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12月が近づき、今年猛威を振るった台風のシーズンも終わりを迎えようとしている。台風関連の報道を目にする機会も減りつつあるが、自然災害はいつ発生するか分からない。危機意識は常に持っておきたい。

災害時に想定されるさまざまな被害のうち、特に盲点となりやすいのが詐欺や悪徳商法だ。災害に便乗して金を稼ごうとする輩はいつの世にも存在している。今回はそうした悪徳な手法について、詐欺・悪質商法ジャーナリストの多田文明氏に解説してもらった。

災害に犯罪はつきもの

今年に入り、関東・東海・東北を通過した2つの台風15・19号は記録的な暴風雨をもたらし、各地に甚大な被害を発生させた。千葉県では長期にわたり電力が復旧せず、多くの屋根が吹き飛ばされ、家々にはたくさんのブルーシートがかけられた。19号では多くの河川の堤防が決壊して家屋が水に浸かり、多数の死傷者が出た。悲しいことだが、災害が起こるたびに詐欺や窃盗、悪徳商法による被害が起こる。

たとえば昨年7月の西日本豪雨災害では、役所の職員を名乗り、義援金を振り込むようにという電話がかかってきたり、公的機関を騙り、被災地に「料金の支払いが未納です」という架空請求のハガキが大量に送り付けられたりした。

西日本豪雨で浸水した岡山県岡山市の町(PHOTO:Ms/PIXTA)

また今年8月の佐賀豪雨の後には、災害対策非営利団体の職員をしているという女性から「見舞金が出ますよ」と、住所や名前などを聞き出そうとする不審な電話もかかってきている。台風15号による被害が深刻だった千葉県内では義援金の支払いを促す電話も発生したが、それだけでなく家に侵入して金品を盗む窃盗事件も起きている。

このように、災害が起これば必ずそれに付随するような詐欺や悪徳商法が起こるのは、昔から変わっていない。

詐欺や悪質商法では、相手の不安につけ込んで金を出させようとする。たとえば、過去に被害が多かったのが「霊感商法」だ。悩みを持っていそうな人物に声をかけて、「あなたには悪霊が取り付いているので、このままだと病気になる。事故に遭う」などと恐怖心を煽り、運勢がよくなるという高額商品を売りつけたり、除霊費用などを騙し取ったりする。

災害の場合は、とくにこの恐怖心を煽る手法が使いやすい。というのも、被災者はすでに先行きの不安を抱えている。霊感商法のように「まず相手を不安にさせる」というステップを踏むことなく、スッと騙しに入っていけるからだ。大規模な災害は、騙そうとする輩にとっては、甘い蜜に見えているのだろう。

こうした被害を減らしていくために重要なことは、防災だけなく防犯に関する情報もセットで知っておくことだ。過去の事例を見てもわかるように、災害に付け込む詐欺や悪徳商法による被害は、災害から時間の経過とともに増えていく。これに備えるために、すばやく的確な防犯情報の伝達が求めらる。しかしながら、行政も災害による被害の把握、救助などの対応で手一杯の状況である。詐欺や悪徳商法への注意喚起は、後手に回ってしまいがちだ。

「ブルーシート」を使った悪徳商法

たとえば、千葉県を襲った台風15号の暴風により多くの屋根が吹き飛ばされた。当然、雨の侵入を防ぐためにブルーシートなどをかける必要が出てくる。一方で、ブルーシートをかぶせようと家人が屋根に登り、転落する事故も多発している。これを受け、自治体などから「一般の人が屋根に登って作業をすると重大な事故につながる恐れがあるので、専門業者に依頼してください」といった注意が流された。

落下事故が相次いだことから、自身での施工が危険であると注意を呼びかけている(10月発表 千葉県『報道発表資料|応急防水施工(ブルーシートの展張)による家屋補修の支援について』より)

確かに大事な情報ではあるが、この情報だけでは足りない。これを見た悪徳業者はしめしめ、となり、専門業者のフリをして近づいて「ブルーシートをかけましょうか?」と家を訪れ、高額な金を騙し取ろうと考えるからだ。実際、千葉県内に住むある高齢の女性は、ブルーシートをかぶせてもらっただけで18万円を請求されている(一般的な住宅の場合、高くても5万円程度が相場)。

重要なのは、「専門業者に依頼するように」という注意喚起だけでなく、業者に頼む場合の相場がいくらなのか、といった情報もセットで知らせることだ。筆者が出演した9月末の某テレビ番組でも、ブルーシートをかけただけで高額請求された被害者に話題が及び、出演者から「ブルーシートをかける適正価格がわからなければ、(被災者は)どうしようもないではないか!」という厳しい指摘が出たが、おっしゃる通りである。

施工費用の目安。こうした情報も早期の段階で発信することが重要だ(10月発表 千葉県『報道発表資料|応急防水施工(ブルーシートの展張)による家屋補修の支援について』より)

そうした悪徳業者から身を守れるような情報を防災情報とともに伝えていないのだから、被害が出てしまうのも仕方がない。今の時代、防災と防犯の情報はセットで伝えなければならない。

