PHOTO:haku/PIXTA

今年10月に税率が10%となった消費税。一部食料品などに適用される軽減税率の制度が新たに導入され、大きな話題となった。一方、不動産投資の世界では「消費税還付」をめぐるスキームや法改正が度々話題に上がる。「自動販売機スキーム」や「金地金売買スキーム」などと呼ばれる手法だ。

これらのスキームは、投資家の間で広まっては当局から規制がかかるという「イタチごっこ」が続いてきたが、こうした状況はなぜ起こったのか。税理士の大野晃男氏に消費税還付スキームの歴史を振り返ってもらい、今後の動向についても予測してもらった。

国税庁の「意見」は規制の布石?

令和元年(2019年)の税制改正では、消費税還付を直接規制するような変更は行われませんでした。ただ、国税庁から次のような「意見」が出され、話題となりました。

1.課税売上割合の計算に含めると事業者の事業実態からかい離することとなる場合には、当該資産の譲渡に係る売上高を課税売上割合の計算から除外する。

2.若しくは、事業者が算出した課税売上割合が事業実態からかい離する課税売上割合と認められる場合の事後的否認規定を措置する。

※税務通信3549号より

一言で説明すると、「大家さんの課税売上割合を計算する際には、金地金の売買を課税売上とは認めないようにするつもりですよ」という内容です。あくまでも「意見」の段階ですが、後述する「金地金売買スキーム」の規制を宣言しているように受け取ることができます。

今回は、そもそも大家さんの消費税還付スキームがなぜ生まれ、どのような経緯で規制されてきたのか、その変遷についてお話したいと思います。

「不動産賃貸業は還付できない」という矛盾

消費税はその名の通り、最終消費者(最終的に食べた人や使った人)が税金を負担する仕組みになっています。以下の図で説明しましょう。

図中の1~5をそれぞれを説明すると以下のようになります。

【1】AさんがBさんに自動車を110万円(税込)で販売

【2】Aさんは受け取った消費税10万円を納税

【3】今度はBさんがCさんに自動車を330万円(税込)で販売

【4】Bさんは受け取った消費税30万円から支払った消費税10万円を差し引いた20万円を納税

【5】結果としてCさんが消費税30万円を負担(【2】10万円+【4】20万円)

では、住宅を貸している大家さんの場合はどうなるでしょう?

会員限定記事です

この記事の続きを読むには、会員登録が必要です
会員登録(無料) ログインする