「不動産投資で失敗してしまった」と感じている相談者に、不動産投資家でファイナンシャルプランナーの五十嵐未帆さんが厳しくも愛のあるアドバイスを送るこの企画。前回は新築4物件を返済比率70%で購入した39歳男性からの相談で、五十嵐さんは「救いようがないダメ物件」と一蹴しつつ、経費の見直しや繰り上げ返済、金利交渉などの打開策について丁寧なアドバイスを送りました。

第2回の相談者は、東京都の公務員・谷上紀代さん(仮名・43歳)。知り合いから紹介された不動産会社に1700万円の新築区分マンションを提案され、「なんておいしい話なんだ」と夫婦で1室ずつ購入したものの、後になって「業者に騙されてしまったのではないかと不安になった」という相談です。

アロマの先生から…

igar

今日はよろしくお願いします。さっそく、今の状況を教えていただけますか?

soud

はい。私、知り合いの先生のもとでアロマセラピーを勉強していたんですが、その先生から2018年の1月ぐらいに「お金の勉強会をするからいらしてください」ってお声がけがあったんです。私も結婚して数年が経ち、何かしら資産運用をしたいということで参加してみたら、お金の勉強会と思いきや、A社という不動産会社さんの担当がいらしていて…。

igar

なるほど。

soud

結果的には、「老後の資産運用に備えて」というマンションの売り込みだったんです。大阪市西区の新築区分マンションで、価格は1700万円でした。

soud

自分のお金を使わず融資で購入できて、しかもサラリーマンをしながら管理は管理会社にお任せきりというような話で…。今は冷静になって話せるんですが、その時は「こんなおいしい話があるのか」「もうこれは買うしかない」ということで、夫と私、1室ずつ買ってしまいました。

igar

そうなんですね。

soud

担当の方はパンフレットを見せながら説明してくれて、「大阪はポテンシャルが高い」「IRや万博で地価が上がる」と。「将来的に2000万、3000万円で売ることができる」という話だったんです。で、私も「今だったらいくらぐらいで売れるのかな」と思って査定に出したところ、「1200万」って…。

持っていても意味がない

igar

典型的な新築マンション投資に引っかかるタイプ…というか、引っかかってしまった事案ですね。買ってすぐなのにもう1700万から1200万に下がって500万も損しているということを考えると、あまり持っていても意味ないんじゃないかなと思います。高い勉強料だと思って損切りするか、持ち続けるかという判断が必要になると思います。

soud

……はい。 

igar

とりあえず、今後どうなるかシミュレーションしてみましょうか。

soud

お願いします。なんだかドキドキします。すごい数字が出てきちゃったら…。

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igar

こういう感じで、今はうっすら~とキャッシュフローが出ているんですけど、どんどん家賃が下がっていって、大規模修繕費用もかかってくるとなると、その後はどんどん累積のCFがマイナスになる。35年後には255万円のマイナスという試算になっています。

soud

うーん…。

igar

家賃が何年後にいくらぐらいになるか、ご覧になられましたか? 

soud

そこまで調べきっていません。

igar

現在の家賃は7万1000円ですが、物件の周辺相場を調べるサイトで築15年以上30年以内の物件を見てみると、共益費込みで5万円ぐらいになっています。

soud

ああー。そこまで下がるんですね。 

問題点の数々

igar

1.5%という金利は低くていいと思うんですが、35年という長い融資期間はCFが出るようにみせかけるための単なるマジックです。最終的に350万円もの利息を支払うことになりますが、期間が短ければその分少なくなります。また、区分は金融機関が資産性を評価せず、借金としてしかみられないという側面もあります。 

soud

他の方にもこの件で相談した時に、「新築は掴むともう次の日ぐらいには軽く頭金分ぐらいは価格が下がるものだよ」って言われたんです。なんで下がっちゃうんですか?

igar

「新築」といっても買った瞬間に「中古」になりますし、そもそも物件価格に業者さんの利益が乗せられています。交通の便が良くて生活も便利で本当に街が発展していくようなエリアであれば価格が上がっていきますが、今回のエリアがそういうところだったのかどうか。今後の開発計画などを調べましたか? 

soud

見ていないです。そこまで見て買わないといけないんですね。

igar

土地勘のないエリアの物件というのはとても危険です。IRや万博で物件価格や家賃が上がるかは未知数ですし、逆に治安の悪化などを招くこともある。そういう一時的なことより、住む人にとって本当に住みやすい街なのか、便利な施設があるか、といったことの方が長い入居や高い家賃を保つことにつながる。今回は旨い話に惑わされてしまった部分があります。 

soud

ほんと、バカでした。

調べていれば…

igar

ちなみに、購入にあたってA社の名前を調べてみましたか?

soud

一応調べたんですが、担当の方の話がうまかったのと、私もアロマの先生のことを信用しきっていたので…。

igar

私、ちょっとネットで調べてみたんですよね。

soud

何か嫌なことが書いてあるのかなぁ…。

igar

ネットで会社名を検索すると、検索候補に「被害者の会」とか「苦情」とか「詐欺」といったワードが出てきてしまうんです。で、私が調べていてこの記事を見つけたんですけど、この会社経由で5物件買ってしまった方が死にたくなることもありました」と言っている。この記事は2011年のもの。つまり、ずっと前からこういうことしている業者なんですよ。

soud

うわぁー。私、アホだったんだ…。本当に無知だったんですね。

igar

借金をして不動産を買うということに対して、あまりにも無防備だったかなと思います。本当にその先生を信頼されていたと思うんですが、その先生もそうやって生徒さんを集めているということはキックバックが入っていると思うんです。結局、相手のことは考えず自分の利益のためだけに、どんなものか分からない物件を売りつけることに協力している。

soud

その通りです。その先生とはもう離れました。 

igar

一時期は金融機関もグルになって、自分のノルマを達成させるために新築分譲マンションを高値で売りつけるという手口が横行していたんです。今でもそれに引っかかる人はいるんですけど。

soud

私も、いいカモだと思われたんですね。

igar

今回は会社名を調べておくだけで防げましたね。

soud

私も少し調べたんですけど、結局そういった自分に都合の悪いことは全部、「こんなのウソだ」って脳が否定していたと思います。あと、担当の方から「今日中に契約しないともうなくなってしまいます」とか煽られると、「買わないと損しちゃう」という感じになっちゃうんですよね。

igar

悪徳商法の手口ですよね。「残りわずか」「期間限定」といった言葉に日本人はだまされやすいんですけど、旨い話には必ず裏があると思う気持ちが大切です。