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人口減少や長引く低金利政策などにより、銀行にとって苦しい状況が続いている。これは同じ金融機関である信金にとっても同様のはずだ。しかし金融コンサルタントの高橋克英氏は、銀行が時代に淘汰されても「信用金庫は生き残る」と予測する。今回は不動産投資のパートナーである金融機関の選び方を、独自の視点で解説してもらう。

甲子園とプロ野球の違い

毎年、甲子園で熱戦が繰り広げられる夏の高校野球。全試合がTV中継され、伝統も人気もある国民的な大会だが、言うまでもなく高校野球は部活動であり、教育の一環という側面が強い。

一方、プロ野球や米国の大リーグは職業野球であり、スポーツであると同時に営利活動である。観客や視聴者を増やし、球団を所有する企業の価値を上げ、収益に結びつけるというビジネスだ。同じルールに則った同じ競技ではあるものの、高校野球とプロ野球は理念と目的からして異なる。

これは、信用金庫と銀行の関係に似ているのではないだろうか。信用金庫は高校野球のように地域の代表といった位置づけで、相互扶助の理念のもと運営されている。営利を第一の目的としていない組織だ。一方、銀行はまさに営利を第一の目的とする組織であり、プロ野球に近い。信金と銀行では、預金や融資、為替など提供するサービスは同じでも経営理念が違い、組織のあり方も異なっている。

両者の違いをもう少し説明しておこう。信用金庫は株式会社である銀行とは異なり、「地域のお金を地域に還元する」ため、会員制度により運営されている。

企業の会員資格は従業員300人以下、あるいは資本金9億円以下で、信用金庫の営業エリアに立地している中小企業に制限されている。個人の会員資格は、信用金庫の営業エリアに居住、もしくは勤務している者が対象だ(融資対象は会員を原則としているが、預金については会員以外からも受け入れている)。

つまり信用金庫では原則的に、地域の個人や中小企業が預金者であり借入人であるとともに、その信用金庫の会員(株式会社でいう株主に準ずる)でもある。会員イコール顧客ということになる。株式会社である銀行の場合、預金者や融資を受ける企業などがその銀行の株主であるとは限らないから、この点も両者の違いだろう。

揺らぐ地銀の立ち位置

先の例えで考えると、地銀も当然プロ野球に分類される。しかし実際には地域貢献や地域密着、地方創生への貢献などを求められる地銀の姿は、甲子園とも重なる。地方銀行自身も、ある時は株式会社として顧客に対して手数料の値上げや借入金利の引上げを実施する一方、またある時は、預金金利上乗せ定期キャンペーンや、無料の運用セミナー開催、地域社会への貢献活動といった公益的・非営利的事業を展開するなど、両者の顔を上手く使い分けている。さしずめセミプロの都市対抗野球のようにふるまってきたのが実態といえよう。

しかし、その立ち位置を改める時が来た。多くの地銀の業績は減収減益であり、赤字体質が蔓延してきている。非上場化や信用金庫に業態転換するならともかく、株式会社であればプロ野球や大リーグが活躍の場であるはずだ。営利のみを目的としない地方創生や地域密着の主役は、信用金庫やJAバンクなどに任せるべきである。

金融庁など金融規制当局やメディア、そして識者も、甲子園とプロ野球をまぜこぜにして議論し判断していないだろうか。そもそも銀行業として、地域社会に貢献することは、信用金庫も地方銀行もメガバンクも同じはずだ。都市部を含め、メガバンクの店舗が一番多いという地域も多々ある。

一方で、地方銀行など銀行は、合従連衡や個人の資産運用への注力などにより収益力を向上させ、株価を引き上げるのが使命である。当然ながら、店舗や人員の縮小も必要となろう。こうした企業努力の結果、業績が向上することで、地元での雇用創出や納税に繋がる。これこそが、株式会社である銀行による地域貢献、社会貢献の姿のはずである。

なぜ、信用金庫の方を選ぶのか

野球を応援する者にとって、高校野球でもプロ野球でも同じ野球であることには変わりない。より多くの感動やドラマを生む方に共感し応援するのではないだろうか。これを不動産投資ローンの利用者に置き換えてみれば、金利や金額などがより好条件の金融機関を利用するまでである。それがたまたま信用金庫だったり、地銀だったりするだけのことなのかもしれない。

しかし今後は、地域密着と相互扶助の精神をもつ信用金庫をパートナーに選ぶか、株式会社である銀行をパートナーに選ぶかの見極めは、これまで以上に不動産投資においても大切になってくるだろう。今後、業績不振が続く地銀や信金が、業態転換や公的資金注入、最悪の場合は廃業や破綻といった道をたどる可能性もゼロではないためだ。

