「不動産投資」の形はさまざま。アパートやマンションを購入して賃料を得る方法が一般的だが、店舗や施設、駐車場、太陽光発電設備など、住居以外の不動産に投資するオーナーもいる。

この企画では、アパートやマンション「以外」の物件オーナーを楽待スタッフが直撃し、初期投資額や年間の収支額などの実態を調査、あなたの周りの「○○投資」に動画で迫っていく。

今回取り上げるのは、街でよく見かける「コインパーキング」。以前、楽待のYouTubeチャンネル上でアンケートを行った際、「どれくらい儲かっているのか知りたい!」という声が最も多かったのがこのコインパーキング投資だ。さて、いったいどのくらいの売り上げがあるのだろうか?

 

「ゲート式」と「ロック式」の違いは?

取材したのは、東京・豊島区にあるコインパーキング。オーナーは、アパートやシェアハウスなど4棟30室を保有する専業大家でもある長谷川元弘さん(59歳、仮名)。今からちょうど1年前、土地を借りてこのコインパーキングの運営をスタートさせたという。

駐車スペースは、軽自動車用を含めて8台分。往来の多い都道から1本脇道に入った場所にあり、周辺には静かな住宅街が広がっている。近隣に大きな商業施設などはないが、建築現場に出入りする職人などが多く利用しており、取材当日も午前中から満車となっていた。

今回取材したコインパーキング。東京・豊島区の雑司ヶ谷駅から徒歩数分程度という立地。角地にあり、車の出し入れもしやすそうだ

ところで、コインパーキングの形式には、大きく「ゲート式」と「ロック式」の2種類がある。ゲート式は、入庫時にチケットが発行されるとゲートが上がり、料金を入れて精算するとゲートが上がって出庫できるという仕組み。ゲートの設置や出入りのためのスペースが必要なため、大規模な駐車場で採用される方式だ。

ゲート式コインパーキングの例。大規模な駐車場に適している(PHOTO:天空のジュピター/PIXTA)

一方、今回取材したコインパーキングは「ロック式」と呼ばれるタイプ。この方式の特徴は、各駐車スペースに設置された「フラップ」という装置だ。

車を停めると地中のセンサーが感知して5分後にフラップが上がり、車がロックされるようになっている。ロック式のパーキングでは駐車スペースの数だけフラップが必要になるが、ゲートの設置が不要なため、比較的小規模な駐車場に適している。

今回取材したパーキングに設置されたフラップ(写真左奥)。地中には「ループコイル」と呼ばれるセンサーが埋め込まれており、これが車の金属部分を感知して出入庫を知らせる仕組み

こちらは、コインパーキングの心臓部とも言える「精算機」。自分が車を停めたスペースの番号を入力すると料金が表示され、支払いが済むとフラップが下がり、出庫できるようになる。

長谷川さんのパーキングに設置された精算機。隣には自動販売機も置かれている。街で目にしたことがあるという人も多いだろう

初期費用は約400万円

子供の頃からこのパーキングの近所に住んでいるという長谷川さん。この土地はもともと近隣の会社が一括で借り上げていた駐車場だったが、昨年その会社が別の場所に移転。

空っぽになった駐車所を見た長谷川さんは、顔見知りだったこの土地の所有者に直接掛け合い、今度は長谷川さんが借り上げる形でコインパーキングをオープンする許可を得た。元々が駐車場だったため更地の状態であり、角地のため車の出入りもしやすい。以前からセミナーに参加するなど、コインパーキングビジネスには興味を持っていた長谷川さんは、「この土地なら」とひらめいたそうだ。

オーナーの長谷川さん。現在4棟30室を保有する専業大家さんだ

さっそくいくつかのコインパーキング業者にコンタクトを取った長谷川さん。見積もりの内容などから1社に決め、オープンに向けて準備を進めていった。

初期費用は約400万円。内訳は、精算機が最も高額で約150万円、フラップ板が1台分当たり約20万円(8台分で160万円)、アスファルトの舗装費(一部)で30万円、その他に看板や車止め、精算機の雨よけ、衝突防止用のポールなどだ。今回はキャッシュで購入したという。

駐車料金はどうやって決める?

