ボロ物件、古い建物、築古アパート

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以前、「不動産仲介業者の思惑を知り、一歩先行く大家に」という記事で、不動産仲介業者が普段行っている業務を紹介した。前回紹介したのは「一般的」な仲介業者の一連の業務で、朝一の新規物件情報の確認から始まり、顧客への追客電話、物件調査、契約書の作成などだった。

今回は続編として、それら以外の業務について元不動産仲介業者の筆者が紹介していきたい。主に初心者の不動産投資家の方々が、少しでも仲介業者の仕事を理解することにつながればと考えている。

収益物件の売買仲介・転売

不動産仲介業者の業務といえば、一般的な実需向け住宅の売買仲介のイメージが強いかもしれないが、もちろんそれだけではない。一棟マンションやアパートなどの収益物件をメインで取り扱っているところもある。

こうした不動産業者の場合、たいてい元付け業者(売主から売却物件を預かっている不動産会社)から「この物件を買ってくれる人はいませんか?」といった話がくることが多い。買主を探すために、まず過去に取引実績がある不動産会社へ売却案件の話を持っていく。

元付け業者から振られる売却物件というのは、まだ一般の不動産市場に情報が出回っていない状態なので、不動産業者同士で内々に取引が完了することも多い。購入したマンション用地の上に一棟収益物件を新築して販売する建築会社や、中古アパートをリノベーションして賃貸運用している不動産会社などが買主候補となる。

つまり、一般の投資家へ物件情報が流れる前に、業者同士で売買が決まってしまうということ。

こうした業者同士による情報のやりとりの中で一般の投資家が有益な新規物件情報を得るためには、収益物件をメインに仲介している不動産業者を通じて取引実績を築いておくことや、具体的な購入相談を済ませておくことが大切になる。

残るべくして残った物件

例えば、5000万円の中古一棟マンションを元付け業者が売却物件として売主から預かった場合。元付け業者は、すぐに普段から付き合いがある不動産業者へ電話やメールなどで情報を流す。「○○町のマンションを5000万円で預かりました。また○○さんのお客様へご紹介していただけたら幸いです」というようなもの。

こうしたケースの場合、利回りやその他の条件が良い物件は、不動産ポータルサイトはもちろんレインズにすら掲載されないまま成約になってしまうことがあり、一般投資家まで情報が出回らない。逆に考えると、すでに情報が出回っている物件は「残るべくして残った物件」である可能性が高い、ということになる。

「残りやすい物件」としては、主に以下のようなポイントが挙げられる。

(1)利回りが低い
(2)エリア内での賃貸需要が低い
(3)築古物件で建物の修繕費用が多くかかる
(4)地形(じがた)が悪い

特に(4)の地形の良し悪しについては、将来的に物件の建替えをする場合や、更地にして土地を売却する場合などのリスクが懸念される。例えば一棟アパートを建替える際に敷地の地形が悪いと、買主が希望する貸室数や駐車場の確保が困難になる場合がある。

さらに、地形が悪いうえにセットバックまで必要なケースであれば、もともとあった建物と同じ規模での建替えができなくなるリスクもはらんでいる。投資の出口を考えたときに、物件が売りにくくなる要素はできるだけ避けておきたい。

これから不動産投資を始める場合は、そのことを念頭に置いたうえで物件選びをしていかなければならない。もし可能であれば、「売却に出た時期」や「まだ売れていない理由」などを仲介業者に訊いておくとよい。

売却に出てから半年以上経っている物件や、売れていない理由が上で挙げたポイントに当てはまる場合は注意が必要だ。逆に、売却開始からまだ半年以内のタイミングであったり、売れていない理由が「売り出したばかりで売却価格の設定値が高く、そのせいで利回りが低くなっている」といった内容であったりすれば、指値で価格交渉をするなどの余地があるといえる。

業者転売の見分け方

不動産業者は売買仲介の業務だけでなく、自ら収益物件を購入してリノベーションした後に利益を上乗せして転売することもある。転売物件をまた別の不動産業者が買う場合もあるが、そのまま一般の不動産市場へ出回るケースも少なくない。

業者による転売物件かどうかを見分けるには、まず対象物件の謄本(登記事項証明書)を見ること。謄本の権利部(甲区)には名義人と所有権移転の時期が記載されているため、直近で物件の所有者が業者名義に変わっていれば転売物件の可能性が高い、と判断する。

よくある事例としては、一般個人が所有している収益物件や土地を業者が購入し、売買契約を締結した後すぐに転売先を探すため他の業者仲間に情報を流す、といったケース。この時点ではまだ物件の引渡しが完了していないので所有権移転の登記を行っておらず、謄本を見ても名義が前の所有者(一般個人)のままになっていることがある。この場合は現在の売主と謄本上の名義人が異なっているため、仲介業者に訊けば「転売です」と教えてもらえることが多い。

念のため書いておくが、ここでは転売の善悪を詰めているわけではない。個人が収益物件の処分に困って業者に相談し、そのまま業者が買い取ることもよくあるからだ。業者が買い取らなければその物件は不動産市場に流通するのがもっと遅くなっていた可能性もあり、年月が経てば建物の老朽化により資産価値が下がっていってしまう、ということもある。

注意点としては、転売物件は必然的に業者の利益が売却価格に上乗せされているため、購入した場合の収支をしっかりとシミュレーションしておきたい。

基本的な判断は表面利回りから入る

収益物件を扱う不動産業者は、まず表面利回りを見てから顧客に物件を提案するかどうかを判断する。なぜなら、表面利回りが高くなければ実質的に得られる利益が少ないためあまり旨みがなく、提案する意味がなくなってしまうからだ。

普段から収益物件を売買している不動産業者は、「一定以上の利益が取れないなら手を出したくない」というところが多く、表面利回りとレントロールを見ただけで「手を出す物件」かどうかの判断をしている。

そのうえで、土俵に乗る条件の物件なのであれば、実質的な収支を確認する段階へと進む。現地まで見に行くのはその後になる。実質的な収支の確認は年間賃料と年間支出を計算して実質利回りや年間損益の確認をすることを指し、個人投資家が行う一般的な確認方法と同じであることが多い。

地域や条件によって異なるが、中古の収益物件であれば、表面利回り12%以上ぐらいを目安に検討段階へ進むケースが多い。