続いて、どのような金融機関が融資を出しているのかという点を分析していく。

今回の融資承認事例で、メガバンクの割合は6%にとどまった。特に、あるメガバンクに関しては「築10年を超えた物件の融資はよほど立地がよくなければ否認すると言われた」(広島県・60代男性)「10月末でサラリーマン向け融資から撤退し、地主のみを相手にすると聞いた」(千葉県・30代男性)など、融資姿勢の大幅な変化を指摘する声が複数あった。

融資承認が下りた金融機関種別を半期ごとの推移でみていくと、2期連続で地銀の割合が減少し、逆に信金・信組の割合が増えていることが分かる。

信金・信組で融資を受けたという回答者の6割は5物件以上を所有しており、事業者本人の信頼性や取引実績を重視している傾向が伺える。扱う物件の規模は地銀と比較すると小さく、特に2000万円以下の築古戸建が目立った。

やはり頭金は2、3割程度を求められる傾向が強まっている。東海地方の信金で築30年の軽量鉄骨アパートを購入した東京都の40代男性は、4200万円の物件に対して3割以上の頭金を拠出し、「非常に厳しく、土地の評価額までしか伸びなかった」。南関東の信金で木造アパートを8100万円で購入した埼玉県の40代男性も「自己資金2割が必須で、融資期間も耐用年数が限度だった」と語った。

一方でオーバーローンを引いている投資家もいる。東北地方の信金から築11年、3800万円の軽量鉄骨アパートで1.2%・20年のオーバーローンを獲得した栃木県の40代男性は「所有物件の収支が安定していることとと立地の評価」と話した。

築50年で1300万円の戸建を地元の信組に持ち込み、2.25%・20年のオーバーローンを引いた東京都の40代男性は「貸し出しに前向きな担当者と半年前から打ち合わせ、条件が悪いシミュレーションもしたことがよかった」と振り返った。

地銀は慎重姿勢

地銀の融資姿勢については、全体的に「厳しくなっている」との声が目立った。

金融庁は今年4月の「金融システムレポート」で、不動産業向け貸し出しの対GDP比率が上昇を続けている状況に、バブル期以来の「過熱」を警戒する姿勢を示した。不動産業向け貸出の比率が3割を超える地域金融機関があることに触れ、「その比率を高める金融機関ほど自己資本比率が低い傾向もある」と言及するなど、「不動産頼み」の一部地銀への警告とも取れる内容だった。

実際に、「熊本県内の地銀2行は1年間はサラリーマン投資家への融資はしないと聞いた」(熊本県・40代男性)「福岡県内のある地銀では、支店や担当者は融資をしたいが不適切融資問題で本部が慎重になっているということだった」(福岡県・30代男性)「静岡県内の地銀と信金3行に1200万円の物件を持ち込んだが、スルガショック以降に国からサラリーマンへの融資を慎重にという指示があって融資が難しいという回答だった」(静岡県・40代男性)などの情報があった。

このように融資姿勢が厳しくなった地銀でも融資を受けられている投資家はいるが、半数以上が金融資産3000万円以上で、500万円以下は1割ほど。物件単体の収益性や担保評価はもちろんだが、投資家本人の属性をシビアにみる傾向は根強い。その分、金利については信金・信組より平均0.5%程度低くなっている。

九州地方の3500万円の重量鉄骨アパートで、地元の地銀から1.2%・15年のフルローンを引いた熊本県の50代男性は「経営実績、資産背景、物件資産価値からの融資承諾で、担当者の力はほぼないと思う」。近畿地方で築15年、利回り10%、7300万円の重量鉄骨アパートを2.1%・22年のオーバーローンで引いた兵庫県の50代女性も金融資産5000万円以上で、「金融資産があると借りやすく、プライベートバンク的な扱いだと融資を受けやすい」と話した。