このコインパーキングの料金は、昼間が30分で200円、夜間が60分100円。平日は24時間で最大1400円に設定されている。料金は、コインパーキング業者が近隣の相場などを調査したうえで提案してくれるそうで、昨年のオープン当初は24時間最大で1500円だった。

ところが、昨年末にかけて稼働が落ち込む時期が続いたため、長谷川さんが自ら周辺のパーキングを見て回り、価格の改定に踏み切ったという。

「近隣を調査してみたところ、私のところよりも安いところがいくつか見つかりました。そこでつい先日、24時間最大の料金を100円値下げしたんです」(長谷川さん)

その効果あってか、楽待スタッフが取材に訪れた日は午前中から夕方までほぼ満車をキープ。長谷川さんによると「満車は久しぶり」だというから、100円の違いが利用者を呼び込んだのかもしれない。

気になる収支はいくら?

続いて、気になる収支を聞いてみた。

「いい月もあれば悪い月もありますが…昨年の実績だと、月平均27万円ほどの売り上げでした。オープンしてすぐは赤字の月もありましたね」(長谷川さん)

コインランドリーなどとは違い、周辺の住民は見込み客にはならない。そのためチラシ配りなどの営業活動はほとんど効果が期待できず、オープン当初は悩んだこともあったが、徐々に認知されたためか、しばらくして現在の売り上げ規模に落ち着いた。

年間にすると約320万円の売り上げになるが、ここからさまざまな経費が引かれ、最終的な手残りは117万円ほどだ(2019年の実績)。年間経費の内訳は、土地代が約180万、精算機やフラップなどの電気代が約4万円、コインパーキング業者に支払うメンテナンス費用が約25万、合計で約200万円ほどの経費がかかっている。

特別に見せてもらった精算機の内部。千円札の束が見える。これで約10日分の売り上げだという

日別の売り上げ表も見せてもらった。日によってばらつきが見られ、特に日曜日の売り上げの少なさが目が付く。これは、先述のとおり利用客の多くが建築現場などの職人だからだ。

「利用客のほとんどは、建築現場などの作業員の方。日曜日は現場が休みですから、その分売り上げも落ちてしまいます」(長谷川さん)

こうした利用者はつねに一定数見込めるため、住宅街のど真ん中でも駐車の需要がある一方、ゴールデンウィークやお盆期間、年末年始の休み期間中などは稼働率が一気に落ち込むという。現状、日曜・祝日は平日よりも安い料金に設定して稼働を上げようと試みているが、今後はカーシェアリングの導入など、いろいろな方法を試してみる予定だという。

昨年12月の日別売り上げ実績。建築現場が休みの日曜日は平日・土曜日に比べて売り上げが少ない(クリックで拡大)

こちらは時間帯別の稼働率。14時ごろを頂点に緩やかな山形になっている(クリックで拡大)

コインパーキング投資、リスクは?

アパートやマンションのように大規模修繕やリフォームが不要で、管理も「月に1回の集金だけ」(長谷川さん)で済むというコインパーキング投資。機器の大きなトラブルなども今のところないという。手軽に安定した収入が得られるように思えるが、当然、リスクやデメリットもある。

1つは、そもそも土地を探すのが難しいという点。長谷川さんの場合、周辺相場よりも安い、1台あたり2万円という価格で駐車場を借り上げることができたが、こうした土地はなかなか見つけることができないという。仮に見つけたとしても所有者と話が折り合わなかったり、土地の形や広さがパーキングに適さなかったりといったこともある。

もう1つは出口戦略だ。長谷川さんの場合、この土地を駐車場として契約し借りている。住居とは違い、借地借家法によって保護される立場にはないため、たとえばもし土地所有者の気が変わればすぐに更地に戻して事業をやめなければならないという事態も起こりうる。「そうなったとき、中古となった精算機やフラップに買い手が付くのか、また撤去費用はどれくらいかかるのか、撤去したとしてどうやって処分すればよいのかなど、不安は残ります」と長谷川さんは言う。

また、コインパーキング投資を始めるに当たっては通常、機器の販売や設置工事を請け負う業者に、機器の手配や駐車スペースの配置などを依頼することになるが、そうした業者から提案される売り上げ予測はかなり楽観的であることが多いという。こうした数字を鵜呑みにして事業を始めてしまうと思うように利益が上がらず、場合によっては赤字となる可能性もある。自分の足で近隣のパーキングを見て回り、料金設定と駐車時間から月の売り上げを計算するなどの調査をしておきたい。

今回取材に応じてくれた長谷川さんの場合、一気に空いた駐車場をたまたま見つけることができ、さらにその土地の所有者とも面識があるなど、いくつかの「運」が重なってオープンにこぎ着けることができた。

仮に土地が見つかったとしても、安易に手を出すのではなく、上記のデメリットも頭に入れておき、十分に検討したうえで事業をスタートさせてほしい。

(楽待新聞編集部)