大手住宅メーカーが55億円もの大金をだまし取られた事件が記憶に新しい、「地面師」による事件。この「地面師」をテーマに小説を出版した小説家・新庄耕氏とともに、地面師事件の舞台となった旅館跡地を訪れた。

 

土地所有者になりすます地面師、55億円被害も

地面師とは、土地や建物の所有者になりすまし、売買契約を持ち掛けて代金をだまし取る詐欺を働く人々である。

不動産投資家や不動産会社が購入を検討する土地建物。地面師グループは、この所有者になりすまして、偽の売買契約をもちかける。こうして多額の代金をだまし取る手法だ。

法務局において登記申請が却下されたり、所有者が身に覚えのない仮登記に気付いたりなどして発覚するケースが多い。

2013年にはアパホテルを運営する「アパグループ」の不動産会社「アパ」が地面師グループに約12億6000万円をだまし取られる事件が発生。また2017年には、大手住宅メーカー「積水ハウス」が約55億5000万円をだまし取られた事件が起きている。

独特の雰囲気を放つ五反田の旅館跡地へ

昨年、地面師を題材とした小説を上梓した小説家・新庄耕氏とともに、積水ハウス事件の舞台となった東京・五反田の旅館跡地を訪れた。

五反田駅から徒歩数分という一等地。周囲にはビルが立ち並ぶ中、木々に覆われたその土地は独特の雰囲気を放っている。

土地を囲む壁には緑色の保護シートが張られ、入り口にはフェンスが立てられていた。

うっそうとした木々に囲われる建物

旅館跡地の正面入り口には、フェンスが

小説『地面師たち』は、地面師グループの実行役として詐欺を働く主人公を中心に、人がだまし、だまされる様子を生々しく描いている。

地面師グループには、綿密な計画を立て、全体を指揮する主犯格の男や、以前はまっとうな司法書士だったにもかかわらず、その知識を悪用して主人公とともに実行犯となる男、なりすまし役を手配する女など、さまざまな背景を持った人物が属している。彼らはいくつもの小さな地面師事件を経て、100億円規模という大きな詐欺へと手を伸ばしてゆく。

この小説を書くにあたって積水ハウスの公判資料を読んだり、不動産ブローカーらに取材を重ねたりしたという新庄氏は、「土地所有者のなりすまし役が、(本当の所有者の)干支を言い間違えたり、余計なことを話してしまったりと、周到に準備した詐欺計画が、ヒューマンエラーによってご破算になってしまったことがあるというのを聞いて、すごく興味深かった」と話す。

積水ハウスの事件では、地面師グループが同社の社員らに建物の内覧をさせ、契約の話を信じ込ませたという。「このあたりは小説にも盛り込みたいと思い、ヒントにした」と新庄氏は話す。

新庄耕(しんじょう・こう) 1983年、京都市生。2012年、『狭小邸宅』で第36回すばる文学賞を受賞。著書に『ニューカルマ』『地面師たち』(いずれも集英社)など。

なぜ人はだまし、だまされ続けるのか。新庄氏は、「人をだますことに快感を覚える人もいるだろうけど、やっぱり最初は自己保身とかから始まるんじゃないか。それが、いつの間にか手段が目的に変わって、だますことに快感を覚えるようになる人もいるのかもしれない」と推測する。

今後、続編の執筆も念頭に置いているという新庄氏。不動産投資家に向けては「些細なところに気を配ることで、未然に被害を防ぐことができているケースもある。こういうリスクも背負っているという点で、ぜひ気を付けていただければ」と述べる。

被害額の大きさから、大手不動産会社の被害が報道されるケースは多いが、個人の不動産投資家もまた、地面師の被害に遭う可能性はゼロではない。こうした犯罪行為が横行している現実を、ぜひ心に留めておいていただきたい。

(楽待新聞編集部)