大家歴はすでに17年。日米に現在3棟と戸建て6つ(自宅含む)を所有する不動産投資家・石原博光さんが、その投資ノウハウや経験を伝授する本連載。
前回、石原さんに対して「聞きたいこと」を募集したところ、多数の質問や疑問が寄せられました。そこで今回はその中から、5つに答えていただいています。
初めての物件購入、気を付けるべきなのは
こんにちは、石原博光です。今回はいつもコラムを読んでくださっている方々から質問をいただきましたので、それぞれに回答していきたいと思います。
最初は、これから物件を購入したいと考えている方の質問です。
1棟目に買う中古アパートの見極め方を教えていただきたいです。
(宮城県/太郎さん/29歳)
まずは、物理的に修繕が困難な瑕疵を、極力見極めて避けることが重要だと思います。例えば地盤が緩く、不同沈下が起きている(傾いている)物件や、崖の真下にあり、さらには、覆われた茂みで一切太陽の光があたらずうっそうとし、カビだらけだった物件は、僕も「これはちょっと…」と避けてきました。
このように、「買っていい」物件ではなく、「買ってはいけない」物件の見極めをすることは大切です。ほかにも、古い大きな擁壁は崩れる可能性もあるので注意したいところですし、ハザードマップで危険だと言われている低地にある物件も気を付けたいですね。地盤関係で言えば、道路を歩いていると、ブロック塀や電柱が一様に傾いているエリアもあるんです。そこは確実に地盤の緩いエリアでしょうから、気を付けるべきです。
僕は、中古物件を多数購入してきました。想定利回りが高い物件なら、修繕費用を支出したところで、なお収益性が良いと考えているからです。「ボロさ」が安い理由だとしたら、ボロい物件を避ける理由にはなりません。中途半端に壊れているより、いっそスケルトンリフォームをするくらいの方が、間取りも設備も思い切り改善できます。
僕が所有する栃木県小山市の物件では、床も天井も設備も、お風呂のユニット以外はすべて取り替えた部屋がいくつもあります。かかった費用は1室(55平米)200~250万円。家賃は7~8万円に設定できるので、修繕費用だけで言えば2~3年で回収ができてしまう。その後も10~15年程度は商品力が高い状態で貸し出せます。
それから、物件検討と並行して管理会社の候補先にも複数あたってほしいと思います。
情報収集では、インターネットを駆使することも重要ですが、やはり直接話を聞くことが一番。そのエリアの賃貸市況が見えてくるし、需要のある間取りや、空室が埋まらない理由もわかってきます。検討しているエリアの住人の方への聞き込み調査や、競合物件の調査も良いと思います。
自己資金が少ないが、1棟アパートを買いたい
まだ物件を持っていませんが、石原さんの本を読み、1棟アパートを買いたいと思っています。利回りの良い、地方にある3000万円ほどのアパートを考えています。ですが、融資が引き締められる中、自己資金が少なく買うことができません。現状、現金は400万で、3年以内に目標を達成したいです。石原さんならどのような戦略が思いつくでしょうか。(神奈川県/カズさん/40歳)
最初は小さく始めて、実績と経験を積みながら大きくしていく戦略もいいのではないでしょうか。つまり、最初は戸建てや、600~800万円程度の小さなアパートを購入するという作戦です。そこを満室に導き、経営努力で人気の物件に仕上げて金融機関に報告することができれば、2棟目、3棟目ではどんどん融資のハードルが下がっていくと思います。
そうして3年目に3棟目を購入して、目標の数値を達成する。3000万円のアパート1棟ではありませんが、ステップアップするやり方は、決してナシではないと思います。
僕は著書の中では「(購入物件では)広さをとれ」と述べていますが、3点ユニットのような単身者向けの部屋でも、魅力をつける方法はいくらでもあります。防水コンセントにして温水洗浄便座をつけるとか、水栓金具を少し豪華な物にするとか、空間収納を増やすとか。
ガス会社に協力を依頼して、ガスコンロや給湯器をはじめ、設備(シングル混合水栓レバー、エアコン、浴室乾燥機や追い炊き機能なども可能性はあります)を貸与してもらうこともできます。
実績を積めば、身内から資金を借りることや、あるいは両親に保証人になってもらえる可能性も高まるでしょう。友人や家族がリフォームを手伝ってくれる機会だってあると思います。手を差し伸べてもらえるチャンスが広がりますから、1つ目の実績はやはり大事です。
ちなみに、融資はノンバンクを利用することもできます。その場合は、後々借り換えも検討していきましょう。僕もノンバンクを利用したことはあります。
戸建ての修繕、どこまでやるべき?
ボロ戸建てを買いましたが、どこまで修繕すればよいのか分かりません。
(三重県/FMさん/44歳)
詳細な状況がわからないのですが、どこまでやるのか、やらないのかというのは、エリアにおける間取りのニーズや競合の水準、そして自身がどのようにしたいという考え方にもよるので、一概には言えません。
例えば、全く修繕をせずに安い家賃で賃貸に出し、入居者自身に自由にDIYや修繕をしてもらうという貸し方もあります。芸術系の学生たちが自由に改修したり、職人が自分で直したりといったことは珍しくはありません。
僕の物件でも、元店舗で今は住居という部屋があります。ユニットバス一式をガス会社に貸与してもらい、寝室も造作しましたが、それ以外はカウンターや土間、小上がりも残して小料理屋の雰囲気満点です。空室になってもすぐ埋まってしまうため、提供している僕自身がびっくりしています(笑)。安い家賃に設定していることと、それからちょっと物珍しい感じもウケているのかもしれません。
また、大家自身が「古民家風にしたいから、今風にフルリノベはしない」とか「思い切り費用をかけて、デザイナーズ物件のようにして、そのコンセプトに共感してくれる人に少し高めの家賃でも入ってもらいたい」という考えを持っているなら、それに従って修繕をするのも1つの方法です。
あるいは、この物件は戸建てということですから、費用をかけすぎずに一般的なアパートと同程度の修繕(原状回復)にとどめ、「戸建てならでは」のメリットを打ち出して入居者をつけるといった戦略も可能だと思います。戸建てであれば隣家と壁を共有していないので独立性が担保されていますし、複数のペットにも対応できます。敷地内に車両や物を置くスペースも豊富ですよね。
ネットで調べれば、そのエリアの戸建て賃貸物件を調査できますから、参考にしてみてください。どれくらい手をかけて、どの程度の家賃に設定できるのか、という上限・下限がわかると思います。
企業の社宅として貸し出せるエリアもありますし、近隣にある企業の担当部署に掛け合ってみるのも手です。もしツテがあれば、そのエリアで戸建てを持っている大家さんに直接話を聞けるとより良いですね。
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