経験豊富な不動産投資家が、物件見学の際にどこをどのように見ているかを「モニタリング」する本企画。

今回、物件見学の様子を見せてもらうのは、渡邊浩滋さんだ。大家さん専門の税理士・司法書士として活躍するだけでなく、自らも物件を所有する不動産投資家でもある。総投資額は1億6000万円、年間家賃収入は1300万円。渡邊さんは普段、物件見学をする際に不動産鑑定士の皆川聡さんに同行してもらうという。

今回、渡邊さんと皆川さんが見に行く物件は、東京都内にある駅徒歩12分の一棟アパート。

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築35年ということで外観や室内の劣化状態が気になるところだが、渡邊さんたちはどのようにチェックするのだろうか。その様子を見ていこう。

 

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物件資料チェック

 

○税理士・渡邊さんの場合

渡邊さんが物件資料でまず確認したのは、駅から物件までの距離だ。実際に駅から物件まで歩いていき、物件資料に記載されている時間と相違がないかを確認するという。また、平坦な道が続くのか、それとも坂が多い道なのかについても確認するそうだ。

続いて、確認したのは物件価格の項目だ。事前に路線価を調べ、物件価格が路線価に見合っているかどうかについても見るという。

渡邊さんが特に注目しているというのは「構造」と「築年数」の項目だ。軽量鉄骨造の場合、法定耐用年数が鉄骨の厚さによって決まる。仮に法定耐用年数が27年だったとしても、この物件は1984年築で法定耐用年数超になるため、融資を受けられる金融機関が限られてくる。金利の高い金融機関で融資を受けることになったとしても、十分な収支が得られるかどうかについて事前に確認しておいた方が良いという。

○不動産鑑定士・皆川さんの場合

皆川さんがまず最初に確認したのは、物件の写真だ。隣の土地が「セットバック」しているため、この物件もセットバックする必要があるかもしれないという。もし、セットバックをすることになった場合、建ぺい率オーバー、容積率オーバーになる可能性が高いため、事前に確認しておいたほうが良いという。

次に皆川さんが確認したのは、「築年数」の項目だ。1984年6月築ということで、大規模修繕をどの程度行っているかを事前に調査しておきたいという。

外観チェック

築35年ということで、外壁には少しチョーキングが見られたが「この程度であれば問題ない」と不動産鑑定士の皆川さんは語る。また、外壁にはクラックがあった。大きなクラックの場合、雨水が内部に入り、躯体の劣化を促進してしまうそうだ。樹脂などでクラックを埋めて止水をしておいた方が良いという。

外壁のクラック

また、配電コードが劣化していた。こうしたコード類が劣化すると、漏電のリスクが高まるため、物件購入前に売主に修理を依頼しておきたいところだ。

劣化した配電設備

こちらの物件は、外に洗濯機置き場が設置されていた。築年数が古い物件では、外に洗濯機置き場を設けていることはよくある。しかし、入居付けの際には苦労するポイントになりそうだ。

続いて確認したのは、共用部の天井に露出した排水管だ。灰色の排水管が常に見えている状態のため見栄えはあまりよくない。しかし、「何かトラブルが発生した場合はすぐに対応ができる」というメリットがあると、不動産鑑定士の皆川さんは言う。また、排水管の場合は、道路に向かって勾配が取られているかも確認したほうが良いそうだ。

屋根についても慎重に確認する。不動産鑑定士の皆川さんは、自撮り棒にスマートフォンを取り付けたものを屋根まで上げ、ビデオ撮影をして状態を確認するという。特に注意してみるというのは、屋根の「防水」機能が保たれているかどうかだ。塗膜が剥がれている部分がないか、汚れている部分がないかについて注意して見ていくという。

外観で最後に確認したのは、共用部の階段だ。塗膜が剥がれている箇所が見られた。不動産鑑定士の皆川さんによると、すぐに修繕の必要はないが、サビが出始めたら塗装する必要があるという。階段は、上下階を行き来する際に必ず通る必要があるため、取り換えることは難しい。そのため、少しのサビでも油断せずに塗装しておく必要がありそうだ。

室内チェック

室内で最初に確認したのは、キッチンだ。戸棚の中を確認して、シミや汚れがないか慎重に見ていく。築35年ということもあり、ある程度のシミや汚れは許容する必要がありそうだ。また、キッチン上の蛍光灯が黒くなっていた。新しい入居者が入居してすぐに蛍光灯を交換するとなると、あまり印象がよくないので、事前に確認して取り換えておきたい。

キッチンでは、下戸棚の中も確認したところ、排管部分に少し隙間が空いていた。夏場には、ここから虫が発生したり、臭いの原因にもなったりするということで、隙間を埋めておくことが必要だという。

キッチン下の様子

次に建物の傾きを確認する。不動産鑑定士の皆川さんによると、水平器は床の1カ所だけでなく異なる場所において水平の確認をしたほうが良いという。また、建物の垂直についても水平器を壁に当てて計測していく。建物が極端に傾いていると、入居者の健康を害する恐れがあるため、念入りにチェックしておきたい。

今回の物件は6畳の和室だったが、渡邊さんは「予算がない場合は洋室に無理に変更しなくてもよい」という。6畳で手狭な部屋のため、洋室でベッドを置くと圧迫感がある。今回の物件のように畳の場合は、押入れやクローゼットに布団を収納することができるため、部屋が広く利用できる。入居付けの際は、こうしたメリットも打ち出してアピールしておきたいところだ。

6畳の和室

バルコニーを確認したところ、塗膜が剥がれてサビが入っている箇所を発見した。サビが進行すると修繕の際にサビを研磨するコストがかかってしまうため、酷くなる前に塗装しておきたい。

室内で最後に確認したのは、浴室だ。点検口を開けて中の状態を確認したところ、断熱材が劣化して破れていた。不動産鑑定士の皆川さんによると、ネズミなどが原因で破られている可能性が高いという。まずは、点検口内の掃除をしてネズミなどの侵入場所を見つけて塞ぐ必要があるそうだ。

「物件調査に慣れていない方は、ぜひプロと物件見学をしてほしい」と語る渡邊さん。また、不動産鑑定士の皆川さんは、「机上の利回りだけではなく、実際に物件に来て調査してほしい」という。物件のどこがどのくらい汚れていて、そこを修繕するコストはいくらぐらいかかるのかということを見込んで、購入する物件を見極めてほしいという。

物件を購入する前の丁寧な調査は、不動産投資で失敗するリスクを大幅に軽減することができる。物件調査の際は、プロに同行してもらうことも検討してみてほしい。

※本物件情報は一部編集しています。
※物件所有者に許可を得て撮影しています。

 

(楽待新聞編集部)