初めての収益物件購入を、「融資獲得アドバイザー」の安藤新之助さんがサポートする企画。三重県のサラリーマン・中村圭哉さん(仮名・36歳)は昨年秋から、安藤さんのアドバイスを受けて融資打診を続けていましたが、なかなか結果を出せずにいました。
しかし、今回ついに中村さんから「正式に融資承認が下りました」と安藤さんに連絡が…! 果たしてどんな物件なのでしょうか? 安藤さんとともに、これまでの苦しみと成長を振り返ります。
<中村さんの属性>
名前 |
中村圭哉さん(仮名・36歳) |
居住地 |
三重県 |
職業 |
会社員(東証一部上場メーカー) |
勤続年数 |
11年 |
年収 |
770万円 |
自己資金 |
1500万円 |
扶養家族 |
妻(33歳・パート)、子ども(2歳、0歳) |
長い道のり
安藤
中村さん、ようやく物件が買えたそうですね。
中村
そうなんです! なかなか結果が出せず悔しい気持ちが大きくなって、心が折れかけた時期もあったんですが、なんとか期待に応えることができてうれしいです。
安藤
もしかしたらこの企画、終わらないかもしれないと思っていました。「中村さんの今後に期待!」みたいな感じで締めくくることになるかも…って(笑)。だから本当によかったです。…では、ひとまず前回から振り返ってみましょう。
中村
前回は楽待で三重県桑名市の2500万円のアパートを見つけ、何度か打診して断られていた三重県の信金Cに持ち込みました。これまでは金額の大きさがネックになっていたんですが、この物件は比較的小ぶりだったこともあり、即日満額回答が出たんです。でも、結局3番手となってしまい買えませんでした。
安藤
それから、よい物件を仕入れて、感触のいい信金Cを中心に持ち込むという作戦を立てましたね。
中村
はい。その後、何度か相談していたメガバンクDに物件を持ち込んだ時、5件ほど不良債権のような物件を紹介してもらいました。そのうち、名古屋市の築19年のRCが1億500万円で利回り8.18%。地下鉄駅徒歩5分ぐらいで路線価が19万円と、立地がよい物件でした。
安藤
金融機関は貸せる見込みがない人に物件を紹介しないので、これまで頑張って関係を構築してきた意味があったと思います。その物件はどうしたんですか?
中村
紹介された時に物件概要の資料しかなかったので、謄本などをもらってから前向きに検討したいと話したんですが、それ以降に電話しても「資料がそろっていないので…」と言われて。判断する材料が少なくて、買い付けを入れるのをためらってしまいました。
安藤
他で手を挙げた人に持って行かれたのかもしれませんね。本当にいい案件なら、1日2日考えたら遅い。しっかりした物件概要書ができてくるころにはもう買われています。川上の優良物件ほど出てくる情報は少ないので、少ない情報でも飛び込める嗅覚はつけておかないといけません。
中村
少ない情報からどうやって買いかどうかを判断するんですか?
安藤
まずは自分の中でエリアや築年数、利回りなどの指針を持っておくことです。それをクリアしたらすぐに前に出られるように。だから、自分が買いたいエリアの物件相場の感覚だけは持っておかないといけない。手書きで住所や売買金額、想定家賃、土地の広さ、固定資産税評価額などが書いてあるような段階で、出た瞬間に判断できるぐらいのスピードが必要になります。
運命の1棟目
中村
その後、7月に不動産会社のダイレクトメールで、三重県主要都市の築27年の鉄骨アパートの情報が入りました。2500万円で売りに出ていたんですが、売主が関東の業者で、バルクで購入したうち遠方物件を手放したい意向があり、決算時期の関係でどうしても当月中に売却したいらしいという情報を得ました。
<融資承認が下りた物件>
所在地 |
三重県主要都市 |
物件種別 |
一棟鉄骨アパート(築27年) |
間取り |
1R×12 |
物件価格 |
2000万円 |
利回り |
20% |
中村
2000万円なら利回り20%を超えるので、2000万円で買い付けを入れ、信金Cに打診しました。そしたら、1800万円の融資承認を正式にいただいたんです。2.5%・15年という条件で、返済比率は35%です。
