総務省が5年ごとにまとめている「住宅・土地統計調査」の一部結果(確定値)が、2019年9月30日に発表された。この調査は、国内の住宅とそこに住む世帯の実態・推移を把握するためのもの。本来は住生活に関する施策などに役立てることが目的だが、不動産投資家にとっては市場の動向をざっと掴む情報として役に立つはずだ。

本記事では同調査結果のうち、不動産投資に関係がありそうなトピックスを5つピックアップして紹介する。さらに、これらの情報からどんな背景が読み取れるのか、日本不動産研究所の吉野薫氏に「深読み」した解説を加えてもらった。

Topics1 国内の「総住宅数」は6240万戸

まず、日本国内の総住宅数(戸建てのほか、アパートやマンションなどの住戸も含む)を押さえておこう。調査によると、昨年10月時点での総住宅数は約6240万戸。前回の同調査実施時(2013年)から約178万戸の増加となっている。一方、国内の総世帯数は約5400万世帯と、こちらも前回から約155万世帯増加している。

「平成30年住宅・土地統計調査結果」を基に編集部が作成(クリックして拡大)

折れ線で示されているのは「総住宅数÷総世帯数」で求められる「1世帯当たりの住宅数」。前回から横ばいの1世帯あたり1.16戸となった。この値も長らく上昇傾向にあり、住宅の供給が過剰な状態が続いていることが読み取れる。

なお、総住宅数は1958年の調査開始以降増加し続けているが、増加率で見ると縮小傾向にある。今回調査対象となった5年間では、前回の5.3%から2.4ポイント減の2.9%と過去最も小さかった。

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「家が余り、賃貸住宅は選ばれる立場にある」

1968年に総住宅数と総世帯数が逆転して以降、1世帯当たりの住宅数も増加を続けてきました。当然のことですが、日本では住宅不足が社会問題になる時代はとっくに終わっているということです。逆に言えば、日本には住宅がたくさんあるわけですから、賃貸経営者の視点で見れば「入居者に選んでもらう立場にある」と言えます。その他多くの物件の中から、将来的にも選ばれる競争力が必要だということを、改めて感じさせられます。

1世帯あたりの住宅数が1.16戸というのは、諸外国との比較ではそこそこ多い方でしょう。空き家の問題も相まって、家が余っているこうした状況を問題と捉える考え方もあるかもしれません。しかしこの「家余り」の状況は、人々の住生活に対する価値観、あるいは住まいに対する需要が刻々と変化する中で、その時々に合った住宅が形成されてきた結果でもあります。その意味で、この住宅の増加ペースはある意味自然なものだと言えるでしょう。

Topics2「空き家」は848万戸、うち賃貸は432万戸

Topics1で取り上げた総住宅数約6240万戸には「空き家」も含まれている。今回の調査によると、その数はおよそ848万戸。総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)は13.6%と、前回からはほぼ横ばいながら過去最高であった。日本の住宅のおよそ7軒に1軒が空き家という深刻な状況が見て取れる。

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続いて、都道府県別に空き家の状況を見てみよう。下表は都道府県別の空き家率ランキングだ。最も空き家率が高かったのは山梨県で21.3%。2位以下では和歌山県が20.3%、長野県が19.6%と続く。空き家率が最も低かったのは埼玉県の10.2%。次いで沖縄県、東京都、神奈川県、愛知県という結果であった。

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では、空き家となっているのはどのような建物なのか。その内訳を見てみると、賃貸用の住宅が432万戸と約半数を占めていることが分かる。総住宅数に占める賃貸住宅の空き家の割合は6.9%だ。

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2番目に多い「その他の住宅」は、転勤や入院などのために長期間不在となっている住宅、あるいは取り壊しが決まっている住宅、区分が困難な住宅、「二次的住宅」は別荘やセカンドハウスなどを指す。「売却用の住宅」は売却のために空き家になっている住宅のこと。

