前回の記事では、スルガ銀行が不正融資のあったシェアハウスについて代物弁済的な対応を取る可能性、そして多額の借金を抱えたオーナーたちの現状について取り上げた。高額な借金の重圧に苦しむオーナーたちは、返済の停止や元本の一部カットなど、さまざまな方法で出血を食い止めようとしている。

一方、物件を手放すのではなく、保有し続けながら自らの努力で満室経営を目指し、リカバリーを図るオーナーもいる。今回は、自主管理や管理会社の変更によって収支の改善に挑むオーナーたちの取り組みを紹介する。

築古戸建を買い増して再起

以前、「かぼちゃの馬車」から再生を目指す男たちという記事で紹介したAさん(30代男性)。2015年夏にかぼちゃの馬車を9800万円、金利3.5%のフルローンで購入した。月の保証賃料が69万、諸経費を差し引いた年間の手残りが220万ほどというシミュレーションだったが、2018年1月にサブリース賃料の支払いが停止。毎月45万円の返済のみがのしかかることになった。

出血に耐えられず返済をストップして弁護団などに救済を求めるオーナーも多い中でAさんは、サブリースを解除して自主管理で満室を目指す道を選んだ。

当初の入居は10室中2室のみで、何もしなければ毎月赤字を垂れ流していくだけという状況だった。「このままであっという間に破綻する」―。女性の入居者に何度も頼み込み、1階のみ男女兼用に変更した。シェアハウスの募集サイトに載せる部屋の写真は、自宅の布団や妻の服などを使った「ゼロ円モデルルーム」で見栄えを改善。「管理会社に勝てるのはスピードだけ」と、仕事終わりの夜中でも内見に対応し、深夜3時のメールも即対応した。

努力を重ねた結果、返済を続けながらなんとか収支をプラスマイナスゼロまで持ち直した。さらにその後、物件を買い増すことでリカバリーする戦略を立て、千葉県の築50年の築古戸建を100万円で購入。土日をすべて潰して50万円でDIYし、高利回りを実現した。

その後、1年ほどで築古戸建を10戸まで買い増して月間CF30万円ほどを確保したAさん。残債は9800万円から9200万円まで減った。

「ズルい」とは思わない

懸命な努力で返済を続けてきたAさんは、スルガ銀行の対応にどのような思いを抱いているのだろうか。

「自分のところには代物弁済的な対応に関する連絡もきていませんし、期待はするけど気にしないでおこう、という感じです。以前は金利交渉もしていましたが、『下げます、下げます』と言いながらまだ下がっていないですし、向こうの対応に一喜一憂せず自分がやるべきことをやるだけです」

スルガ銀行の対応次第では、当初から返済をストップしつつ、物件を手放すことで借金が帳消しになるオーナーが出てくる可能性もある。

「仮にそういったオーナーさんがいたとしても、『ズルい』みたいな感情はないですよ。返済を止めた時点で、ブラックリストなどに載る覚悟をしたということ。それぞれのリスクの取り方の違いであって、私は払い続けたほうがいいと判断したから粛々と返済を続けていただけです」

入居は14室中2室

「投資としては失敗」と後悔しつつも、スルガ銀行との交渉と並行しながら、自主管理でCFの改善に取り組んできたオーナーもいる。

神奈川県の会社員Bさん(50代男性)は2014年、以前に区分マンションを購入した不動産会社から紹介を受け、かぼちゃの馬車と同タイプの狭小シェアハウスを新築した。都内の好立地で価格は1億3000万円、利回りは8%。スルガ銀行から金利4.5%・30年で融資を受けた。全14室でサブリースの保証賃料は91万、返済と管理費などを引いた月の手残りが20万ほどという説明だった。

「当時は会社に女性の姿も多くて、活発で先進的な印象を受けたんですよね。サブリースのリスクも話には聞いていたので、もう少し冷静に考えればよかったなと、今振り返れば思うんですが」

2年半ほどは予定通りの収支で回っていたが、2017年末、かぼちゃの馬車と同時期に「サブリース賃料の支払い停止」という通知が届いた。このままでは毎月、55万の返済だけがのしかかる。翌年2月末から自主管理に切り替えることにしたが、その時に初めて入居状況を知って愕然とした。14室中2室しか埋まっていなかったのだ。

「まず、自主管理で成功している大家さんとTwitter経由で連絡を取って、運営についてレクチャーを受けました。自分でも最寄り駅のシェアハウスの平均家賃などを調べて、これならいけるかもしれないと思い、必ず満室にすると決意しました」

まず取り組んだのは建物内部の改善。「各部屋には小さなスペースに不釣り合いな大型ベッドがあって圧迫感が強かったので、ネットで買った1万円ほどの小さなベッドに交換。共用部も備品が散らばっていたり放置自転車があったりしていたので整理し、生活するためのルールを作りました。募集はシェアハウス専用の募集サイトなどをいくつか試して、効果の高い方法を模索していきました」

居室のビフォーアフター

スルガ銀行に対しては、2018年1月に半年間の元本支払い停止を申し入れて了承を得た。金利のみ毎月20万円の支払いをしながら入居付けに全力を注ぎ、募集開始から2カ月で満室を実現した。

「本業を続けながら満室を目指すのはかなり大変でしたが、とにかくCFがマイナスになってしまうという恐怖心で、なんとかして埋めなければと必死でした」

8月から元本の支払いを再開し、併せて金利交渉をスタート。4.5%から段階的に3.5%、2.1%、1.5%と引き下げ、今年初めに1.0%まで下げることに成功した。

「金利交渉を成功させるにはアプローチを工夫する必要があります。返済はしっかりしていくという協力姿勢を示しつつ、現在の稼働状況を正確に説明し、修繕や家賃下落リスクを見込んで試算した希望の金利を打診してきました。今まで希望が通らなかったことは一度もありません」

打てる手はすべて打つ

金利を1.0%まで引き下げ、満室経営を実現したが、今年に入ってさらなる収支改善に取り組んだ。それが「テールヘビー」だ。

テールヘビーとは、返済の最終月に支払う金額を増やすことで返済期間中の負担を抑える方法。「今後、実家のある地方に戻る可能性があるんですが、そうなると自主管理を続けるのが難しい。シェアハウスの管理費は15~20%と高いケースが多いので、管理委託でもプラスで回すにはCFを増やす必要があったんです」

今年9月にスルガ銀行と交渉し、残債1億1000万円のうち3000万円の返済を30年目の最終月に回すよう計画を変更。当初55万円だった返済額は、金利引き下げとテールヘビーで30万円まで抑えることができ、月27万円のCFが生まれている。

「投資として考えれば、大きなリスクを背負ったという意味で失敗だと思います。ただ自己責任なので、つべこべ言わずにできることをやろうとしてきた結果が今です。CFがマイナスならさっさと清算したい気持ちがありますが、これから持ち続けるのも選択肢の1つだと思っています」