Topics4 共同住宅の「延べ面積」は51.14平米

共同住宅1戸あたりの延べ面積は年々増加している。今回の調査では、前回から2.23平米増の51.14平米となった。一方、一戸建てでは前回から2.00平米減の126.63平米という結果だった。

「平成30年住宅・土地統計調査結果」を基に編集部が作成(クリックして拡大)

なお、住宅全体の延べ面積で見ると、全国の平均は92.6平米。この数値は都道府県ごとに大きく異なる。最も延べ面積が広いのは富山県で143.57平米、次いで福井県の136.89平米、山形県の133.57平米となっている。延べ面積が最も小さいのは東京都で、65.18平米。その次に小さいのが沖縄県で75.31平米、次いで大阪府が76.20平米であった。

不動産エコノミスト・吉野薫はこう見る!

「共同住宅は本当に広くなっているのか?」

数字だけを見れば、共同住宅1戸当たりの延べ面積は増えている、という結果です。つまり、以前に比べて多くの人が広い家に住むようになった、ということになるわけですが、率直に言ってこれはどうも実感と合わない気がします。この値は全体の広さを戸数で割る、といった算出方法によるものなので、一部の極端な例が影響しているのかもしれません。

現在の共同住宅がどれくらいの広さなのか、これを測る別の指標として「最低居住面積水準」「誘導居住面積水準」というものがあります。国土交通省が「住生活基本計画」に定めているもので、それぞれ以下のように定義されています。

最低居住面積水準

世帯人数に応じて、健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準

誘導居住面積水準

世帯人数に応じて、豊かな住生活の実現の前提として多様なライフスタイルに対応するために必要と考えられる住宅の面積に関する水準

この水準を満たしている住宅がどのくらいあるのか、今回の「住宅・土地統計調査」を見てみると、全国の「最低居住面積水準未満」の世帯は持ち家3280万世帯に対して33.9万世帯(1.0%)、民営の借家1530万世帯に対して282.6万世帯(18.5%)となっています。また、「誘導居住面積水準未満」の世帯は、持ち家3280万世帯のうち848.9万世帯(25.9%)、民営の借家1530万世帯のうち1057万世帯(69.1%)です。この数字を見る限り、少なくとも「持ち家に比べて賃貸は狭い」ということは間違いなく言えるでしょう。

Topics5 賃貸物件のオーナーが多いのは65~69歳

国内の総世帯数は約5400万世帯。それらのうち、現住居以外に住宅を所有している世帯は、全体の約9.5%に当たる約511万世帯。さらに、この511万世帯のうち「貸家用」の住宅を所有する世帯は約122万世帯ある。

ここで、上記約122万世帯の年齢構成を見てみよう。世帯の年齢(その世帯の家計を主に支える者の年齢)が高いほど、貸家用の住宅を所有している割合が高いことが分かる。最も多いのは65~69歳で約20万世帯、次いで70~74歳の約18万世帯。25歳未満は最も少なく3000世帯、25~29歳では6000世帯、30~34歳では約1万3000世帯であった。

「平成30年住宅・土地統計調査結果」を基に編集部が作成(クリックして拡大)

ちなみに、借家に住む高齢者高齢者(65歳以上)がいる世帯は約2253万世帯あるが、このうち持ち家が約1848万世帯、借家が400万世帯であった。借家に住む400万世帯のうち、高齢単身世帯は約213万世帯と、半数を超えている。

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「単身高齢者の需要は無視できない」

まず、この65~69歳の方々が賃貸用の住宅を持つに至ったパターンは3つ考えられます。1つ目は税金対策として賃貸住宅に投資したパターン、2つ目は、この方々が親世代から受け継いだパターン、そして3つ目がこれまで住んでいた家を住み替えて、元々住んでいた家を貸しに出すパターンです。

いずれにしても、この世代の方々はまさに子育てを終えて、あるいは自身の相続を意識して、または相続を受ける等して「家が動く」時期の人たちです。こういう人たちが持っている物件を新たに賃貸市場において経済的に行きを吹き込むのは意味があることだと言えるでしょう。