安藤
ひとまず、よかったですね。15年で返済比率35%はいいですよ。土地が安くて積算が出ていないですが、利回りでカバーしている分リスクヘッジできています。ただ、現況の空室が多いので、入居率90%以上を維持していかないと、この物件の評価としてはみてもらえなくなってしまいますね。
中村
もともとはRCを狙っていたんですが、融資が厳しい状況も考え、まずは利回り重視で購入することにしました。自宅にも近く、自分の力で管理などのスキルを付けられそうだと思ったのも理由です。
安藤
担保評価は低いけど収益性が高くて、きっちり入居率をキープしているという感じなら金融機関の評価も上がってきます。最近は銀行も見方が変わってきて、担保評価はもちろんですが、やっぱりCFが回っていないとダメだよね、という方向にかじを切ってきています。
中村
現況家賃は共益費込みで2万2000円~3万5000円まで幅があって、3万5000円で入っている3部屋は生活保護受給者です。
安藤
これは冷蔵庫やテレビなどを付けて、生活保護受給者を積極的に入居させた方がいいですよ。家賃も上げられるし、取りっぱぐれがない。金融機関に対しても社会貢献を謳えますから。家賃の上振れ要素があるのは非常に面白い物件です。
中村
そのあたりも視野に入れています。今は空室が4室あるので、まずは満室にして需要のある物件だと示したうえで、家賃もどんどん上げていきたいです。
安藤
物件の状況はどうでしたか?
中村
これが物件の写真ですが、3年前に外壁だけは直していて、内観もわりとキレイな感じで。前の管理会社は客付け力が弱かったので、三重の大家の会からヒアリングして、客付けの強い管理会社に変えました。
「借りたい」自分、「貸したい」相手
安藤
信金Cとは良い関係が築けましたね。
中村
もともとこの企画の最初で9800万円のRCを持ちこんで断られました。別の物件を探して何度か打診を続ける中で、3000万~4000万ぐらいであれば支店決裁で融資は可能そうだ、という感触が得られました。
安藤
頑張って関係を作った成果ですね。
中村
その後、年度をまたいで融資方針に変化があったようで、さらに積極的になったようだという情報を得て、満を持して今回の物件を持ち込みました。振り返ってみると、向こうは融資をしたいし、こちらは借りたいし、という形で、けっこうすんなり承認された感じです。実は承認が下りた時、すでに向こうから「次の物件も…」という話を受けたんです。
安藤
そうだったんですね。面談はどんな感じで進みましたか?
中村
去年からけっこう物件を持ち込んでいたので、面談では自分自身の目的や計画については分かってもらえていた状態でした。低所得者に向けた物件を提供したいというのはもともと伝えていた内容だったので、生活保護受給者を受け入れることも目的に合致していましたね。あとは物件を入手した背景や家賃相場、収支シミュレーションについて質問されました。
安藤
収支に対する評価はどうでしたか?
中村
この信金は現況の入居状況で収支計算シミュレーションをするので、満室の方が融資しやすいという話でした。もともとはフルローンで打診したんですが、4室空室という状態だと、フルローンはリスクがあるという話をされました。
安藤
金融機関は基本現況利回りでみますが、現況でも利回り10%ちょっとあるということと、満室になったときに家賃が上振れるポテンシャルがあるということが評価されたんだと思います。もちろん満室にするだけの経営手腕が求められますが、事業計画や目的が評価されてそのあたりをフォローしたんだと思います。
中村
ここの信金には私自身の口座がもともとあって、親も定期を組んでくれていたりしたので、そういう背景もあっていい関係が築けたと思っています。
安藤
金融機関にとって、本人はもちろん親御さんも含めた資産背景が分かっているのは安心材料なので、大きなアドバンテージだったと思います。ただ、そういう背景があれば融資が引けるかというと、そうでもない。中村さんの人柄や取り組み姿勢が評価され、それに親御さんも含めた取引実績がうまくリンクした。これも1つのご縁ですね。
条件はベストな選択?
