、ここまでアメリカの物件におけるリフォームなどについてお話をしてきました。これらの方法のいくつかは、ほかの物件との差別化をするために、日本でも生かせるのではないかな、と考えます。
例えば、内装の壁紙。日本ではクロスを使うのが一般的ですが、塗装にしてみてもいいのかな、と思います。ちょっと雰囲気が変わるので、差別化が図れるのではないでしょうか。
実は僕も、元和室の砂壁を「薄めた木工用ボンド」で固めて(こうすれば下塗り塗料であるプライマーの20分の1の費用で済みます)、壁も天井も木部も全部塗装仕上げをした部屋がいくつもあります。とにかく原状回復が安く済むので気に入っています。
この方式を採用して15年目になりますが、今まで特に問題はありませんでした。木工用ボンドは乾くのに1日かかるので、その点は注意が必要ですが…施工も簡単ですから、安くまとめたい方はいかがでしょうか?
また、カーテンではなくブラインドを取り付けてみるというのもいいかもしれません。狭い部屋でも広く感じさせる効果もありそうです。
もう少しお金をかけるのであれば、シンクの下にガベージディスポーザーを取り付けてみるというのはいかがでしょうか。最近は、分譲マンションでも設置されているところがあるかと思いますが、ディスポーザー自体は日本だと3万円台からあるようです。特にファミリー向け物件だと、喜ばれるかもしれませんね。
キッチンは天板の材質に費用をかけろ
キッチンは家の価値(家賃)を左右するほど影響力があります。いわゆる家の「顔」ですから出来るだけこだわりたいのですが、価格自体も大きな差があるので実に悩ましい問題です。
そこで僕のおすすめは、カウンタートップ(天板)の材質だけ費用をかけろ! というものです。
大きく分けて、価格が高いものから順番に、自然石や人工石、セラミックタイル、ラミネートとあります。日本で主流のステンレスはアメリカではレアです(変わり種としては、木製やコンクリートなんてものもあります)。
自然石も種類が豊富ですが、グラナイト(御影石)が耐久性もあり、見栄えも良く、一番おすすめです。タイル敷きは目地の汚れを嫌う人が多く(修復できます)、ラミネート加工の天板は熱に弱く、やはり重厚感で見劣りします。
それから換気扇ですが、アメリカでは換気用ダクトが外につながっていないものが結構あることに気がつきました。フィルターで空気をろ過するだけの室内循環方式です。日本にも室内循環型レンジフードがありますが、専用に開発された機械は高く、また、こまめな掃除が必要ですが、米国においてはそう言った専用機ではなく、従来型の換気扇をその用途に利用しています。
国が違えば、常識も変わるものだとつくづく思う発見でした。
おまけ・石原さんのアメリカこぼれ話
パソ・ロブレスといえば、温泉やワイナリーで有名なカリフォルニア州の都市。街全体がなんとなくおしゃれで、セントラルコーストに近くて、カリフォルニアンに人気のスポットです。
モロ・ベイ(港町)を散歩した帰り道に立ち寄った、街中のとあるバーで食べたハンバーガーがこの一枚。見た目よりもでかくて、でも美味しくてペロリと完食でした。口コミ評価に偽りなし! 機会があればぜひ(笑)。
(石原博光)
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