日本、別荘地、リゾートマンション、億ション

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1980年代後半のバブル期に建設され、1戸あたり数千万、1億といった価格で取引された高級リゾートマンション。そんなリゾートマンションが今や、「タダ同然」ともいえる価格で売り出されているのをご存じだろうか。

「こんなに安いのなら」と購入を考える人もいるかもしれないが、競売に詳しい不動産ライター「競売情報探偵」さんは「自ら地雷を踏みに行くに等しい行為」と警鐘を鳴らす。

果たして、このようなリゾートマンションを購入した場合、どのような未来が待ち受けているのだろうか。ニポポさんに解説してもらった。

かつては憧れの存在だった

「10万円」―。

これはラグジュアリーな高級ホテルの宿泊料でもなければ、都内ワンルームの賃料でもない。中古リゾートマンションの「売価」だ。

1960年~70年代の高度経済成長期に別荘ブームが起こり、1980年代後半のバブル期にはさらなる大規模開発が行われることとなったリゾート地。1戸1億円にも届く高級リゾートマンションが林立し、「一等地」とされる避暑地では坪単価300万円での取引が行われるほどにブームは加熱した。

約30年間続いた別荘ブームも、バブル崩壊とともに急速な冷え込みを迎えることになる。値崩れを起こしたリゾート地から人が離れ、世間の記憶からも徐々に消えていくと、今ではすっかり見向きもされない存在となってしまった。

バブル崩壊から四半世紀が過ぎた現在、リゾート地の別荘やマンションが抱える問題といえば「老朽化」だ。

ただでさえ買い手に乏しいという状況の中、老朽化による傷みを抱えたリゾートマンションがズルズルと値段を下げ、今では10万円ほどで売り出されているリゾートマンションも多い。全国の避暑地、スキーリゾート、ゴルフリゾート、シーリゾートと、さまざまな形態の別荘地でも同様の現象が起こっている。

価格故に興味を持つ不動産投資家も少なくないようで、相談や意見を求められることもポツリポツリと増えてきた。そこで今回は、こういったリゾートマンションについて取り上げてみようと思う。

見落とせない管理費・修繕積立金の高さ

「リゾートマンションがタダ同然で売られている」

このような情報が出回るようになったのは、今からおよそ10年も前の話。当時はインターネット上でも大きな話題となり、さまざまな議論が行われていた。

「購入すべきではない」「10万円で売られているからには10万円程度の価値しかない」との意見が大多数となっていたのだが、「これであれば自分にも買える」と「家が購入できる価格」としての割安感を見出す者も少なくなかったようだ。実際に、これらのニュースが報じられてからほどなくして、当該の物件は新しいオーナーを迎えることになった。

購入者の多くは土地勘もない移住者で、人口減に喘ぐ自治体側は当初この動きを歓迎する兆しであった。しかし、スキーリゾートマンションなど「就職難や低賃金に苦しむ地域」への移住という収入面の諸問題を甘く見積もった移住者の多くには、数年のうちに管理費や修繕積立金が重くのしかかることになった。

リゾートマンションは通常のマンションと比べて、管理費・修繕積立金が非常に高くなる。プールや遊技場、娯楽施設など付帯設備の管理が必要で、場所柄、雪下ろしや草木の侵食対策などメンテナンス費用がかさむケースも多いからだ。これらの支払いを滞らせるようになった移住者の中には、生活保護を受給することになった者も多いと不動産関係者から聞いたことがある。

資金不足に陥ったら

「老朽化問題」の観点から考えてみるとどうだろう。

バブル崩壊後、ピーク時の半額で売り出しが行われている時期でさえ、修繕やリフォームが「購入額の2倍かかる」と言われていたリゾートマンション。現在も、購入額を大幅に上回る出費を求められることになることも少なくないだろう。

