前回のコラムに引き続き、日米で不動産投資を行う石原博光さんに、読者の皆様から寄せられた質問や疑問に回答していただきました。

リアルターや輸入卸売販売業の社長という一面もある石原さん。なぜ米国でリアルターの資格を取得したのでしょうか? 不動産投資を始めた頃の思いとは?

リアルター資格取得は、「投資極めたい」から

こんにちは、石原博光です。前回に引き続き、読者の皆様にいただいた質問や疑問にお答えしていきます。

石原さんは米国ではリアルター業(米国の不動産仲介業)も行っていますが、大家業のみでの生活を選択しなかった理由はありますか?
(東京都/すけさんさん/44歳)

僕には、「異国で不動産投資を極めたい」という思いがありました。そこで、法律も含めて不動産の実情を学ぶためには、リアルターの勉強をするのが一番の近道だと思ったんです。2014年に渡米してから数年間は、物件の購入やリフォーム、引っ越し、とバタバタしていましたが、ようやく落ち着いてきた2017年の夏に本格的にリアルターの勉強を始めました。忘れもしません、独立記念日(7月4日)の翌日のことです。

きっかけは、7月4日に友人と一緒に物件見学に訪れたことです。そこにいた女性のリアルターといろいろおしゃべりをしている中で、「暇な時間があるなら、リアルターの資格をとりなさいよ。不動産を知るのに一番いい方法よ」と言われたんです。それを聞いて、「それはいいな」と思いました。

いいな、と思ったらすぐ行動するのが僕のポリシーです。それで、次の日から1日8時間の勉強を始めました。

リアルターの試験に必要な3科目の教科書は、A4サイズをやや大きくしたサイズで、それぞれ600ページ超。さらに問題集を加えると、その重量だけで5キロと言ったらイメージが湧くでしょうか? 一般的には大学で受講したり、リアルターの学校に通ったりするケースが多いのですが、僕はすぐに勉強をスタートしたかったので独学で挑戦しました。

とにかく教科書を読みこんでは小テストを繰り返す日々を、1日も休まず100日間続けました。その間、家族でヨセミテを旅行した時があったのですが、ホテルの浴室にこもって朝方まで勉強していた姿に、家族も呆れていました(笑)。

そんな風に集中して勉強できたのが良かったのか、その年の試験で、ストレートで合格することができました。何度か触れてきた通り、今は実需と投資用物件双方の仲介を米国内で行っています。

ただ、毎日オフィスに通って、時間内ずっと働いて…という働き方はしていません。もともと、僕の中期的な目標である「ベーカーズフィールドに家を無借金で10軒所有する」を達成するために、いちいちエージェントを通すわずらわしさを解消する狙いもあって、リアルターの資格を取得しました。

もう1つ、リアルターの資格を取って良かったな、と思うことは、何かわからないことが出てきた時に、「自分はプロだから調べて知っておかないといけない」という意識がより働き、自主的に勉強する頻度が多くなったことでしょうか。

売却はする? 本当は売りたくなかった物件たち

売却は考えていますか。築古になり、客付けが衰える印象はないのでしょうか。(東京都/すけさんさん/44歳)

これまで、僕は4棟の売却を行っています。その理由は、物件が古くなったからではありません。アメリカの永住権取得のために多額の費用が必要だったからです。永住権取得の要件を満たすために投資した物件の費用、弁護士費用、医療費、翻訳費などで計6000万円ほどがかかりました。生活に必要なものも一気に買いそろえなくてはならず、かなりのお金が必要だったんです。

新しい人生を踏み出すために、泣く泣く物件を売却した、という感じでしょうか。やはり愛情を注いできた物件たちですから、本当はもっと持っていたかったですね。

ちなみに、「地方で築古なんか持って出口(売却)はどうするの?」とも言われ続けてきましたが、多くの引き合いがあり、いずれも買値より数割高く売却できたことが何よりの答えだと思います。

経営についても、同様のことが言えます。古い物件でも、メンテナンスをきちんと行えば居住には問題がなく、さらに時代に合わせて魅力ある部屋作りで需要を満たすことができると言うのは、これまでにも述べてきた通りです。僕が所有している古い物件たちも、ガス管や給湯器の交換を行い、各戸の分電盤(ブレーカー)の更新や共用灯のLED化、上水の供給は高架水槽を廃止して加圧式にしたことなどのほか、大規模修繕として外壁塗装や陸屋根の防水施工も行いました。今のところ、工事による不具合は起きていませんし、アップデーティングも功を奏して、ほぼ満室経営を維持することができています。