千葉県からは、台風の襲来から1カ月ほどたってようやく適正価格などの情報が出されるようになった。もっと早い、被災者目線にたった対応が今後、災害時には望まれる。

もっといえば、正規の値段以上で作業を行った業者が、本当にまともに作業を行っているか怪しいものだ。悪徳業者は、いかに手を抜いて稼ぐかを考えるもの。値段が高いから安心でなく、高いから逆に怪しいと考えることも必要かもしれない。

災害発生後に起こる犯罪

災害時、詐欺や悪徳商法の被害が多発する理由として、情報の遮断がある。災害によって電気が止まり、電話も通じなくなり、情報が入らなくなる。行政からの注意喚起も被災者の耳に届かなくなるだろう。したがって、詐欺や悪徳商法に備えるための防犯情報も、災害が起こる前から周知しておくことが重要だ。

災害時の避難において、多くの人はハザードマップを見て避難経路を考えているだろう。これは、実際に災害が起こった時のためには必要だ。しかしながら、災害時の防犯に力を入れているという話はあまり聞かない。災害後、どういう風に犯罪者がやってくるのか、事前に知っておかなければ身の守りようがないのではないだろうか。

そこで知っておきたいのは、災害後にどのような詐欺や悪徳商法が起きるか、その手口を時系列で知っておくことだ。順番に見てみよう。

まず災害直後に発生するのは、空き巣といった窃盗である。住民が避難していることがわかれば、誰もいない家に侵入しやすい。それに、家からモノを持ち出していても、家財道具が散乱しているなかでは何が取られたのかわからない。多くの人が避難した地域は確実に狙われる。台風が去り、河川の水が引き、住民が家に戻れる状況になった時点で、できるだけ早く地元の見回り活動などを展開する必要がある。

災害時のSNSを通じた被害情報の発信にも注意をしたい。SNSで被害の状況を伝えることで、救助につなげられたり、不足している物資の情報を発信できたりするなどの利点はある。だが犯罪者もまた、その内容を見ていることを忘れてはならない。水が引いて道路が通じたことを犯罪者が知れば、その地域にやってくるかもしれない。SNSの活用には一長一短があることを肝に銘じながら、情報を伝える必要があるだろう。

不安につけ込む悪徳商法

人々が家に戻り、家財の処分などを始めると、在宅時を狙い、詐欺や悪徳業者が忍び寄ってくる。実際に起きた手口を見てみよう。

国民生活センターによると、70代のある女性は、台風で屋根が壊れて雨漏りしたので、家にあったチラシを見て業者を呼んだ。その時、まずブルーシートを掛けて、その後に屋根のふき替え工事をすることになったが、その金額は約200万円と高額だったという。

被害に遭った状況下では、現状の家の不具合をなんとかしたいと思うだろう。そこに付け込まれるわけだが、その際、悪質業者はファーストコンタクトを通じて、相手の振る舞いから騙しやすいか否かを見抜く。騙しやすいと判断すると、高額な金を要求する。向こうからやってきた訪問業者だけでなく、自分が呼び込んだ業者が悪質だったということもあるのだ。自分が呼んだから契約しなければならないとは考えず、その場での即決は避けるようにしたい。

この他にも、「市役所から依頼されてきました」「無料で屋根を見ています」などと、ボランティアで行っているかのような口ぶりで敷地内に入りこみ、勝手に工事をして金を請求するなどの事例もある。

千葉県では、70代の女性の家に男らが訪れ、女性が工事を断ったにもかかわらず「屋根が壊れている」「早く直さないと大変なことになる」と脅して、無理やりに屋根瓦の修理をしてしまった。やむなく女性は25万円を支払ってしまっている。もし断っているにも関わらず強引に工事をされてしまった場合、まずは警察などに相談する。実際、この女性は警察に相談したので、業者の男らは特定商取引法違反(威迫、困惑)の疑いで逮捕されている。こうした対応が大事である。

災害後、復旧は進み、電気がようやく通じた。これでほっと安心……する人も多いことだろう。だが、この安心した状況に付け込む犯罪もある。電力会社などを装った人間が数人で家にやってきて、「漏電していないか確かめます」と言って家に上がり込む。そして家人が目を離した隙に金品を盗むのだ。すぐに家に上げずに、まず相手が本物の電力会社かどうかを身分証で確認することが必要だろう。この点検窃盗の手口は災害時に限らず、通常時にも注意しておきたい。

ここまで紹介した事例は一般向けの情報に寄っているが、不動産を所有する大家さんにとっても決して他人事ではない。災害に便乗して、外壁や屋根の塗装、修繕などで高額な費用をふっかけてくる業者がいるかもしれない。経験豊富な大家さんであれば、相場より高額な工事費を支払ってしまうようなことは少ないかもしれないが、物件を所有して日が浅い新人大家さんは注意が必要である。

災害が起きて電話が不通となれば、警察にもすぐに通報できない。犯罪者にとってやりたい放題の状況になる。今後も異常気象は続き、いつ大規模な災害がわが身に降りかかるかわからない。被災者の救助に奔走しているうちに騙しの魔の手は多方面に伸びて、新たな被害を出してしまう。

後追いでの注意喚起ではダメなのだ。そのころには悪徳業者はその場所から離れている。ゆえに、事前の注意喚起と、的確で迅速な犯罪への対策が必要になってくる。そのためにも、防災と防犯はセットで行うという姿勢を忘れてはならない。

(多田文明)