日米に収益物件を所有する投資家、石原博光さん。普段は米国カリフォルニア州のベーカーズフィールドにお住まいですが、9月下旬から日本に一時帰国していたそうです。

その際に、日本の不動産投資家の方々と交流を深められたといいます。今回は投資家の方々のお話から、日本や米国の不動産投資について、注意点や心構えを語っていただきました。 

メガバンクより「地銀・信金」を選ぶ投資家たち

こんにちは、石原博光です。普段は米国にいる僕ですが、実は先日、日本に一時帰国していました。その際にたくさんの不動産投資家の皆さんとお会いし、お話を聞かせていただいたので、今回はそのことをコラムにしたいと思います。

お会いした中で印象深かったのは、東京23区、それも山手線沿線のいわゆる一等地で新築マンションをバンバン建てている、元気な方がいるんだな、ということでした。だいたいネット利回りで5%だそうです。

ちなみに、米国のサンフランシスコだと、オールキャッシュでもネット利回りで1%を切るのでは? と思います。ロサンゼルス市内も2%程度。新築だけではなくて、中古物件でもそうです。古くて狭いコンドミニアム(区分)で、ようやく3%出るかな…という感じです。僕の住むベーカーズフィールドで、やっと5~7%になります。プロパティタックス(固定資産税)が日本と比べて高いということもあると思います。こうしてみると、やはり日本の物件というのは良いですね。

彼らに融資について聞いてみると、メガバンクではなくて地銀や信金から融資を引いているということでした。たとえメガバンクから融資承認が下りていたとしても、地銀などを利用するそうです。不思議だな、と思っていたのですが、話を聞くと納得しました。

地銀を選ぶ理由は、「継続的に融資を出してもらいたいから」ということでした。現在の市況だと、少し高い金額になってしまうと、メガバンクは「これが終わったらしばらく出せない、お休みしてください」となってしまうことがある。融資を引き続けられる富裕層もいますが、少なくとも僕の周囲だと、出してくれても1回きり、というスタンスが多いです。

その一方、地銀や信金は多少金利が高いというデメリットはあります。ですが、それを支払ってでも継続して融資を検討してもらえる方がありがたいのだ、という話でした。

建築施工費の圧縮を図る

とは言え、やはり投資ですから収入は重要。利回りを高めるために努力や工夫をされているそうです。例えば、新築をする際にはゼネコンやハウスメーカーに窓口となってもらって、それぞれの施工過程で発注をかけますよね。これを、部分的に自分のところで引き取る。例えば、基礎工事のところは別の見積もりをとってぶつけてみるとか、設備品もメーカーや問屋さんと仕入れ交渉を行う。そうやって建築施工費の圧縮を図るそうです。

もちろん、全部こんなことをしていれば嫌な顔をされますから、バランスは重要です。しかし、ここを削ることができれば大幅に安くすることができますので、皆さん知恵を絞り、コミュニケーションを上手に取っていらっしゃいました。

うまく不動産投資ができている人は、全部どこかの会社に丸投げするのではなく、良好な関係性を保ちつつも1円単位までコストダウンに努めていて、一方で金利を大目に払う場面も心得ていて、まさに生き金の使い方を極めていると実感しました。

行動力があって、頭が柔軟で、物おじせずにきちんと交渉できる人は、こういう不動産投資・冬の時代でも上手にやっているんですよね。

不動産投資の考え方は「どれも正解」

ほかにも、地方の物件に一緒に行かせてもらったりお話を伺ったりしました。これらはすべて戸建て物件でしたが、いずれも利回り20%超の物件。30%くらいになっているものもありました。

そのうちの1人のオーナーさんは、もともと都心に安心感を覚えるタイプの方。関東地方の某ローカル駅の物件で、入居者もいるし、家賃も安定的だし、利回りも20%を超えているし、問題ないように思えますが、地方の物件を買ってみたが、どうしても不安で仕方ないそうで、入居者のいるうちに売ってしまいたい、というのが売却理由でした。

不動産投資っていろんな考え方があって、どれも正解だな、と思います。都心や郊外に対する得手不得手も、生まれ育った環境に大きく影響されることでしょう。地方で安定的に収益を得られている人は、なにも都内で収益の低いのをやらなくてもいいんじゃないの、と思うだろうし、都心でやっている人は、需要が低いかもしれない地方に不安感を覚えるのだろうし、面白いですよね。

海外不動産投資に「失敗した」という人々

今回の一時帰国でお会いした方々の中には、海外不動産投資を行っている方もいらっしゃいました。しかし、聞いてみると(体感ですが)8割ほどの人が「海外不動産投資には満足していない」というのです。その方々は、日本である程度規模を拡大され、順調に収益を得ている方です。にもかかわらず、少なくとも日本で行っている不動産投資のレベルには、とうてい追い付いておらず、「失敗した」、もしくは「ちょっとやり方がまずいかもしれない」と悩む方々が多い、という印象を受けました。

では、なぜそのように感じているのか。話を聞いてみると、やはり皆さん高値掴みをしてしまっているのです。多くのケースでは、業者(日本の業者です)がそのまま売り主でした。こういう場合、メリットとしては日本語で取引ができることは無論ですが、業者が売り主なのでゆっくり検討ができるということと、その業者経由で融資を利用できるものもありました。

反面、販売価格にその業者の利益がたっぷり乗ってしまっている物もあって(相場の2割増しという印象です)、デメリットばかりということではありませんが、そもそも高値掴みをしている時点で、投資としては疑問が残ります。

