今や、「孤独死」はどこででも起こりうる社会問題だ。看取られることなくひっそりと息を引き取った遺体は、その後、時間が経ってから見つかるケースが多い。遺体は腐乱し、独特の臭いや遺体から出た体液が物件に染みつく。

こうした物件の清掃や原状回復を行う仕事は、「特殊清掃業」と呼ばれる。この仕事に従事する人々を追い、孤独死のあった現場に同行した。

孤独死のあった現場で、作業する特殊清掃員

明確な定義なく、実態把握は困難

「孤独死」に明確な定義はないものの、一般的には「看取られることなく、自室内で孤独に亡くなり、一定期間の経過後に発見されること」とされている。若い世代でも決して珍しいことではなくなっているが、一人暮らしの高齢者が孤独のまま亡くなり、別居の身内、あるいは第三者によって発見されるケースが多い。

孤独死は国としての定義がされておらず、その実態の把握が難しいのが現状だ。一方で、東京都監察医務院のデータによれば、2017年に、自室内で亡くなった東京都内(23区)の一人暮らしの人数は男性3325人、女性1452人。その多くは65歳以上だ。

2017年に、自宅内で亡くなった人の数(東京23区)。それぞれの性別における「単身世帯」での死亡者数は孤独死と考えられる(出典:東京都福祉保健局による資料

同じデータによれば、亡くなってからおおよそ1週間以内に発見されている。だが、中には半年、あるいは1年以上経過しているケースもあるという。

床一面にゴミが散乱、虫の湧く部屋

こうした中、孤独死のあった物件の消臭、消毒、害虫駆除、体液の除去といった清掃、原状回復工事を請け負う企業がある。家財整理専門会社「エバーグリーン」も、孤独死のあった物件へ赴き、遺品整理や特殊清掃を行っている1社だ。

その日もまた、遺族からの依頼が入っていた。関東地方にあるアパートの、1階にある2K。そこで、一人暮らしだった49歳の男性が孤独死の状態で発見されていたのだ。亡くなってからは、すでに数週間が経過しているという。

「部屋はテレビで見たことのあるゴミ屋敷の状態で、よくここに住んでいたと思います。遺体は腐乱していて、見ても本人かどうか、わからない状態だった」(亡くなった男性の兄)

作業に入る前には、防護服に身を包み、防毒マスクも着用する。感染症などの予防のためだ。それが終わると、部屋の前で線香に火をつけ、祈りを捧げた。

部屋に足を1歩踏み入れると、古紙・雑誌やペットボトル、日本酒の空きパックなどがうずたかく積まれ、床を見ることはできない。食べ終えた後のカップ麺の容器もそのまま置かれ、虫も湧いていた。

雑誌や新聞紙などが、崩れそうなほど積み上げられている

床一面にさまざまなゴミが散乱する室内

遺体のあった奥の部屋を清掃する前に、手前から片づけを始める。雑誌はゴミとしてまとめる前に、1つ1つパラパラとめくる。間に手紙や領収書が挟まっているケースが多いからだ。この日、作業にあたったのは男女7人。分担をしながら、ごみの種別ごとにまとめていく。室内に散乱していた多くのペットボトルには、尿が入っていた。

孤独死のあった現場で、清掃作業を行う清掃員

ゴミに囲まれたスペースで

この部屋に住んでいた男性は、奥の部屋で、布団の上に横たわった状態で発見された。普段から、ごみに囲まれた中にあるそのちょっとしたスペースで生活をしていたようだった。

亡くなった男性の兄は、男性とは連絡がほとんど取れず、ほぼ交流がなかったと話す。最後に会ったのも、3年ほど前、父の法事の時だった。「なんとなく、『こうなるんじゃないかな』とは思っていました。実際連絡を受けてびっくりというよりは『やっぱり、なるようになった』と(思った)」

遺体のあった場所の清掃作業は、特に慎重に進める。体液が床などに染み込んでおり、ウイルスがいる可能性もあるからだ。その場所からは、ハエの卵やさなぎがこびりついているのも見つかった。

清掃作業を進めるうちに、写真やアルバムなどの遺品も出てくる。これらはゴミとは別にし、後ほど遺族に引き渡した。

室内から見つかった遺品。以前使用していたと思われる携帯電話や、ポイントカード、写真などがあった

家財やゴミの搬出だけが仕事ではない。床や壁の清掃、原状回復も仕事のうちだ。換気扇の汚れ落としなど、細かな部分まで範囲は及ぶ。作業は、2日間行われた。

この部屋のオーナーは、原状回復された部屋を見て、そのまま貸し出す判断を下した。自身もすでに高齢で、これ以上は難しいと考えたようだった。「2万円でも、3万円でも、住んでくれる人がいれば」。そう呟いていた。

原状回復作業まで完了した部屋。ゴミにあふれていた面影はない

「辞めたいと思ったことはない」

1年半前にこの業界に飛び込んだという同社の長谷川昌彦さん(37)は、「忙しくない方がいいのは間違いない仕事です。行政などの力で、孤独死が減っていけばいいと思っています」と孤独死を取り巻く現状を語る。

前職は消防士。過酷な仕事には慣れていたが、実際に初めて現場を訪れた際には、やはりショックを受けた。その一方で、この仕事にやりがいを感じるとも話す。

「困っている人を助ける、というシンプルだけど大変な仕事だと思います。でも使命感を持ってやっているので、辞めたいと思ったことはありません。今後も、ずっと続けていくつもりです」(長谷川さん)

「エバーグリーン」で特殊清掃業に従事する長谷川昌彦さん

同社への依頼は、1カ月に数十件来ることも。多くの孤独死の現場があることが伺える。この先、高齢化社会となればますますその数は増加の一途をたどるだろう。行政機関の迅速な実態把握、そして孤独死を防ぐ施策の実施が待たれる。

(楽待新聞編集部)