一方で、借家に住む高齢者の単身世帯が半数を超えているのは意外な結果でした。いま、高齢の単身者に部屋を貸す抵抗を感じるオーナーは少なくないかもしれませんが、現にこういう人たちが多いということについては向き合う必要があるのではないでしょうか。団塊の人たちが後期高齢者を迎える中で、独居の人は増えていくでしょう。そういう人たちが借家を選択肢とするならば、供給側もそれにどう答えるか、向き合わざるを得ません。もちろん孤独死などのリスクもあるが、少なくともマーケットは存在すると言うことは把握しておく必要がありそうです。

賃貸住宅の新たなマーケットを探す

最後に、不動産エコノミストの吉野氏に今回の調査結果を総括してもらった。吉野氏によると、調査結果を改めて深掘りしてみると、賃貸住宅市場に「新たなマーケット」が生まれる可能性が見えてくるという。

冒頭でお伝えしたように、賃貸住宅の市場はこれまで半世紀に渡って住宅全体の4割を維持し続けています。持ち家住宅率は6割くらいが飽和点であり、賃貸住宅への需要は今後もなくなることはなく、市場そのものも存在し続けるだろうと推測できます。一方で、「賃貸住宅は持ち家に比べて質が低い」と考える人もいるかもしれません。仕方なく賃貸に住むという方も少なくないでしょう。今後、賃貸住宅のオーナーはこの「質的な違い」に着目し、改善していくことで競争力を高める必要があるのではないでしょうか。

もちろん、賃貸住宅の方が優れている面もあります。たとえば「立地」。今回の統計には全国の通勤時間に関する結果が含まれているのですが、持ち家の通勤時間は32.1分、民営借家では25.5分(いずれも中央値)となっており、賃貸住宅に住む人の方が通勤時間が短くなっていることが分かります。「職場に近い住環境の提供」、という意味では、持ち家よりも優れているわけです。

現在の賃貸住宅が持ち家に比べて十分に対応できていない部分としては、先に紹介した「広さ」のほかに「性能」(バリアフリー性能や断熱性能)があります。これらは賃貸住宅ではまだ十分に普及しておらず、持ち家との質の差につながっています。これらは、現在の賃貸住宅が十分に対応できていない部分であり、逆に言えば新たな需要を喚起できる切り口でもあると思います。

今後仕方なく賃貸に住む人を減らし、賃貸を選んで住む人を増やしていくことは、事業としても社会的にも意義があります。その切り口のひとつとして、持ち家と賃貸の違いを読み解くことはよい着眼点になるのではないでしょうか。

住宅の性能は、生活の快適性に直結するものです。にも関わらず、なぜ現在の賃貸住宅の性能が低いままで成り立っているかと言えば、住み手側がその快適さをまだ知らないから。つまり情報の格差でしかありません。

そういう賃貸住宅が世の中になければその快適さを誰も知らないのでマーケットが存在しないが、供給側がそれをマーケットに提供することで需要が生まれ、その快適さにみんなが気付いて、需要が広がってマーケットが拡大していきます。その結果、「ある日突然」、それに適合しない住宅は一気に競争力を失うことにもなります。バリアフリーや断熱性能は看過されがちですが、長期的な人々の需要を捉えるなら疎かにできないし、そういうものを先取りすることこそ、住宅を供給することの社会的意義なのではないでしょうか。

吉野薫(よしの・かおる)
一般財団法人 日本不動産研究所主任研究員 不動産エコノミスト。大妻女子大学非常勤講師。東京大学経済学部卒、東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。日系大手シンクタンクのリサーチ・コンサルティング部門を経て、一般財団法人日本不動産研究所にて現職。現在、国内外のマクロ経済と不動産市場の動向に関する調査研究を担当している。専門は都市経済学、経済政策。著書に「これだけは知っておきたい『経済』の基本と常識」(フォレスト出版)、「Q&A 会社のしくみ50」(日本経済新聞出版社、共著)がある。

※本記事で使用しているデータ・図表は、すべて総務省統計局による「平成30年住宅・土地統計調査結果」(2018年10月1日現在における調査結果)における「住宅及び世帯に関する基本集計」に基づいています。なお同調査は、全国から無作為に選ばれた370万世帯を対象とした標本調査であり、集計結果の数値は推定値です

(楽待新聞編集部)