こうなってしまう要因は、おそらく言葉の問題があるのでしょう。現地の業者との会話は当然日本語以外の言語となるので、どうしても及び腰になったり、面倒くさいという気持ちが勝ってしまったりで、日本語で依頼できるなら管理も含めて丸ごとお願いするという構図になっているのだと思います。 

訴訟大国ならではのリスク

安く買えたとしても、その後の費用がかかりすぎて失敗だったかもしれない、と感じる方もいます。

例えばこれは米国の話ですが、違法改築がしてあるような物件はよくあります。こうした物件は一般的な融資がつかないので、当然安く買えるわけです(日本でも同じですよね)。ですが、こうした物件を違法のまま貸し出すことは大きなリスクです。米国は訴訟大国なので、それこそ敷地のくぼみでつまずいて怪我をしただけでも、その物件のオーナーは入居者にすぐに訴えられてしまう可能性があります。

だから、まともな管理会社はきちんと修繕し直して貸し出すように言ってくるわけですが、当然それなりに費用がかかります。

あるいは、こうした高額な修繕費の見積もりが出されても、それが果たして本当に必要なものかどうかの判断も難しく、言われるがまま払っているケースもあるでしょう。

こうした、海外の事情があまりよくわかっていないとか、購入後にかかる莫大な費用を想定していなかったり、思い違いがあったり、不勉強で失敗に陥っている人も中にはいるようです。

また別の話ですが、海外不動産投資をめぐる詐欺は実際に起きています。物件を購入して、お金を払ったにもかかわらず、実は売買が成立しておらず、お金だけ取られてしまったとか、修繕費を先払いしたのに一向に工事が進まず、訴訟に発展しているケースもあります。

成功している投資家の特徴は…

そんな海外不動産投資ですが、もちろんうまく運営をしている方もいらっしゃいます。お話を聞いた中では、日本国内の金融機関に相談に行き、自分が国内に持っている物件を担保にローンを自力で組んで、海外に進出した方が複数いらっしゃいました。

また、米国に物件をお持ちの方は、プロパティタックスがあまりに高いので、自ら英語で行政にきちんと「この評価はおかしい」と主張し、評価額を下げてもらった人もいました。売却するときには、行政の査定に準じるため諸刃の剣となりますが、そうは言っても固定資産税は日本と比べても非常に高いので、見直してもらう機会があると知っておけばいざという時に有利です。

さらには、これも米国ですが、米国の生活保護のシステムを研究し、積極的に生活保護受給者を入居者として受け入れて安定的に収入を得ていると言う人もいました。「役所が間に入るから、家賃はきちんと入ってくるけど、普通の人より細かく対応させられるんだよ」と言っていましたが、こういったことはきちんと勉強して、経験しているからこそ語れる話だな、と僕自身も勉強になりました。

海外でも成功している投資家は、やはり自分の足で現地を歩き、情報収集をし、自分主体で動いている方々です。こうした方々は大変な苦労をしても、それら全ての物事が経験値になっていくので、「失敗したまま」という人は少なくて、良い形へと進化を遂げています。そんな彼らの常に努力をし続けている姿勢に、尊敬の念は深まるばかりです。

もちろん、ほとんどの方は投資するエリアや、物件について勉強をされています。ですが、そういったことだけで安心をせず、管理や生活習慣や法律など、幅広く勉強されると、より失敗しづらくなるのは間違いありません。

今回の一時帰国で感じたのは、地方は地方でいい物件は転がっているし、都心は都心で、新築を建てて諸外国に比べ高いネット利回りで収益を上げている人もいる。融資が下りにくいとは言え、融資が下りるところは存在しているし、価格が高いからあきらめるのではなくて、安くするための努力や工夫、経験を積んでいる方がたくさんいるんだな、ということでした。

僕自身は、今のところ日本での規模拡大は考えていません。僕の住むベーカーズフィールドで、子供が大きくなるまでにもう少し戸建て物件を増やしたい。そして60歳になったら、別の新天地を求めてもいい。その時は海が近いといいですね。実はこれまで、「いつかは大好きなセドナ(編集部注:アリゾナ州にある、赤い岩山に囲まれた町)」と言い続けてきましたが、陸続きという地の利を生かして何度も訪れてしまいましたので…(笑)。

いつ死ぬかわからないからこそ、後悔したくない。やれることをやっておきたい。そんなことを考えています。

おまけ・石原さんのアメリカこぼれ話(番外編)

今回の1枚目(記事冒頭)の写真は、日本に一時帰国した際の写真です。ただ、実は今回写真を撮らなかったので、前回(今年の春先)の写真なのですが…(笑)。

上の写真は、今回の帰国で搭乗したスターウォーズジェット「BB-8」の特別塗装機です。お願いすれば絵葉書や紙コップ、新品のヘッドカバーなどの記念品を貰えたそうですが、後の祭りでした。国内便と国際便がそれぞれ2機就航しているので、みなさんも機会があればぜひ!

最後の写真は、埼玉県日高市にある「巾着田(きんちゃくだ)」を訪れた様子です。見渡す限りの曼珠沙華が、息を飲むほど見事でした。高麗川のほとりにはオーガニックの食事が楽しめるカフェがあり、さらに道端には手作り豆腐のケーキ屋さんなどもあって、いずれも友のもてなしで素晴らしい秋の日本を堪能して参りました。

(石原博光)