では、どちらを選ぶべきか。筆者の考えは、「融資条件が概ね同じならば、信用金庫を選択する」だ。銀行はこの先、デジタル化によって、みずほFGと提携して新銀行を立ち上げた「LINE」のような異業種企業との競争にさらされ、店舗や人員が負担となり大苦戦する。一方、信用金庫はより生き残る可能性は高いと考えられるからだ。

信用金庫が生き残る3つの理由

信用金庫も、人口減少や地域経済の衰退、日本銀行の低金利政策による利ざや低下などの影響により、銀行と同様業績は苦しい。それなのに、なぜ銀行よりも生き残る可能性が高いのだろうか。

その理由の1つ目は政治力の差だ。地域密着により築きあげてきた地元政治家や自治体、商店街や商工会議所などとの関係は地銀以上に密接である。信金業界の中央銀行の役割を果たしている信金中央金庫(信金中金)と、業界の利益代表機関である「全国信用金庫協会」の存在も大きいだろう。これら機関などによって、官公庁や国会議員などへのロビー活動なども行われているとみられる。実際、法人税率も優遇されたままだ。銀行などは普通法人として23.2%が適用されるが、信金など協同組合は、原則19%のまま据え置かれている。

なお、地銀には、信金における信金中金のような「中央銀行」は存在しておらず、地銀再編や地銀の業績悪化が叫ばれるなか、政府与党内では、地銀版の中央銀行創設を訴える声も出始めている。

2つ目は、セーフティーネットの存在だ。銀行と同様にペイオフ制度をはじめとした預金保険制度や、金融機能強化法による公的資金制度に加えて、信金業界独自の制度として、信金中金による「資本増強制度」(一時的な要因で自己資本比率が低下する場合の支援)もある。セーフティーネット自体は銀行以上に盤石だといえる。

3つ目は、経営理念とビジネスモデルが一致しているという点だ。冒頭の甲子園とプロ野球の例で述べたように、株式会社である地方銀行なども地域密着や地域貢献を謳ってはいるが、その本家本元は会員相互の相互扶助と地域貢献を掲げる信用金庫だ。理念とビジネスの方向性が一致する組織の方が強いのは当然だろう。

規模や効率性の追求や経営陣の保身を目的化せず、しっかりと地域に根を張る信金に関しては、これからも地域から支持され続けるに違いない。

個人の貸家業向け貸出が中核業務に

全国の信用金庫数は2019年3月末時点で259金庫。預金量は143兆円、店舗数は7294店舗、役職員数は10万人、会員数919万人と巨大なネットワークだ。

出典:信金中金、マリブジャパン(2019年3月末現在 ※クリックで拡大)

貸出量は71兆9836億円で、そのうち中小企業向け貸出が46兆1756億円と全体の64.1%を占める。不動産業向けは16兆8021億円と全体の23.3%だが、そのなかで個人による貸家業向け貸出は5兆8599億円と全体の8.1%を占めており、製造業向け貸出や建設業向け貸出、地方自治体向け貸出に匹敵する規模となっている。

貸出規模に加え、貸出金利も中小企業向け貸出や住宅ローンよりは高めに設定されているとみられ、信用金庫にとって個人による貸家業向け貸出、つまり、個人による不動産投資ローンは、ボリューム、利ざや、ともに中核業務の1つとなっている。実際、個人による貸家業向け貸出は、足元はスルガ銀行などの問題もあり頭打ちとなっているものの、統計のある2011年度以降、増加傾向が続いている。

信用金庫の貸家業(個人)向け貸出の推移(出典:信金中金、地域・中小企業研究所、マリブジャパン、単位は兆円 ※クリックで拡大)

人口減少や低金利により、地銀同様に、信用金庫でもメガ信金が誕生するなど、再編が現在進行形で進んでいる。一方で、地域と中小企業・個人に限定されている信金では、本音では、地銀など銀行以上に、地主や会社員などの投資家向けの不動産投資ローンを積極的に伸ばしたいと考えても不思議ではない。

不動産投資ローンを取り巻く環境が厳しいことは否定できない。しかし、規則と規制に則った上で、信用金庫はこの先も、不動産投資ローンを中心業務の1つとするはずだ。地域の個人投資家に対して、地域の不動産物件へのローンを供与することで、ヒトが集まり、利益が蓄積され、地域が発展することに繋がるからだ。

信用金庫は協同組織の地域金融機関として地域を限定して営業活動を行っており、地域で集めた資金を地域に還元することが最大の目的である。「地元経済に貢献したい」「地域の活性化に少しでも役立ちたい」という言葉は、信用金庫でのローン審査においてキラーワードであり、重視されるのはいうまでもない。

(高橋克英)