「不動産会社の甘い言葉を鵜呑みにして、儲からない物件を掴んでしまった」
「毎月のキャッシュフローが赤字で、どうしたらいいかわからない」
「物件を購入してみたものの、このまま何十年も持ち続けるのが不安」

――このように、「不動産投資で失敗してしまった」と感じている方は少なくないと思います。そんな悩める方たちの相談を、不動産投資家の五十嵐未帆さんが受け付ける新企画がスタートします。

ファイナンシャルプランナーの資格を持ち、細かい収支シミュレーションや財務体質改善などのノウハウに定評がある五十嵐さん。相談者に厳しくも愛のあるアドバイスを送り、物件の問題点や今後のリカバリー策について考えていきます。

もっと拡大したいけど…

第1回目の相談者は、神奈川県の会社員・吉崎誠さん(仮名・39歳)。新築区分マンション2戸と新築・築浅アパート計2棟を購入したものの、「借り入れがいっぱいになってしまって、拡大に向けた打ち手がない」という相談です。

igar

本日はよろしくお願いいたします。今の状況を教えてください。

soud

よろしくお願いします。まず、2016年に新築区分マンションを立て続けに2戸購入しました。生命保険代わりになると思ったのと、節税が目的です。

soud

ただ持ち出しがあったので改善したいなと思って、18年と19年にアパートを2棟購入しました。CFはどうにかプラスになったんですが、借り入れがいっぱいになってしまったので次の拡大に向けて融資が引けず、打ち手がなくて困っている状況です。

救いようがない

igar

物件概要を拝見したところ…申し訳ありませんが、わたし的に言うと「救いようがないダメ物件」です。利回りが相場より低すぎますし、返済比率(=家賃収入/返済額)も高すぎます。属性がもう少し良ければ借り換えの可能性もあったんですが、今の状態では借り換えも難しい。耐えて持ち続けるか、損切りで売却するか、考えていかないといけません。

soud

……。

igar

まずは1棟目のアパートを楽待のCFシミュレーションにかけてみます。

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igar

最初から最後までずっと収支がマイナスで、35年後の累計CFがマイナス3550万円という状況になっています。

soud

……ヤバいですね。

igar

非常にヤバいと思います。なぜこうなってしまったか、1つ1つ考えていきましょう。

soud

はい。

igar

まず、35年・フルローンというのはいい融資条件ではなく、不動産会社と銀行の「罠」でございます。木造の法定耐用年数が22年なのに対して35年は引きすぎですし、見せかけのCFを出すためのマジック。月間家賃収入44万8000円に対して返済額が31万4500円なので、返済比率は70%。これは高すぎです。私は基本的に5割以下に抑えています。

soud

5割以下…。

igar

この物件は利回りが6.15%ですが、不動産投資の勉強はされたんですか? だいたいどれぐらいの利回りを目指すように考えていましたか?

soud

新築だと、やっぱり6%から8%ぐらいかなと。

igar

6%というのは本当に都心の物件だと思います。今回のように市営地下鉄のメイン駅でもない立地で6%というのはかなり低いです。それに駅の周りには何もないし、物件周辺に利便性の高いスーパーやコンビニなどもない。賃貸需要のないエリアなんですよね。…この物件、今後どうしていきたいと考えていますか?

soud

すぐに売るというよりは、どうにか改善したいという気持ちです。借り換えをして金利を下げるのと、管理費を5%から下げてCFを増やすというのが今思いつく対策です。

igar

融資をフルローンで引いていて、物件の評価額より残債の方が高い状況なので、借り換えというのは100%難しいと考えてください。こんな低い利回りで買って、ずっと持ち続けるつもりだったんですか?

soud

あまり売ることは考えていませんでした。

igar

不動産会社のシミュレーションでは入居率が95%固定で試算されていますが、8部屋なので1部屋空いたら87%になっちゃうんですよ。35年間ずっと95%を維持するというのは非現実的すぎるシミュレーションです。

igar

賃料相場をチェックしてみると、現在の賃料設定5万6000円というのは相場とかけ離れていません。ただ、15年以上30年以内の物件を見ると5万円を切っています。そこまで調べましたか?

soud

そこまでは調べてないです。

igar

不動産会社のシミュレーションでは1%ずつ下がる想定ですが、賃料の下落率はエリアごとに違うので、必ず各物件について調べてください。それから、この辺の利回りの相場をチェックすると8.6%なので、6.15%だと高値掴みしていることがどうみても分かると思います。

soud

なるほど…。

金利だけで3200万

igar

では、2棟目のアパートもシミュレーションしてみましょう。

igar

こちらは最初のうちはCFが出るようになっていますが、最終的な累計CFはマイナス1293万円です。この物件は毎月の返済が22万4800円ですよね。6240万円の借り入れに対して9400万円払っている自覚はありますか? 金利だけで3200万円です。そうまでして持ち続けないといけない物件なのか。イールドギャップ(利回り-借入金利)とかチェックしましたか?

soud

そんなに意識していなかったというか…。

igar

やっぱり6%以上は必要だと思うんですね。私の場合は7%台後半で買って1%台前半で融資を引いています。今回の物件は3%台なので、6%の半分しかない。正直、数字の見方が甘すぎました。リスクのところはあまり深く考えていませんでしたか?

soud

持ち続けるリスクですか?

igar

そうです。建物の経年劣化リスク、賃料下落リスク、入居率低下リスク、金利変動リスク…。

soud

金利のリスクのところはあまり意識できていませんでした。

igar

入居率の試算が高いので、80%まで下がった時にどうするか。あとはさっき言ったように家賃の下落率が1%では全く追いつきません。

経費見直しでCF改善を

igar

改善策について考えていきます。一番簡単なのは、清掃をシルバー人材センターなどに委託すること。1000円、2000円でやってもらえれば、月の清掃費5400円が半分以下になります。システム料もずっと払っていると360万になってしまうので、交渉してゼロにしてもらいたいところです。

soud

分かりました。

igar

管理費は遠方の2棟目は交渉して3%ぐらいに下げて、自宅から近い1棟目は自主管理にするとか。消防点検費用も、8戸なら1万円代でやってくれる業者がいます。あとは繰り上げ返済を進めて銀行の印象を良くし、金利引き下げ交渉に臨むことも考えてください。