リゾート地や別荘地には、そもそも生活圏とされていなかった土地が切り開かれたケースも多いため、周辺環境が湿気、寒暖差、雪害、風害、海風の影響で過酷な条件となっている事例も多々ある。一般的に考えられる躯体の耐久年数では追いつかない修繕が必要となる場合も少なくない。

実際、先に紹介した事例で格安リゾートマンションに移住した者からは、数年のうちに「水道も満足に使えなくなった」という声を聞いたことがある。このような場合、修繕積立金がある程度貯まっていれば修繕に費用を回すことも可能となるのだが、長らく複数の所有者が不明のまま放置されていた物件であれば、少し厳しい局面となってくる。

修繕積立金不足に陥った集合住宅の取る手段として最もポピュラーなのは、管理組合が住宅金融支援機構などから借り入れて修繕に挑むというもの。しかし、収入源が乏しく回収プランが立てにくいことや担保価値が低いことなどを考えると、理想通りにいくとは考えにくい。

そうなると「臨時徴収」として各世帯からの徴収金が集められることになるのだが、1世帯あたり100万円を大きく超えてくる可能性もあり、全世帯が同意して支払いに応じるというシナリオは夢物語にも等しいものとなる。

かつての「億ション」も今や落ち葉だらけ

過去にはこのような事例もあった。

首都圏に近く、利便性の高い立地に大規模開発されたリゾート地。バブル期を前に山をひとつ切り開くほどの大規模な開発がなされ、不夜城のごとく周辺建設が続けられる。そして、バブル期のピークに持ち上がったのが、高級リゾートマンション計画。いわゆる「億ション」という1戸1億円超えの価格帯だ。

経済の雲行きが怪しくなってくると、完成にはほど遠い状況ながらも売り出しが開始され、案の定建設途中でバブルが崩壊。結局、1億円の価格帯で購入したのはわずか数世帯のみで、残りは買い手がつかぬまま、瞬く間に半値近くまで価格を下げることになった。例えば、50~70戸あっても4~5戸しか売れていないというような状況だ。

数年のうちに価格は下げ止まらないどころか、建設会社の倒産、購入者の破綻といった事例も相次ぎ、いつしか価格は売り出し時の10分の1以下にまで下落。その間にもオーナーは目まぐるしく入れ替わっては不明となり、今ではオーナー不在の室内に落ち葉が溜まるという廃墟同然の姿となってしまった。

バブル崩壊前に売り抜けようと、急がれた突貫工事の痕跡は建物の各所に。備え付けが売りだった高級家具は軒並み壁から剥がれ、それどころか壁自体に貼り付けられた吸音材が崩れ落ちるという、築年数以上の劣化を感じさせる荒れ方が目立っていた。

原野商法の果ての「負の遺産」

また、リゾート地や別荘地取引のイメージを悪くさせているものの一つとして、「原野商法」という詐欺まがいの取引がある。

優良な別荘地と称して二束三文の荒れ地を売りつけるという手法で、1960年~80年代に横行していたものだ。では、これらが「過去の話」なのかといえばそうとも言いきれず、今も苦しめられている地権者は少なくない。

詐欺まがいの商法とはいえ、管理会社と結ばれた管理費の契約は有効なものとされ、地権者に対して支払い義務が延々と続く。そのため、固定資産税の他に高額な管理費が今も取られ続けているという事例も少なくないのだ。

これらは契約を結んだ地権者のみに有効な契約というわけではなく、相続してしまった者にも、「そこまで大変なものではないだろう」と購入してしまった者にも、容赦なく支払いの義務が引き継がれるという「負の遺産」と化している。

もちろん相続者がこれを不服として訴訟に発展するケースも増えてきてはいるのだが、「荒れ放題で管理しておらず、支払い義務はない」という地権者側の主張もごもっとも。しかし、管理会社側が「火災などの重大事故は防がれている。管理されている」と主張してしまえば、どうも地権者側の旗色が悪い落としどころとなる印象だ。