PHOTO:YNS/PIXTA

まち探訪家・鳴海行人さんが個人的に注目しているまちに、不動産投資家の代わりに足を運び、そのまちの開発状況や歴史についてレポートする本企画。今回は「つくばエクスプレス」の沿線から、居住地として特に人気のある「流山おおたかの森」と「柏の葉キャンパス」の2駅をピックアップした。

「流山おおたかの森」にはなぜ人が集まったのか

まもなく開業15年目を迎える「つくばエクスプレス」。当初は車窓から見える家もまばらでしたが、沿線開発も進み、今やすっかり通勤路線の仲間入りを果たしています。沿線の駅前にもさまざまな施設が登場し、それぞれのまちごとに特徴も生まれました。

つくばエクスプレスは、「秋葉原」駅を起点につくばへ至る58.3キロメートルの鉄道路線。今回、最初に取り上げる「流山おおたかの森」駅は、秋葉原駅へ最短約25分、「北千住」駅へ約15分というアクセスの良さが大きな魅力です。

また同駅には「東武アーバンパークライン(東武野田線)」も乗り入れています。アーバンパークラインを利用すれば、千葉県の主要駅の1つである「柏」駅まで約5分、「船橋」駅まで約40分、さらには埼玉県最大のターミナル駅である「大宮」駅まで約1時間。都心だけでなくさまざまなエリアへアクセスしやすい恵まれた立地です。

流山おおたかの森駅(著者撮影)

こうした立地のよさもあり、都市再生機構(UR都市機構)が2000年から区画整理事業を行った際、このエリアを「まちの新たな核」にしようと、流山市とともにさまざまな都市計画を行いました。 その結果、駅周辺に多くの機能を持った施設が配置され、同駅を住宅開発の呼び水とすることに成功したのです。

駅周辺の施設として象徴的なのは、大型ショッピングモールの「流山おおたかの森S・C (ショッピングセンター)」でしょう。開発したのは高島屋の子会社である「東神開発」で、店舗面積は約4万6000平方メートル。約130店舗が入居し、年商は約250億円と大規模です。内部の空間も通常のショッピングモールとの差別化が図られた高級感のあるつくりになっています。

高島屋の子会社、東神開発が開発・運営する「流山おおたかの森S・C」(著者撮影)

テナントは庶民派のお店から百貨店を意識した高級路線なお店まで揃っており、さまざまなニーズに応えられることも特徴です。これは、つくばエクスプレス沿線に住む若いファミリー層の需要取り込みとライフスタイル提案に加え、東武野田線沿線に住むシニア層にも響く店作りを目指した結果だと思われます。

さらに東神開発は昨年、流山おおたかの森駅の高架下に、TSUTAYAやコインランドリーのほか、居酒屋など13店舗からなる「こかげテラス」も開業しました。これはつくばエクスプレス沿線で高架下店舗を運営していた企業を買収して実現させたものです。

高島屋は百貨店に次ぐ事業の柱として商業施設開発に力を入れています。東神開発はつくばエクスプレス沿線の高架下で店舗運営を行い、自社の価値観に近い高架下開発を沿線各地で展開、流山おおたかの森S・Cを始め都内や千葉県内の高島屋への送客につなげたいものと考えられます。

今後は流山おおたかの森にこだわらず、つくばエクスプレス沿線全体での商業施設運営を行っていくことになりそうです。

また「流山おおたかの森S・C」とは駅を挟んで反対側にある北西側には、今年に入ってからスターツグループが「スターツおおたかの森ホール」をオープンしました。506席を設けたホールのほか、流山市の市民窓口や観光案内所もあり、市民生活の充実に寄与しています。

流山おおたかの森駅北口の目の前にスターツの手によって整備されたホール、ホテル、建設中のマンション(著者撮影)

同じ敷地にはホテルも開業し、マンションも建設中です。このほかにも駅の北東側には銀行や保育所など生活に密着したテナントが入る「ライフガーデン流山おおたかの森」があり、駅周辺施設はかなり充実したものになっています。

住宅地は開発の真っ盛り

商業施設や公共施設など、生活のインフラが着々と整っている流山おおたかの森エリア。では住宅地の整備はどうかというと、駅周辺にマンションが数棟建設されているなど、いままさに開発の真っ盛りです。現在は駐車場となっている土地、また畑や雑草が生い茂る手の付けられていない未利用地など、開発余地のある土地が駅周辺に残っています。今後も駅周辺のマンション開発は盛んになっていくことが想定されます。

流山おおたかの森駅北側はまだ未開発の場所がある(著者撮影)

流山おおたかの森駅南西にいくつもあるコインパーキング。1日最大料金が500円前後と比較的安く、利用率も高いが、駅近くのため、今後マンション用地となることも予想される(著者撮影)

一方、まちを歩いていると、自然を感じさせるものも多く目に入ってきます。たとえば「流山おおたかの森」の駅名の由来にもなったオオタカが1992年に発見されて以降、営巣地ともなっている「市野谷の森」。その他、野鳥のやってくる水辺として「市野谷の池」もあり、「流山おおたかの森S・C」周辺にも緑が多くみられます。

流山おおたかの森駅西側にある「市野谷の森」。ここではオオタカの営巣が確認され、駅名の由来にもなった(著者撮影)

これは、つくばエクスプレス建設時に地域住民が自然を残そうと努力したこと、また流山市が自然保護や緑化を重視した都市計画を実施したことも大きく影響しています。なお、流山市は良質な分譲住宅地の造成にも力を入れています。たとえば流山おおたかの森駅周辺では、分割による細分化や狭小住宅の建て詰まりを防ぐため、一戸建ての最低建築面積を135平方メートルと定めています。

緑が多く、生活インフラも整備されているなど、子育て世代にとって魅力的な要素が並ぶ一方、ファミリー層向けの公園は大きいとは言えず、子どもに十分な遊び場がないようにも見えます。また、ここ数年は大きく数は減らしたものの、待機児童問題も依然としてあります。将来的には保育所の不足も懸念されています。また、周囲の道路がまだ十分に整備されているとは言えず、車での移動に便利とは言えないのが現状です。

流山おおたかの森駅南西の住宅街の様子。中層マンションやアパートが所々にみられる(著者撮影)

ただし、秋葉原側に歩けば、小規模なアパートもいくつかあり、賃貸需要があることがうかがえます。また、今後は駅近くの土地が開発されていくことを鑑みると、駅近を好む層の賃貸需要がさらに増加することも十分想定されます。