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住宅に関する国の新しい補助事業「次世代住宅ポイント制度」が始まった。一般住宅(実需向け)だけでなく、賃貸や転売を目的とした中古物件のリフォーム工事も対象だ。一定の要件を満たせばポイント(1ポイント=1円相当)が支給され、家具や家電製品と交換できる。新築工事でのポイント発行は一般住宅のみが対象なので、収益物件のオーナーが恩恵を受けられるのはリフォーム工事に限られているが、それでも最大30万ポイントを受け取るチャンスがある。

今年6月から、新築物件と1000万円以上のリフォーム工事を対象にポイント発行の申請受付が始まっているが、1000万円未満のリフォーム工事に関するポイント発行受付は10月から。これからリフォームを検討する大家さんも十分に間に合うはずだ。以降では、対象となる工事やポイントの用途、申請方法などについて詳しく説明するので参考にしてほしい。

来年3月までに着工したリフォームが対象

「次世代住宅ポイント制度」は、今年10月に予定されている消費税率の10%への引き上げに伴う工事需要の反動減を防ぐために始まったもの。一定の省エネ性や耐震性、バリアフリー性能、家事負担軽減措置などを備えた次世代型住宅の新築・リフォーム工事が対象で、予算規模は約1300億円。これがおおよそ支給されるポイント全体の上限だが、このうちリフォーム工事への割り当ては約260億円となっている。

過去にも住宅の新築やリフォームに支給される「住宅エコポイント」という類似制度があったが、省エネと耐震化に関する工事だけが対象だった。今回はバリアフリ―や家事負担軽減措置などに範囲を広げたのが特徴だ。

対象となるのは、一部の例外を除き今年4月~来年3月の間に着工し、今年10月以降に引き渡される工事。改修部分や設置機器など項目ごとにポイントを算定し、合計で最大30万ポイントが支給される仕組みだ。

リフォーム工事とポイント発行のスケジュール。今年4月1日以降に着工したリフォームが対象だが、例外的に2018年12月21日~今年3月末の間に請負契約した工事でも、着工が10月以降であれば対象となる(「次世代住宅ポイント事務局Webサイト」より、※クリックで拡大)

ちなみに1棟まるごとリフォームする場合、総戸数ごとにポイント上限が設定される。例えば1棟6戸のアパート全戸でリフォームした場合、6戸×最大30万ポイント=最大180万ポイントを受け取れる計算になる。

風呂・トイレ交換で活用、DIYは対象外

ポイント発行の対象となる具体的なリフォーム項目を見てみよう。項目は大きく「断熱」「エコ住宅設備の設置」「バリアフリー改修」「耐震改修」「家事負担軽減に資する設備の設置」「リフォーム瑕疵保険への加入」「インスペクションの実施」などに分かれている。

断熱は、窓やガラス、ドア、外壁、屋根・天井、床などが対象。エコ住宅設備は給湯設備、節水トイレなど、家事負担軽減設備はビルトイン食洗機や浴室乾燥機、宅配ボックスなどが対象となっている。各項目は負担の度合に応じて2000~15万ポイントが設定されている。

では、収益物件では具体的にどのようなケースで利用できるのか。例えば、所有する古いアパートで雨漏りがあり、天井を剥がして修繕するとする。その際、ついでに天井に断熱材を入れて、使用量などが一定の要件を満たしていれば制度の対象となる。給付されたポイントを家具などと交換して入居者にサービスしたり、断熱性能の高さを打ち出したりして、入居者に付加価値を感じてもらうといった活用方法が想定できる。

ほかにも、古いアパートや戸建ての汲み取り式便所を節水型の水洗便所に変える工事や、バランス釜のお風呂を高断熱浴槽に変える工事などで、基準を満たした仕様の製品を導入すれば対象となる。また「家事負担軽減に資する設備」では、宅配ボックスや浴室乾燥機など入居者のニーズが高そうな設備が対象となっている。どのような製品が対象になるかは、ポイント事務局のホームページで確認できるほか、メーカーによっては制度に対応した製品を明示している。

ポイント発行の対象となる「節水型トイレ」の検索例。型番やポイント数などが表示される(「次世代住宅ポイント事務局Webサイト」より、※クリックで拡大)

制度を利用するうえで気をつける点がいくつかある。1つ目は、上限だけでなく下限も設定されている点だ。ポイント制度の恩恵を受けるためには、少なくとも合計2万ポイントに達しなければならない。例えば、節湯水栓(4000ポイント)と新型レンジフード(9000ポイント)、手すり(5000ポイント)を設置すると計1万8000ポイントだが、2万ポイントに達しないため、申請できない。

