不動産業者、営業トーク

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先日の楽待新聞で、ブローカーの巧みな手口によって買ってはいけない物件を買ってしまった女性の事例が紹介されていた。ブローカーから「賢い人はみんなやってます」「知識がなくても大丈夫」「これだけ説明しているのに、まだグズグズ言うんですか」などとしつこく勧誘されて断り切れず、実勢価格の2倍もの価格で区分マンションを買ってしまい、自己破産寸前まで追い込まれているという内容だった。

初心者投資家が不動産業者から営業を受けたり、自ら物件の相談をしたりした際、押しが強い営業マンに当たってしまうと、よく分からないまま物件を買わされてしまうリスクがある。仲介業者は契約を取るために、顧客にさまざまな営業トークを駆使して「今日」物件を買ってもらおうとすることが多い。うまく顧客に刺さるトークを使い、顧客の気持ちが高ぶっているうちに決断をしてもらった方が契約が決まりやすいからだ。

今回は、不動産業者の営業マンが主に使う営業トークについて、元不動産仲介業者の筆者が紹介していく。このあたりの基本的な話はすでに理解している読者が多いかもしれないが、これから不動産投資に参入を検討している人に少しでも参考にしてもらい、物件購入で後悔することがないようにと願う。

「不動産投資で節税できる」という謳い文句

「不動産投資で節税」というワードを見聞きすることは多いだろう。不動産仲介会社(以下、仲介業者という)の営業トークでもよく使われる言葉で、「不動産を購入すれば税金面でお得になる」といった印象を受けやすい。

ところが、不動産投資での節税というのは、基本的に不動産運用での赤字分を損益通算することが前提となっている。つまり、赤字計上によって所得が減った分だけ課税される所得税も減るという仕組みだ。

損益通算とは、例えばサラリーマンであれば給与所得と不動産所得(売却益や賃料収入など)を合算した総合課税所得から不動産投資の赤字分を差し引くことができるというもの。もし不動産投資で赤字が出てしまっても、その赤字分を計上すれば総合課税所得の額が減るため、これが節税へとつながることになる。しかし、逆に黒字であれば所得が増えた分だけ課税対象額も上がることになり、すべての不動産投資に節税が当てはまるわけではない。

節税の営業トークには要注意

不動産投資をしたからといって必ずしも節税できるわけではなく、不動産運用にかかる諸費用や減価償却費、税金などを計上して損益通算することが前提となっているため、注意が必要だ。

例としては、収益物件の購入を考えている投資初心者が仲介業者へ相談した際に、担当の営業マンから「不動産投資は節税効果がありますよ」といった内容を聞かされるケース。もし営業マンが赤字計上の話をしなかったり説明が曖昧だったりすると、話を聞いた投資家は「不動産投資=節税」と誤認してしまう可能性がある。この誤認をしたまま節税効果を期待して不動産を買ってしまうと、後になって実際には思っていたほど節税にならなかった、ということもある。

そこでまず、不動産の税金についてきちんと理解をしておく必要がある。不動産の節税の基本については、以下の記事で解説されている。収益物件の購入や運営でかかる費用から、税金の基本的な仕組み、損益通算などについて紹介されており、初心者でもわかりやすい。

参考:仕組みから理解する「節税」の超基本【初級編】 

いつまでも赤字計上では投資拡大ができない

不動産投資での節税は、うまくキャッシュフローを残しつつ、減価償却費やその他経費を計上することで帳簿上の損益を赤字にできれば節税効果が期待できるのだが、デメリットも存在する。

例えば、不動産業者が土地の所有者に対して一棟マンション・アパートの新築を持ちかけるケースで、営業マンは節税対策として損益通算を使った赤字計上を前提に話をしてくる場合がある。減価償却で帳簿上赤字にすれば、不動産運用に関する赤字分は所得の課税対象額から減らすことができる、という内容だ。また、不動産業者はサラリーマン投資家に対しても土地を買わせて一棟アパートの新築を提案することがある。

つまり、不動産所得の赤字を給与所得から差し引くことで、「赤字分の損益通算」によって所得税の減額につながるという仕組み。課税対象額が減ったぶん、給与から天引きされていた所得税が還付されるというメリットがあるが、マンション経営が赤字ということは「不動産運用が事業としてうまくいっていない」という見方もできるため、金融機関の融資がつきにくくなる恐れもある。今後も投資を拡大していくのであれば、それが困難になるリスクをはらんでいるのだ。

例として、仲介業者にアパート経営を提案されたサラリーマン投資家が、所得税や住民税の節税を期待して不動産ローンの利用で一棟アパートを新築した場合。帳簿上赤字にするため減価償却費やその他経費を計上して確定申告を行い、赤字の損益通算によって所得税が還付されることになった。

