聴聞に出席した国交省側の担当者=21日午後、さいたま市のさいたま新都心合同庁舎

投資用アパートの融資でオーナーの預金残高を改ざんしていたことが明らかになった「TATERU」(東京都)について、業務停止命令を予定している国交省関東地方整備局は21日、同社側から意見を聞く「聴聞」を実施した。同社の古木大咲社長はエビデンスの改ざんについて「事実関係に間違いはなく、申し訳ない」と謝罪。同社の代理人弁護士は「オーナーに損害が発生しておらず、被害者は存在しない」とし、業務停止命令より軽い業務改善命令が妥当と主張した。

エビデンス改ざん350件

TATERUは昨年5月、投資用アパートの販売にあたり、オーナーの預金残高を改ざんして西京銀行に提出し、融資を受けさせていたことが発覚。楽待新聞では複数のTATERUオーナーへの取材を基に、創業初期からエビデンス改ざんやレントロール偽装などの不正が横行していた可能性について報じてきた。

「第二のスルガ問題」か…急成長「TATERU」書類改ざん
TATERU、創業初期から不正横行か

これらの報道から約4カ月後の12月末、TATERUは外部弁護士らで構成する特別調査委員会の報告書を公表。2015年からの調査対象期間で、営業部長や部長代理を中心に31人が350件のエビデンス改ざんを実行したことを認定し、厳しい販売目標のノルマや成約棟数に応じた歩合給の給与体系、営業本部長らによるパワハラなどが背景にあったとした。

古木社長「深く反省しています」

今回行われた「聴聞」は、国や県などの行政団体が法人や個人に対し、許認可取消や資格のはく奪などをする際に必要な手続きで、不利益処分を受ける相手方の弁明を聞くことが目的。古木社長と代理人弁護士らが出席した。

国交省側は、遅くとも2015年7月ごろから18年7月ごろにわたり、TATERUの営業部長や部長代理ら31人が、336件の売買契約で自己資金のエビデンスを改ざんして金融機関に提出していたと指摘。宅建業法第65条2項5号の「宅地建物取引業に関し不正又は著しく不当な行為をしたとき」に該当するとし、業務停止命令を予定していると説明した。

古木社長はこの説明を受け、「事実関係についてはおっしゃる通りで、申し訳ございませんでした。深く反省しています」と謝罪の言葉を述べた。

代理人弁護士「業務停止命令は裁量逸脱」

同社の代理人弁護士は行政処分について「業務停止命令ではなく、業務改善命令にするべき」と主張。「業務停止命令となった場合でも、期間を短期にしたうえで、範囲を不動産の売買に絞るべき」と求めた。

国交省関東地方整備局は今年2月、運営会社が経営破綻したシェアハウス「かぼちゃの馬車」の販売会社で預金残高の改ざんに関与したフューチャーイノベーション(東京都)に対し、業務停止命令より軽い業務改善命令を下している。

TATERUの代理人弁護士は「700人に及ぶ投資家に損害を与え、自殺者も出たこの事案と比較して重大さは低く、業務停止命令を下すことは監督官庁としての裁量を逸脱している」と主張。「TATERUが管理するアパートは現在の入居率が98.8%と高く、オーナーから要望があれば不動産の買い取りなどの対応もしている。破産に至ったりローン返済に窮したりしているケースはなく、関係者に損害が発生していないから被害者は存在しない」と述べた。

さらに「業務停止命令となれば経営が悪化して企業存続が困難になり、オーナーにも損害を与える可能性が高い」と指摘。「業務が全部停止されると募集業務ができなくなり、空室が増えてオーナーのローン返済が困難になるかもしれない。業務停止の場合でも、停止を売買業務のみに限定してほしい」と訴えた。

業績は急激に悪化

TATERUはアプリやWEBなどでアパート経営ができるワンストップサービスを展開し、同社ホームページによると、2019年3月末時点で会員数は16万人、管理戸数は2万6200戸に上る。不正発覚前まで業績は右肩上がりを続けており、2018年12月期の売上高は791億円。このうちアパート事業が97%を占め、2018年4〜6月期のアパートの成約数は250件を超えていた。

しかし、不正発覚後に同社は本格的な営業活動を自粛。この影響で業績は低迷し、2019年1~3月期の売上高は前年同期比68%減の46億円に落ち込んだ。業績の急激な悪化を受け、当面の資金繰り確保を目的として今年4月には保有する販売用不動産122棟(1092戸)を一括売却。32億円の損失を計上し、1〜3月期の当期純利益は60億円の赤字となっている。