2つ目は算定の対象となる設備が厳密に決まっているということだ。事務局が認証した商品を使わなければ対象外となるため、事前にポイント事務局のホームページなどでよく確認する必要がある。ただし認証製品も随時更新されることに留意しておこう。

またリフォームでも対象とならないケースがあるので要注意だ。工事請負契約が発生しないDIYや、リフォーム前の建物が住宅ではなく倉庫や店舗などの場合、あるいは工事が別の国の補助金を受けている場合は対象外となる。

インテリアや家電と交換

受け取ったポイントはどのような商品と交換できるのか。ポイント事務局のホームページでは、執筆時点(7月2日現在)で、下は1400ポイントの防災用ヘッドライトから上は6万ポイントの2.5人掛けソファまで3665点が登録されている。商品は随時追加されるため、ポイント交換が始まる10月時点では品揃えも変わっているかもしれない。

交換商品の例。テーブルやイスなどの家具、家電製品など賃貸物件に使えそうな商品も(「次世代住宅ポイント事務局Webサイト」より、※クリックで拡大)

商品は次世代型住宅のコンセプトに沿って、環境や防災、家事負担軽減、地域振興などに関連付けて登録されている。不動産オーナーの狙い目としては、照明器具をはじめとした家電類やインテリア類だろうか。しかし現時点では品数も少なく物足りない印象。今後の充実に期待したいところだ。

申請方法についても触れておこう。まず物件所有者ではなく、工事業者や管理業者が代理申請することもできるため、工事契約する前に、代理申請してもらえるかどうか確認しておくとよいだろう。以下、自分で申請する際の手順や注意点をまとめた。

申請の仕組み(「次世代住宅ポイント事務局Webサイト」より、※クリックで拡大)

まずどの時点で申請するかだが、戸建てやアパート1室のリフォームの場合、工事を終えて物件を引き渡された後に申請するのが基本的なパターン。ただし、リフォーム工事費用が1000万円を越える場合は、工事契約した時点で申請することもできる。アパート1棟をまるごと改修する場合は、工事の完了まで時間がかかるため、契約段階でポイント申請・商品交換まで可能だ。その場合は、工事の完了を報告する義務が課される。

申請先は2パターンあり、1つは次世代住宅ポイント事務局に直接郵送で申請するパターン。もう1つは指定窓口となっている民間の工務店や確認検査機関などに持ち込んで申請するパターンだ。窓口は地域ごとにばらつきはあるが全国計800カ所以上設置されている。

後者の場合、その場で書類のチェックが受けられるため、不備があった場合に対応しやすい。手数料も発生しないため、最寄りに窓口となる事業者があれば手っ取り早いかもしれない。その際は事前に予約して持ち込むようにしよう。申請書は事務局ホームページからダウンロードできるほか、窓口にも備え付けられている。

工事前後の写真が必須

申請の際に気をつける点としては、必ず工事前後の写真を添付する必要があるということだ。省エネ機器などを設置する場合は、性能証明書の提出も必須とされている。

申請に必要な工事写真撮影の注意点について書かれている(次世代住宅ポイント事務局「申請の手引き」より、※クリックで拡大)

また同一物件でも、30万ポイントの上限の範囲内であれば複数回の申請が可能だ。例えば台所回りの工事で10万ポイント分を申請した後、新たにトイレやお風呂回りをリフォーム工事した場合、20万ポイント分までは申請できる。

ちなみに、申請数が予算の上限に達し次第、事業は終了するとのこと。参考情報だが、2015年に実施した類似制度の住宅エコポイントは、905億円の事業費に対して、申請開始から7カ月余りで上限に達して受付が締め切られた。今回の次世代住宅ポイント制度では、申請期限は、ポイント事務局が上限に達する見通しがついた段階で公表することにしているので、アンテナを張っておきたい。

ポイントを入居者に還元するサービスも

ポイントの還元率はさほど高くなく用途も限られるので、この制度を活用するためにわざわざリフォームするほどではないかもしれない。それでも、特に1棟まるごとの大規模なリフォームをするのであれば、使わない手はないだろう。

ポイントの使い方も工夫次第で空き室対策になるかもしれない。例えばリフォームで得た30万ポイントのうち、一部を入居者が使い道を決められるようなサービスを提供してみるのはどうだろう。入居すれば3万ポイント分の商品が選べるとなれば、二の足を踏む借り手の後押しとなるかもしれない。

(楽待新聞編集部/ライター・山崎ハジメ)