物件資料に記された「利回り」は、本当に正しい数字なのだろうか?

不動産投資に必要な物件資料の読み解き方を学ぶ連載の第4回は、各部屋の賃料や面積、契約年月日などが記載された「レントロール」にスポットを当てる。

「利回り」は基本的にレントロールに記された現況賃料や想定賃料を基に算出されているが、退去が発生した場合に賃料はどれぐらい下がる見通しなのか、そもそも想定賃料は周辺相場からみて妥当なのか―。物件の「本当の収益性」を探るヒントが隠されているのがレントロールだ。今回は熟練の投資家たちがどのようにレントロールを投資判断に活用しているのかを紐解いていく。

【取材協力】

ストレージ大家ひらさん
築古木造からRC、地方全空再生、都内新築まで幅広く手掛け、総投資額は5億超。不動産以外にセルフストレージやコインパーキングなど、1つのカテゴリに集中しない高利回り投資法を実践し、大家デビュー6カ月で専業大家に。楽待コラムの執筆は1300本を超す。

ものぐさ大家さん
会社で不動産に関わる部署に異動したことをきっかけに知識ゼロから不動産投資をスタート。中古区分マンションの現金買いを皮切りに、新築アパートから築浅マンション、ボロ戸建までさまざまなタイプの物件に投資し、サラリーマンを続けながら3年で90室まで規模を拡大した。

恐妻家大家さん
不動産会社で分譲地開発と販売、土地仲介などの業務を行う傍ら、東北地方で築古木造アパート3棟を所有。現役不動産営業マンとしての知見も生かし、地元の物件に絞ったドミナント戦略を徹底している。8歳下の奥様と子ども3人との5人暮らし。

各項目のチェックポイントを確認

レントロールとは、各部屋の賃貸借契約の状況や賃料、共益費、契約年月日などが記された一覧表のことで、収支シミュレーションや賃貸需要のチェック、物件の問題点などを確認できる重要な資料だ。不動産会社に物件について問い合わせるときに、「レントロールを送ってほしい/用意してほしい」などと伝えて閲覧するのが一般的といえる。

まずはレントロールに記されている各項目の基本的な見方をおさらい。書式や記載内容はバラバラだが、おおむね下記のような項目が記されていることが多い。

[号室]
各部屋の番号。基本的には階が上の方が賃料が高いケースが多く、同じ階でも角部屋の場合は高くなることがある。逆にいえば階数や間取りなどの条件が同じで賃料が大きく異なる場合、何らかの要因があることが考えられる。

[状況]
その部屋の状態が入居中か空室か。レントロール上は入居中となっていても、「偽装入居」で実際は空室というケースもあるため、心配であれば現地で電気メーターや郵便物などをチェックしたい。

[契約者]
入居者が個人か法人か。特定の企業などが一括で借り上げている場合は入居が安定するという考え方もできるが、その企業が契約を解除すると一気に空室が増えるというリスクもある。レントロールによっては入居者の名前が記載され、性別や国籍などが確認できることもある。

[間取り/面積]
各部屋の面積。賃料を面積で割った坪単価/平米単価が他の部屋と極端に異なる部屋がある場合は、その原因を確認したい。

[賃料]
各部屋の契約賃料。賃貸ポータルサイトの情報や不動産会社へのヒアリングなどを通じて適正家賃かどうかチェックし、退去時に大きく家賃を落とす必要があるかを確認したい。現況空室の場合は想定賃料として入居中の部屋の賃料の平均が記載されているケースが多いが、賃貸需要や市況に応じて高め・低めに設定されていることもある。

[共益費]
部屋ごとの共用部の水道光熱費や管理費など。共益費がゼロで賃料に含まれている場合もある。共益費を高く設定することで、見た目の賃料を安く見せることも。

[保証金(敷金)]
入居者が家賃を支払わないといった場合のリスク補填として所有者が預かる金で、賃貸借契約終了時に返金する。地域によってはシステムが違うこともあるので注意。入居付けが厳しいエリアでは敷金ゼロのケースも増えている。

[契約開始日、契約終了日]
現在の入居者が契約を開始した日と終了予定日。契約開始日ではなく「契約更新日」が記載されているレントロールもあるため、注意が必要。2年契約の場合は、契約開始日から2年後のタイミングで退去が多くなる可能性がある。

[保証会社]
保証会社加入の有無や保証会社名などが記される。保証会社を引き継げるかどうかは要確認。どの保証会社と契約しているかが価格などに影響することも。

 「デキる投資家」は何を見る?