僕の経験から申し上げれば、重要なのは、建物の築年数よりも、室内のリフォーム状況や、管理会社の能力、設定賃料や設定条件、そして近隣競合物件のレベルや需給バランスです。

築年数が古いことは、部屋探しではじかれる1つの要因ではありますが、それを補うリフォームがきちんと行われていれば、魅力ある賃料設定などの武器で十分に戦うことができます。修繕工事にかかる費用をきちんと積み立てていれば、怖くはありません。

賃料という点では、物件が古くなれば下がっていくケースが多いものの、リフォームすれば上げることもできます。僕の物件でも、特に差別化を図ったリフォームを行って、数万円レベルで賃料アップができています。とはいえ、賃料についてはワーストシナリオ、つまり最低の水準で収益計算を行ってはいますが、安く購入している分、経営的に大きな柔軟性があることも高利回りのメリットとなっています。

「利回り星人」と揶揄されることもあった

不動産投資を今年始めようと、書籍やコラムで学んでいます。石原さんは、不動産投資を始めたときにどのような将来展望を持っていて、また、どのくらいで現在の収入を達成したのでしょうか。(愛知県/ゴン太さん/29歳)

僕が初めて不動産とかかわったのは2001年で、まだ20代でした。会社の事務所兼自宅を新築する計画を立てて、竣工したのは翌年です。将来性を考えて、狭い一棟の中に2世帯を押し込み、狭小地というデメリットに負けないように、動線や収納などに工夫を凝らし、慣れない手つきで図面を引いて、耐震性にも配慮しました。完成した時は本当にうれしかったです(現在は、大家族でも宿泊できるミニ旅館として運用中)。

そして、収益物件となるアパートを本格的に探し始めたのは2003年のことです。当時、住宅ローンを引くのは比較的簡単でしたが、アパート融資は今よりもかなり厳しい時代でした。世論もまた、バブル崩壊のイメージは色濃く、不動産に対して後ろ向きな印象でした。ですが、とにかく買わなければ始まらないので、「金利が高くても収益力でカバーできるもの=高利回り物件」を購入して稼働率を高める作戦で、グロス利回り24%、1600万円の中古アパート(2棟一括売り)を購入し、不動産投資をスタートしました。

知識もあまりない状態でしたから、やりながら考えていきました。それでも、高利回りであることにはこだわりました。「利回り星人」なんて揶揄されるような言葉も、「そんな物件買ってどうするんだ」なんてセリフも言われましたが、今になれば、僕のやり方も正解の1つだったという答えが出ていると思います。

とはいうものの、最初の2年間は苦労しました。空室が増え、「失敗したのかな…」と落ち込んだこともありましたが、管理会社とのコミュニケーション不足が原因と判明してからは、「教えを請う」姿勢を大切にし、心を通わせることで、これまでの苦戦が嘘のように、何をせずとも満室に導いていただきました。

このように、「人気の間取りが…」「最新のアイテムが…」「賃料相場が…」の前にくる、最も大切な姿勢を最初の管理会社の社長よりご教示いただけたことは、僕にとって一生の宝物です。

今となっては、受難の時代があって良かったと思います。経験を積み、上手に対応できる頻度も増えていき、そうすると収入にも直結して、充実感もどんどん大きくなっていきました。この充実感は、大きなモチベーションでしたね。工夫して答えを見つけて、その答えが収入増につながる。戦った分経験値がもらえて強くなる、ゲームの「ドラゴンクエスト」みたいなものですね(笑)。

最初に収益物件を購入した時には、正直なところ、明確な規模などは思い描いていませんでした。当時、輸入卸売販売業の会社を興していましたが、物を仕入れて納めるというビジネスは1年先が読めず、辛いものでした。

そんな時、不動産投資に出合って、安定した収入が得られるということを知ったんです。周囲からはそんな大きな借金は危ないと言われ、また、自分でも本当に安定収入なんて得られるのだろうか? と半信半疑でしたが、調べてみても理屈に穴はない。失敗しても命まで取られることはない、と怖々スタートしました。

目標よりも、「本当にこんな風な収入が得られるならスゴイ」「アパートが1棟でもいいから欲しい」という単純な気持ちだったと思います。今の生活を脱したい、安定的に稼ぎたいというモチベーションがあったんですよね。

実は、あの時は不動産投資以外にもいろいろ手を出していて、先物のガソリン取引では2週間で5、600万円の損失を出したことも。そういう意味では、不動産は地味だけれど、継続して安定収入が得られるというメリットが本当に良いと思っています。