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「深刻な『その他空き家』の増加」

賃貸住宅の空き家は、もちろんゼロにはできません。当然、人は住み替えをしますので、合理的な水準の空き家がなければマーケットが動かなくなってしまいます。問題はこの水準が適切なのかどうかですが、たとえば日本賃貸住宅管理協会の「日管協短観」(2018年度上期)によると、同協会会員である賃貸住宅管理会社が管理する入居率の平均は94%とのこと。賃貸住宅の空き家率としては5~10%程度が合理的な水準であると推測されます。

一方、社会問題としての空き家、という視点では「その他の空き家」に注目すべきです。空き家のうち「その他の住宅」には、相続後に放置されて廃虚化した建物などが含まれており、増加する空き家の中でも特に問題視されています。前回調査時からの空き家の増加数は約29万戸。「二次的住宅」と「売却用の住宅」は合わせて約5万戸減っていますが、「その他住宅」は約30万戸増えています。つまり、増加した空き家のほとんどを「その他の空き家」が占めていることが分かります。空き家問題を考える時は、この事実を前提にしなければなりません。

都道府県別のランキングについては、山梨県や和歌山県など、現代の暮らしにマッチしづらい地形(山がちで傾斜地が多いなど)の場所が上位になっているという印象です。かつては人が住んでいたけれど、現在のライフスタイルには合わず住宅の需要が後退してしまった、と推測されます。

ただし、空き家の問題はこうした山がちな場所や過疎地だけのものではありません。出生率が下がり、人口が減って高齢化が進む現在、たとえ東京都内であっても、駅から遠く傾斜地にあるような住宅地では地価の下落も見られます。こうした場所では今後、空き家が増加する可能性があります。そもそも最も空き家が多い山梨県と最も少ない埼玉県を比較した場合、空き家率では10ポイント以上の差がありますが、最も低い埼玉県でも全体の1割は空き家なのです。首都圏のエリアでも決して遠い問題ではないでしょう。

Topics3 「持ち家」は全体の約6割

国内の住宅数が把握できたところで、今度は「持ち家」と「借家」の割合を見てみよう。

住宅の総戸数から空き家等(所有関係が不明なものも含む)を差し引いた数はおよそ5186万戸。これらのうち「持ち家」は3280万戸で、全体に占める割合である「持ち家住宅率」は61.2%となっている。この持ち家住宅率は前回から0.5ポイントほど低下しているが、1973年から現在に至るまで60%前後で推移しており、大幅な変動は見られない。

ちなみに持ち家住宅率を都道府県別に見た場合、最も高かったのは秋田県で77.3%、次いで富山県の76.8%、山形県・福井県の74.9%。最も低いのは沖縄県で44.4%、次いで東京都の45.0%、福岡県の52.8%となっている。

次に「借家」について。前述した空き家などを除く総戸数のうち「借家」が占める割合は35.6%でおよそ1900万戸。これも過去の調査結果と比較して大きな変動はない。また1900万戸の借家うち、一般のアパートやマンションなどの「民営借家」は約1530万戸。県営住宅や市営住宅といった「公営の借家」が減少傾向にある中、民営の借家は増加が続いている。

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「やはり大きい、賃貸住宅の市場」

注目したいのは、持ち家住宅率が6割前後で推移し続けているという点です。裏を返せば半世紀もの間、全世帯の約4割が賃貸住宅に住んでいるという状況が続いているわけですから、「賃貸住宅の市場はやはり大きい」と改めて実感させられます。賃貸住宅は長きに渡り人々から必要とされ、経済的にも存在意義がある。これがこの結果から読み取れる大きなポイントでしょう。

ここで、この持ち家と賃貸が6:4という構図は今後どうなっていくのか、について考えてみましょう。アメリカなどでは景気変動によって持ち家率が変わることがありますが、日本の場合は住宅ローン減税などがあり、政策として持ち家の取得を支援しています。しかも、毎年新たな住宅が作られているのに、持ち家住宅率が6割で推移し続けているわけです。このことから、持ち家住宅率はこのあたりが飽和点であると考えられます。今後も持ち家と賃貸は、およそ6:4という現在くらいの割合で推移し続けるのではないでしょうか。