数々のレントロールをチェックしてきた投資家たちは、どの部分をどのようにチェックしているのだろうか? 実際のレントロールを基にした4枚のサンプルを3人の投資家に見てもらい、物件の印象や数字の読み解き方について解説してもらった。

ケース1. 「セコい売主」を警戒する

物件A

所在

東京都大田区

種別 

一棟RCマンション

価格

2億2600万円

利回り

4.5%

築年

0年(2018年3月築)

間取り

1R×8、1DK×2

駅徒歩 

4分

レントロール(クリックで拡大)

mono

レントロールの右上に書かれている日付は2018年7月。新築で3月竣工から繁忙期を過ぎたのにもかかわらず4室も空いているということは、そもそもの家賃設定が間違っている可能性が高い。それぞれの部屋の坪単価を出して、賃貸ポータルサイトや現地の不動産会社への聞き込みで相場との乖離を確認したいところです。

kyou

適正家賃を賃貸ポータルサイトで調べる場合、サイトに出ている物件の家賃が実態を反映しているのかどうか見極める目も必要です。長期間空いていて、なかなか値を上げられない物件の家賃を参考にしても仕方ないので、本当の相場観は実際に現地の不動産会社の声を聴いて養うしかない

hira

契約開始日が空欄になっていますが、新築の場合、建物の完成前に決まった入居者なのか、完成後に決まった入居者なのかは意識します。完成前に写真だけ見て入居を決めたような方は、住んでみて気に入らないと短期解約の可能性が出てくる。完成後にきちんと内見し、設備・間取りを確認してから決まった入居者さんの方が安心はできます。

kyou

確信はないですが、共益費がゼロの203、302、402は繁忙期を過ぎてから苦しんで客付けしているような気がしますね。家賃は下げられないが、共益費の部分で帳尻を合わせて無理やり入れているんじゃないでしょうか。普通に客付けできるエリアなら新築で共益費を下げる必要はないので。

mono

共益費ゼロの部屋は、会社から家賃補助を受けている入居者なのかもしれません。会社によっては共益費を補助の対象から外している場合があるので、家賃に共益費を含めてほしいという交渉をされることがあります。

hira

駐車場が3台分あって満車になっていますが、駐車代が記載されていないので確認します。これは物件の利回りに加算されていないので、利回りを押し上げる可能性もある。

mono

共益費を高めに取っているのは賃貸ポータルサイト掲載時に家賃を安く見せるためではないかと思いますが、そんな売主像を考えると客付けもセコい手を使っているかもという予感がします。広告料を何カ月分も積んだりフリーレントを付けたり、鍵交換費用やハウスクリーニング、保証会社の保証料などまで家主負担にしているかもしれない。仮にそういった無理な客付けをしても4室空きなら、そもそも競争力がないということになる。

kyou

4室中3室で「申込有。審査中」と書いてありますが、これは空室であるのとほぼ一緒だと判断します。1室だけ書いていないのも、逆に信ぴょう性を持たせようとしているのかと勘ぐってしまいますね。

hira

7月というのはあまり入居が入ってくるタイミングではないので、この時期で本当に3室同時に申し込みがあるという状況なんだとしたら、けっこう無理矢理入居をつけようとしているのかなという気がしてしまいます。

mono

「申込有。審査中」をプラス材料とはみません。私は仮に「入居中」と書いてあっても信じないです。無理な入居やサクラ入居ですぐに退去することもありますから。実際に客付けできるレベルの家賃で想定し直し、それでも収支が回るなら買っても構わない。私は現在の入居率に関係なく「自分で入居付けできるかどうか」という基準のみで判断します。

kyou

レントロールってけっこう信用している人が多いと思うんですが、私が今まで買った物件でも実際の家賃とズレているケースはありました。売主から預かったレントロールが5年前のものだったとか、入れ替えが多すぎて反映できていなかったとか、不動産会社側に悪意がない場合も多い。まずは疑ってかかり、いろいろと妄想しながら不動産会社への質問事項を考えていくのが正しい見方だと思います。

mono

レントロールだけでは分からないことも多いので、賃貸借契約書や修繕履歴、ランニングコストの資料などもあわせて調べることが重要です。例えば、各部屋から徴収する固定の水道料金を収入に含めているレントロールもたまにあるんですが、実際はオーナーが全戸の水道料金を負担しているので、その分は差し引かないと利回りを見誤ってしまいます。

