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先日、楽待新聞で『借金8000万…自己破産寸前の女性を救う「任意売却のプロ」』という記事と動画が掲載された。収益物件のローン返済が滞ってしまった投資家が専門の相談機関を訪れ、解決策について考えていく内容だった。

このような任意売却に追い込まれた「債務者」の側ではなく、「買い手」の視点で見た「任売物件」というのは、市場価格より安く入手できる可能性があって狙い目だという考え方もできる。ただ逆に、管理が行き届いていなかったり、残置物があったりといったリスクがあることも事実だ。

では、一般の不動産仲介業者から見た「任売物件」というのはどのようなものなのか。今回は、元不動産仲介業者である筆者が、実際にあった事例を踏まえて任売物件について紹介していこうと思う。

任売物件はお得なのか

「任売物件は一般の不動産売買よりも安く買える」というイメージを持っている投資家も多いだろう。実際、特殊な事情での売却のため売主がじっくりと売値を検討している余裕がなく、通常の取引価格よりも安く取得できる可能性が高いという面がある。

通常の不動産売却であれば、売主は「売りたい」という気持ちが強い。次の物件購入資金に充てるためだったり、親から相続した不動産を現金化するために売却に出していたりと、売却理由がポジティブだからだ。

一方、任意売却は、ローン返済が困難になってしまったためにやむを得ず売却に出しているケースがほとんど。売主も取引に対してあまり積極的ではないことがあり、場合によっては指値が通りにくかったり、引き渡しまでにかなりの期間を要したりすることもある。仲介業者にとって任売物件は扱いにくく、敬遠されることも多いのだ。

ただし、任意売却を専門に取り扱っている業者もいるので、全ての仲介業者が任売物件を敬遠しているわけではない。任売物件を扱う専門業者としては、相場よりも割安感のある物件価格になることで、売買契約を決めやすくなるといったメリットがある。

任売物件は、リースバック契約を利用すれば第三者に売却した後でも売主は賃借人として住み続けることができる。リースバックとは、第三者に買ってもらった不動産を、売主がそのまま買主から賃借して使用し続けること。正式名称はセル&リースバックという。任売物件の専門業者にとっては、売買契約後に売主のリースバック契約を仲介できる、というメリットがあるのだ。

指値をされたら

先日の動画でもあったように、任売物件は売却した後でもローン残債が完済できないケースが多いため、まず初めに売主は債権者(融資をした金融機関)と協議をしなければならない。債権者の合意を得ることができれば、協議をした売却価格で抵当権を抹消してもらうことができる。

では、例えば購入希望者(以下、買主)が指値をしてきた場合はどうだろうか。3000万円で任売物件として売却に出ていたところへ、2500万円での指値が入った場合。任売物件の債権者は「融資額の中から3000万円は回収できる」と期待して売主との協議に合意しているため、期待していた金額より下がると困ってしまう。

指値ありの買付が入ったときは、債権者は再協議を行うことがあるため、それだけ時間もかかる。仲介業者としては、できるだけスムーズに売買契約までもっていき、何事もなく決済と引き渡しを完了したいところだが、債権者の再協議で時間がかかってしまうとなかなか取引が終わらない。私も債権者の再協議だけで約2週間待たされたことがあった。

たいていの買主は値下げ要求や指値をしてくるので、元付け業者が債権者に指値額を伝えて協議をしなければならなくなる。どうしても通常の売買案件より手間と時間がかかってしまうのだ。

任売物件で注意すべきポイント

任売物件の購入を検討している場合は、以下のポイントに気を付けておきたい。

・そもそも売主は物件を売りたいわけではないケースが多い
・債権者(抵当権者)が複数いる場合がある
・管理費、修繕積立金を滞納している場合がある

ローンの返済が困難になる理由はさまざまだ。例えば、夫婦収入合算で不動産を購入していたが、離婚したため一人だけでは返済がきつくなった。「任意売却119番」の取材動画にもあったように、サブリース会社の倒産によって家賃が入らずローン返済が困難になった、などがある。前述した通り、任売物件は売主が売買契約に対して消極的なことも多いため、取引自体がスムーズにいかないことがある。

売主によっては「売りたくて売っているわけではない」という気持ちが強い人もいて、内見希望者がいるのにいつまで経っても物件の中を見せてくれなかったり、売買契約までの期間をできるだけ後に延ばそうとしたりする場合もある。投資家としては、例えば「売主さんが抱えている問題の早期解決に向けて手助けしたい」といったように、売主が置かれている状況や心情を酌んだうえでアプローチしていくことが有効なケースもある。

複数抵当権の場合は時間がかかる

任売物件に限らないが、不動産には複数の抵当権が設定されていることがある。売買契約の際はすべての抵当権を抹消してもらうことが条件になるため、任意売却を行うのであれば、複数の抵当権者(債権者)の合意を得なければならない。もし任売物件に1番~3番抵当権までついているのであれば、3人の債権者から合意を得る必要があるのだ。

例えば、3番抵当権までついた任売物件を購入するときに指値を入れると、3人の債権者が協議を行うことになる。3つの銀行が協議するとなると、日程調整や価格の取り決めなどで時間もかかる。任売物件に投資をするときは、抵当権がいくつ設定されているのかもチェックしておきたい。

任売物件がマンションやアパートであれば、売主は管理費や修繕積立金を滞納している可能性も考えられる。滞納された管理費・修繕積立金は、売買時に買主が精算することを条件とされる場合もあるので、滞納の有無や金額などを事前に確認しておく必要がある。仲介業者を通して、マンションの管理組合や管理会社から発行された「重要事項に関わる調査報告書」などの書面を見せてもらえば、滞納金額を確認できる。