ところが、次の投資対象として2棟目のアパートを新築しようとしたところ、銀行のローン審査が承認されずアパートを建てる土地すら買うことができない。銀行の担当者が言うには、現在の赤字を改善してローン残債を減らさなければ融資できない、とのことだった。

銀行融資の審査では不動産投資を事業として見ており、業績が赤字のままでは融資がつきにくくなってしまう。

またこの事例の場合、キャッシュフローが出ている状態で帳簿上だけ赤字なのであればまだリスクは低いかもしれないが、現金収支も赤字なら危険な状態といえる。この状態では、毎月のキャッシュフローがマイナスのまま不動産を持ち続けなければならなくなってしまう。また、売却するにも買ったときより低い価格でしか売れず損失のほうが大きい可能性があり、そうなるともはや「節税」どころではない。

損益通算については下記の記事を参考にしてほしい。

参考:イチからわかる収支シミュレーション【図解版

よくある不動産業者の営業トーク

節税をはじめ、投資家が仲介業者の営業マンから言われやすい営業トークをまとめてみた。

【1】不動産を買えば節税になる

先述した通り、すべての不動産に節税効果があるわけではなく、不動産の運用スタイルによって異なる。一般的に節税効果があるのは、帳簿上赤字の状態にして課税所得額を減らすというもので、所得税の還付や住民税の減額につながることがある。ただし、赤字の状態のままでは銀行融資がつきにくくなることから、初めから投資拡大を想定している場合は注意が必要だ。

【2】生命保険の代わりになる

一般の住宅ローンと同様に、不動産ローンには団体信用生命保険(以下、団信という)が付けられる。一般的には保険料をローン金利に上乗せして支払うことが多い。団信は、加入者が死亡または高度障害になった場合にローン残債を保険金で補填するというもの。万が一、不動産を買ったオーナーが亡くなってしまったとしても、遺族にローン残債が残ることはなく不動産を相続することができる。

団信はローン残債がなくなるまで保険料を支払っていかなければならないため、死亡や大きな病気をすることなく元気なままであれば、掛け捨ての保険のようなものともいえる。仲介業者の営業マンは、この団信による万が一の保証を「生命保険の代わり」のような言い方で顧客に訴求することがあるため、「生命保険」としての印象が強く残りやすい。

しかし、当然ながら不動産投資は生命保険ではないので、ただ保証料を支払っていればよいというわけではない。きちんと賃料収入や売却益などで利益を出すために運用していく必要がある、ということを忘れないようにしたい。

【3】高利回り物件だから儲かる

仲介業者が顧客に紹介する不動産の中に、表面利回りが12%以上あるような高利回り物件というものがある。顧客に対して「高利回りなので必ず儲かります」と言うような、得られる利幅の大きさや収益の確実性を説いて顧客の興味を引くやり方だ。「必ず~」「絶対に~」という言葉を使う営業マンは多いが、これはその営業マンの主観でしかないため、言葉や表面だけの数字に惑わされずにしっかりと物件の内容を確認する必要がある。

高利回り物件であっても建物が築古のため将来的に多額の修繕費用がかかるケースや、賃貸需要が低いエリアにある物件のためなかなか入居付けができない、といったリスクが考えられる。また土地の形状が旗竿地だったり、再建築不可のせいで高利回りになっていることもあるから、地形や権利関係についても早めに確認しておきたい。

例えば、利回り20%で築古の一棟アパートが売却に出ていたとしても、再建築不可の場合は築古の建物を解体して新たにアパートを建てることができず、リフォームをしながら保有し続けなければならないといったリスクがある。また、エリアによっては再建築不可の物件は売却することも困難な場合が多く、投資の出口としてもやはりリスクが高い傾向にある。

高利回り物件だったとしても、再建築不可や埋蔵文化財包蔵地の対象エリアであるなどのデメリットがないか、きちんと確認しておかなければならない。

【4】サブリースで家賃保証

サブリースとは、サブリース会社が収益物件を一括借り上げして、その賃料をオーナーに支払うという仕組みのもの。もし入居者がつかず空室の場合でもサブリース会社から賃料が支払われるため、営業マンに家賃保証の話をされるとオーナーのリスクが低いような印象を受ける。しかし、物件が所在するエリア内の賃貸需要や建物の老朽化によって賃料改定が行われる場合があり、そのたびにサブリース会社から支払われる賃料がどんどん減っていくといったリスクがある。

例えば、3000万円の一棟アパートで、サブリース会社から支払われる年間賃料が500万円の場合。契約時は500万円の賃料収入であっても、3年後の賃料改定によって賃料収入が400万円になれば、表面利回りが3%以上も下がることになる。

極端な例ではあるが、サブリースは永続的に最初の賃料を保証するものではないため、契約する前にきちんと内容を確認しておくことが大切だ。契約期間や転貸の条件についてチェックし、特約の部分に賃料減額や中途解約についての文言が入っている場合は注意が必要だ。きちんと内容を担当者に確認しておきたい。