ケース2. 誰がどうリノベーションしたか

物件B

所在

茨城県取手市

種別 

一棟軽量鉄骨マンション

価格

5100万円

利回り

9.9%

築年

29年

間取り

2LDK×2、3DK×6

駅徒歩 

12分

レントロール(クリックで拡大)

mono

A101は平成21(2009)年に入っていて、現況の賃料とそこまで乖離がないのは良い点。入居時期もけっこうばらけているので変な感じはしないし、エリアを考えてもそこまで相場とズレていないんじゃないかと思います。リノベしていない3DKは低めの家賃設定になっていて、それぞれ2000円ぐらい低く引き直して利回りは9.6%ぐらいでは見られるかなと。

kyou

5万8000円で貸すには3DKから2LDKへのリノベが必要であって、いじらずに貸すなら直近で入ったB101の4万5000円で考えます。

hira

2室をリノベーションしていて、満室への努力をしていることがレントロールから伺えます。それだけに、地主物件にあるような改良の余地はあまり残されていないかもしれないと想像する。投資家の場合は地主系大家に比べてやれることはやっているというケースが多く、「投資家から物件は買わない方がいい」というのは1つのセオリーです。

kyou

謄本を見ると平成29(2017)年6月に地主から投資家っぽい人に所有権が移転しているんですが、時期的におそらくリノベは旧オーナーがやったこと。新オーナーが入居付けしたのは2室だけで、平成30(2018)年に入った部屋は特に手を加えず3DKのまま、4万5000円の賃料で貸している。この新オーナーはおそらく何もしていないんだろうなという気がします。

hira

地主さんでも、投資家がやらないような高額のリノベーションプランを管理会社から提案され、その通りやってしまう人もいる。このリノベを地主がしたか投資家がしたかというよりは、どのくらいの費用をかけてこの家賃を手に入れたかを調べます。例えば2LDKの表記にするためだけのリノベだったら、リビング設置費用として1部屋30万円ほどをプラスして適正家賃に直して収支を弾けばいいということになる。ただ、これが例えばウォークインクローゼットを付けるなど「お金をかけすぎたフルリノベ」でようやくこの家賃にできたということになると、収支計算が狂ってきます。

kyou

B201とB202は特に古い入居者というわけでもないのに敷金2カ月分取れていますね。例えば外壁塗装をしたタイミングで多く取ったか、あるいは賃料を下げている部屋なので逆に敷金で上げたのか、そのあたりは管理会社さんに確認します。

hira

わりと最近の平成29(2017)年とかに入っているお客さんでも敷金が取れているというのは、敷金ゼロで募集しているわけではないということだと思います。それでも敷金が取れていないケースがあるのは、「敷金がなければ入る」という人を入れているという意味で、そこまでお客さんを選べていないんじゃないかと想像します。

mono

8室に対して駐車場が8台ある物件ですが、駐車場代を徴収できているのはA102とA202の2室のみ。他の6室は空いているのか、使っているけど賃料に含まれているのかは気になりますね。もし空いているのなら収入の上振れ余地があります

kyou

駐車代で3000円取れているのはリノベ済みの2室ですが、リノベしたタイミングで賃料を高く見せないよう駐車代を別にしただけで、おそらく他の部屋は駐車代込みで貸しているんだろうと読みました。

mono

会社から家賃補助を受けている入居者の場合、駐車代込みなら補助が出るけど駐車代が別なら出ないというルールの場合もあります。入居者が車を手放すことで駐車代がいきなり入らなくなってしまうリスクを考えると、オーナー視点では駐車代込みの方が安全という見方もできます。