中村
融資期間についは、自分の方から「15年希望」と伝えていました。耐用年数をオーバーしているので、今後の規模拡大を考えるとあまり長期で引きたくなかったからです。
安藤
すごくいい判断だと思います。なぜ15年にしたのかと聞かれた時に明確な理由があるし、15年にしてもCFが取れるという裏付けがある。15年以上に延ばすデメリットを把握しているというのは非常にいいことで、次の案件を金融機関に打診する際にも有効です。
中村
金利に関してはもう少し下げたいと思っていましたが、2.5%が下限だと説明を受けていました。2、3棟目でもう少し実績を積むと裏技のようなものがあるかもしれませんが、どうしても1棟目なのでルールに沿った形がいいのかなと。
安藤
金利については、最初の1棟目なら向こうが出した数字をのんだ方がいいです。金融機関の立場で考えると、実績がない部分を金利でリスクヘッジしている形なので。金利は信用に比例しますから、まだ十分な信用がない状況で考えると、条件面はベストな選択だったと思いますよ。
中村
シミュレーション上は、入居率9割ぐらいで年間の税引き前CFが200万円ほどという計算です。
安藤
いろいろ手がかけられてスキルもつくし、頑張り次第でどんどん収益が増えていく物件ですね。数字で結果を出していけば金融機関の信頼が得られるので、1棟目としてはいい物件だと思います。ファーストステップとしてはいいんですが、今後規模を拡大していく中では、耐用年数オーバーしている物件は避けた方がいいですが。
中村
分かりました。
安藤
ちなみに、室内修繕費の名目で200万円追加し、フルローンを引く方法もありました。私もよく使う方法ですし、「物件の価値を高めるために」という理由で理解は得られると思います。
中村
それは打診してみたんですが、もう少し空室が埋まっていないと厳しいという話でした。逆に、現況満室で利回り20%ならフルローンもあり得た感じでした。
安藤
私の想像だと、今回のケースでは支店長の中で1つのルールを持っていたんだと思います。本来は物件の価値が上がって入居を促進でき、本部にも稟議を上げやすくなるので貸し手としてはウエルカムな提案のはず。その分の追加融資を受けてもCFが取れるというのは理屈が通りますから。
出会った時から「買える人」だと思っていた
中村
融資を受けられたときは、安藤さんの顔が頭に浮かびました。
安藤
業者に勧められたわけではなく、自分が納得のいく物件を自分自身でつかみに行って買ったことが一番大きい。物件を紹介してもらった後、次の関所である金融機関で冷たく数回断られると、多くの人は心が折れてしまう。「どうすれば借りられるだろう」と考える人と「自分じゃ無理だ」と思う人の2種類がいて、大半は後者なんです。
中村
正直、立て続けに断られた時はしんどくて、心が折れそうでした。金融機関は電話も含めると30、40行ぐらい当たったんですが、1人でやっていたらあきらめていたかもしれない。企画という後押しもあって、やらなければという気持ちにはなりました。安藤さんから「必ず結果がついてくる」と言われたのも勇気になりました。
安藤
途中でいろいろと厳しいことも言ってきたので、僕も買えたと聞いてうれしかったです。実は、僕は最初にここでお会いした時から結果が見えていたんです。中村さんは買えると思っていた。勇気をもって飛び込もうという気持ちがあったし、聞いたことはしっかりメモしていたし、即座に行動して前に進もうという気持ちがある人だなと。正直、もう少し時間がかかると思っていたので、早い段階で結果を出したのはよく頑張ったなと思います。
中村
そうだったんですか…(笑)。
安藤
こういうレクチャーを受けるときにうまくいくのは、自分のやり方うんぬんは二の次に考えられる人。「オレはこうなんだ」という我の強い人はうまくいかない。まずは言われた通りすぐ実践してみます、という人は必ずいい発見があるので、それが階段を上がっていくステップアップになる。
中村
なるほど。
安藤
よく、「安藤さんだからできたんですよ」という人がいますが、そういう人はなかなか成長しません。「どうやってうまくいったんですか、教えてくれませんか」という気持ちが必要です。
中村
たしかに、その通りですね。
安藤
私も昔、中村さんと同じような立場の時に、「楽待コミュニティ」という楽待主催の相談会で投資家の松村裕一さんと出会って「すごいな」と思った。私は「松村さんだからできた」とは思わず、「松村さんが3年でやったなら、自分も勉強すればできる」と思ったからやりました。だから、中村さんは結果を出すだろうなと思った。
中村
安藤さんは金融機関と相対した時の引き出しの数が多くて、自分が返答に困った質問に対して「そういう返答をすればよかったんだ」という発見がたくさんありました。この1年弱で金融機関との向き合い方も変化して、スムーズに対応できるようになったのは成長できた点だと思います。
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全7話
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