九州地方で築44年、7000万円の中古RCを地元の地銀から0.55%・30年のオーバーローンという好条件で引いた30代男性は「預金を担保にしたことで融資承認を得た。返済が進んだら担保解除をする」と語った。

「強い味方」は相変わらず

最後に、「融資承認が下りた」という回答のあった金融機関の推移をみていきたい。今回のアンケートで回答が最も多かったのは、日本政策金融公庫だった。独自の審査基準を持ち、民間の金融機関では通らない案件でも糸口を見出せる可能性のある公庫が、融資の厳しい時代に生きる不動産投資家にとって強い味方となっている状況は過去2期と変わっていない。

公庫の融資金額には一定の制限があり、今回の融資承認事例の95%は4800万円以下だった。融資金利は属性や利用する制度によっても変化するが、今回のアンケートでは1%台前半~2%台前半が主という結果だった。

融資期間は以前より伸びにくくなっている傾向があり、今回融資承認を受けた回答者も大半が10年。「15年を希望したが10年に変更された」(栃木県・30代男性)「15年はもう無理になった」(東京都・60代男性)などの意見があった。

公庫の大きな特徴は耐用年数をそれほど考慮しないことで、築古高利回り物件を狙う投資家にとっては使い道が広い。今回のアンケートで「残存耐用年数(法定耐用年数-経過年数)-融資期間」がマイナスとなる案件、つまり融資期間が残存耐用年数を超過している事例は85%に上り、築40年以上の戸建てや木造アパートでも融資を受けているケースが多かった。

2500万円、築40年の木造アパートを頭金2割の1.46%・10年という条件で引いた東京都の30代女性は「築古かつ市街化調整区域で、銀行では『22年以上のものは無理』と門前払いされた。でも、仲介会社に紹介された公庫の担当者は不動産に詳しくスムーズで、積算だけでなく運営が回るかどうかで判断してくれた」と振り返る。南関東の築40年、300万円の戸建てをオーバーローンで引いた神奈川県の20代男性も「ボロ戸建ならやはり公庫が一番」と語った。

支店によって融資姿勢に違いがあるのも特徴で、「融資担当と業者担当のつながりで大きく融資反応が異なる」(埼玉県・40代男性)「担保余力があったことと融資担当が親切だったので3日で融資決定」(東京都・40代男性)「不動産会社から融資担当を紹介してもらったことが大きいと感じている」(兵庫県・30代男性)などの意見があった。

一方、「9月に面談したら、月に30万円収益を上げられない物件は事業性融資対象とみなさないと言われた」(大阪府・40代男性)「頭金2割入れる想定で相談しても否認された」(千葉県・50代男性)「昨年から頭金4割求められるようになった」(愛知県・30代男性)など、融資姿勢の変化を指摘する声もあった。

金融庁は前出の金融システムレポートで、不動産業向けの貸出に関して中長期の空室増加や賃料下落のリスクを指摘した上で、「人口や企業数の減少、成長期待の低下といったバブル期と異なる経済状況の下で、将来物件需要に対して過大投資になっていないか注視していく必要がある」と指摘している。

これは金融機関に物件単体の収益性や賃貸需要のリスクを勘案するよう呼び掛ける一方で、融資獲得に前のめりな投資家に対する戒めとも捉えることができる。

スルガショック以降、自己資金に乏しく返済能力のない投資家が、エビデンスの改ざんや二重売買契約などの方法で身の丈に合わない物件を取得するケースは減り、不動産融資は「正常化」したという見方がされるようになった。しかし今回の融資承認事例でも、リスクをカバーできないような属性の投資家が、フルローン・オーバーローンで多額の融資を引くケースが散見されたことも事実だ。

投資家として融資を引きやすい金融機関を求めることも重要だが、自身の属性や物件の収益性、エリアの将来的なリスクなどを総合的に勘案し、金融機関の審査を信用しすぎず、投資判断にあたっては慎重な姿勢で臨むことが必要といえる。

(楽待新聞編集部・金澤徹)