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不動産オーナーなら誰もが加入しているであろう「保険」。収益不動産に特に関係が深いのは火災保険だろう。災害時には強い味方となってくれるが、巷には「保険請求のコンサルティング」などと称し、不正請求を指南して利益を得る業者も存在する。知らないうちに不正に加担してしまった、ということがないよう、オーナー自らも保険の知識を身につけておきたい。

本連載では、自身も収益物件を所有する不動産投資家であり、大家さん専門の保険コーディネーターとして活動する斎藤慎治氏に、保険の基礎から実践ノウハウまでを語ってもらう。

保険の「三分野」とは

あなたは「保険」がどのように成り立っているのか、その仕組みを説明できますか? 今回は連載の第1回目ですので、まずは「保険の仕組み」を学ぶという基本中の基本から始めたいと思います。

まず、保険の分類についてお話しておきましょう。一般的に知られている民間の保険は、大きく3つの分野に分けられます。第一分野の保険と言われるのが、人の生死に関連する「生命保険(生保)」、第二分野は事故などによるモノや利益の損害を補填する「損害保険(損保)」、そして医療保険やがん保険、介護保険など、人の生存期間にかかる医療費用などを保障する「第三分野」の保険です。

保険の三分野。第三分野は販売会社の制限がない

もともと生保事業と損保事業は兼業が禁止されていましたが、1996年に保険業法が改正されたことにより、子会社を作っての兼業が解禁されています。また、がん保険などの第三分野の保険については、生命保険会社、損害保険会社の両方が参入できるようになっています。

損害保険はどうやって成り立っている?

では、三分野の中でも特に大家さんに関連が深い「損害保険」の成り立ちからお話していきましょう。

そもそも保険とは、1人ではとても負えないような大きな物的リスク(自然災害や盗賊による強奪など)を、その他大多数の人々が少しずつお金を出し合って相互に負担しあう「相互扶助」の仕組みとして誕生しました。

初めて保険が考案されたのは紀元前だと言われていて、主に貿易や海上運送の場を中心に発展していったそうです。例えば貿易船や船に積まれた荷物の持ち主がそれを担保にお金を借り、船が無事に目的地へ到着したら利息を付けて返済する代わりに、途中でトラブルがあった場合は返済を免除する、といったものです。

保険の発祥はこうした貿易保険、海上保険などの損害保険であり、その後、火災保険や利益保険(事故によって得られなかった利益などを補填する保険)、賠償責任保険などに細かく派生して今日に至っているわけです。

さて、保険という制度を確立させるためには、制度そのものを取りまとめる「保険者」と、補償を受ける権利を有する大多数の「保険契約者」の存在が必要です。この両者の間で締結される「保険契約」によってそれぞれの立場における権利・義務・責任を明確に定めています。

「保険者」は、損害を被った被災者に保険金を支払う義務を負い、「保険契約者」は保険料(掛け金)を納める義務を負います。保険者として保険事業を営む者を「保険会社」といい、日本では保険業法によりその資格が規定されています。

保険料はなぜ値上がりするのか

では、保険契約者が支払う保険料はどのように決まるのでしょう?

保険業法では、「支払保険金の総額と保険料の総額は概ね等しくなければならない」と定められています。これを「収支相等の原則」といいます。

そして保険料は、支払う保険金の総額に、制度運営上必要とされる経費や利益を上乗せした金額から決定されます。すべての保険契約者が、リスクの大きさや範囲に応じ按分して負担するのです。

「収支相等の原則」に則り、保険金と保険料、どちらかが多くても少なくても、保険料の追徴または返還などによって原則調整しなければなりません。大型台風や巨大地震が発生した後に火災保険料や地震保険料が値上げになるのはこのためです。

昨今の自然災害の頻発は、この「収支相等の原則」を脅かすものとなりつつありますが、保険会社にはこのような事態でも支払保険金が不足しないよう、一定の予備的資金の貯蓄の義務を負わせています。これを「異常危険準備金」といい、前述の収支相等が保てなくなったときにこれを取り崩して保険金支払いの原資に充てることになります。

したがって、たとえ保険会社が赤字決算であっても支払保険金は確保されているのです。またこの準備金以外にも、リスクの分散を図るため他の保険会社に責任の一部または全部を転嫁する「再保険」も行われています。

生命保険の仕組み

損害保険に比べると、生命保険の仕組みはシンプルです。人が亡くなったときに保険金を支払う生命保険(死亡保険)では、過去の統計から人の平均寿命を割り出し、年齢ごとの死亡リスク(死亡率)を把握できます。戦争や地震、伝染病の流行等による大量死を免責とすることでリスクは安定し、制度化も容易だったと推測できます。

また、若年者ほど保険料は安いが払込期間が長くなり、契約年齢が上がるほど保険料が高くなるが払込期間が短くなるという生命保険料の徴収方法を「平準保険料方式」といいます。将来の死亡リスクに対して保険料を平準化して徴収しているので、壮年期の保険料は晩年に備える前払保険料の比率が高く、実年齢に対して割高な保険料であるといえます。

人の平均寿命は年々長くなっているので、保険会社が抱える死亡リスクは小さくなっていく一方、「生存保険」(生存期間にかかる医療費用などを生存しているかぎり支払う保険)の一種である医療保険、がん保険、介護保険など、第三分野の保険商品は、保険会社が負うリスクが大きくなっていく傾向にあります。

これらの保険商品は損害保険会社、生命保険会社ともに参入が許されているので、これから到来する超高齢化社会においては大きなマーケットになる傍ら、大きなリスクを抱えていくことにもなるでしょう。