PHOTO: iStock.com/ViewApart

横浜市の林文子市長が8月下旬、カジノを含む統合型リゾート(IR)を誘致する意向を表明し、約1カ月後には誘致に関する調査費を盛り込んだ補正予算案が市議会本会議で成立した。

カジノに加え、ホテルやショップなども含めた一大リゾートが建設されることで、経済活性の起爆剤としての期待が高まっている。一方で、治安の悪化やギャンブル依存などの懸念から、誘致に反対する意見も根強いのが現状だ。

大きな国家戦略を基に開発が進められる一大プロジェクトは、不動産マーケットに好影響を及ぼすのか。あるいは治安の悪化などで地価に悪影響が出てしまうのか。住宅ジャーナリストの櫻井幸雄氏に展望を聞いた。

「ギャンブル依存症の人が破滅する」という幻想

まず前提として、日本のカジノは、ギャンブルで身を持ち崩すような人からさらに金を搾り取ろうとしているのかというと、そうではない。

カジノを含む統合型リゾート(IR)実施法が成立したのは、2018年7月の通常国会。国内で最大3カ所にカジノの設置が認められることになった。同時に、日本人には入場料6000円が課され、「週3回」「28日間で10回」の入場回数制限も設けられることになっている。

入場するだけで6000円というのは、結構な金額だ。そして、3日に1回程度しか入れないという計算になる。

以前、ギャンブル依存症の人に話を聞いたとき、「一番怖いのはパチンコ」と教えられた。理由は、1年365日、いつでも朝10時くらいから夜10時くらいまで、底なしに通い続けることができるからだという。

入場回数の制限は、ギャンブル依存症の人にとって大きな抑止力になる。この制限を厳格に守るためには、写真付きの運転免許証やパスポート、住基カードなど、身分証の提示も求められるはずだ。「身分証明書は健康保険証だけ」という人は入りにくい施設になることが予想される。

つまり、日本のカジノが想定する客筋は「低所得であるにもかかわらずギャンブルをやめられないような人々」ではない。カジノの建設によって治安が悪化する、といった悪影響の可能性は低いと予想する。

なぜ、いま「カジノ」なのか

日本にカジノが生まれる理由。それは「外国人を呼び込むためには、カジノが必要であるから」と考えるべきだろう。

かつて東京は香港と並ぶアジア経済の中心地で、国際企業のアジア支社の多くが集まっていた。

その地位を奪ったのがシンガポールだ。

シンガポールは、東南アジアの国々に行きやすいという地の利とともに、税制の優遇を設けてあること、そして英語が公用語のひとつになっていることなど、欧米の企業にとって好ましい条件がそろっている。加えて、「カジノ」があることも大きい。

実はシンガポールのカジノは昔からあるものではなく、つい最近生まれたもの。2005年にカジノが合法化され、11年に2つのIRが誕生した。IRができて、まだ10年も経っていないのだ。

富裕層が集まる場所

2つのIRは規模が大きく、いずれも世界最大級。IRのひとつはシンガポールの象徴「マリーナベイ・サンズ」にある。最上階に船型のプールがある場所だ。

シンガポールでカジノが解禁されたのは、「経済の活性化」のため。国民からお金を巻き上げようというのではない。カジノがあれば、外国企業のシンガポール進出に弾みがつき、それが自国の経済を活性化させる、と考えたわけだ。

シンガポールでは今年4月、自国民のカジノ入場料を大きく引き上げた。100シンガポールドルから150シンガポールドルへの値上げで、日本円にして約8000円から約1万2000円に上がったことになる。また、入場回数無制限のパスもあるのだが、その年会費は2000シンガポールドル(約16万円)から3000シンガポールドル(約24万円)に引き上げられた。

それだけのお金を払うことができる富裕層が集まっているのだ。