不動産投資を成功させるためには、融資や契約書、税金に至るまで幅広い知識が必要だ。そういった知識だけではなく、実際に現地へ行って「買ってよい物件か」見極める力も必要となる。

そこで、一級建築士をはじめとする建物のプロに実際に物件を見てもらい、物件でチェックすべき点を解説する新企画がスタート! 投資家が最低限知っておきたい建物に関する知識を分かりやすくお伝えする。

第1回目となる今回は、一級建築士の資格を持ち、「NPO法人建築Gメンの会」理事長の大川照夫さんに東京都内にある戸建て物件を見学してもらった。

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築28年、木造3階建てで間取りは4LDK。建物の1階にはビルトインガレージが設けられており、車1台の駐車が可能だ。

一級建築士の大川さんはどのように見学するのだろうか。

 

外観チェック

○壁

大川さんがまず確認したのは物件の「壁」だ。今回の物件は、1階部分にビルトインガレージがある。大川さんによると、「建物は各面にバランス良く壁が配置されていることが基本になる」というが、この物件は1階にビルトインガレージがあるため、道路に面した部分に壁がない。このように、壁の量に偏りがある物件は、地震や風に弱い構造だという。

○床下

次にガレージ内の基礎の状態を確認。ガレージ内には、床下通気口が設けられていた。この物件が建てられた1990年代前半は、床下通気口を設置することで、床下の換気をすることが多かったそうだ。

しかし、こうした通気口を設けると基礎の欠損やクラックの原因となってしまうことが多く、現在はあまり用いられていないという。現在は、基礎の上に「基礎パッキン」を敷いて、その上に土台を置いて床下の換気をすることが多いという。

木造で床を組んでいる場合、床下に湿気がたまると木材を傷める原因になる。また、床下の木材にカビが発生すると、健康被害も懸念されるため、床下の換気をすることはとても重要となる。

○軒

戸建て物件で見ておきたい箇所は数多くあるが、今回は「軒」に注目したい。

外壁の保護や雨の吹込み防止のために必要な「軒」

軒とは、屋根のうち、建物の外壁面や窓よりも外に突出している部分。役割としては、外壁の保護と窓からの雨の吹込み防止だ。

大川さんによると、狭小で広いスペースが取りにくい土地が増えていたり、デザイン上、軒のない家が好まれたりといった事情があるという。軒がないと、外壁や窓枠に直接雨水が当たるため建物が劣化しやすくなる。そのため、できる限り軒は大きく出したほうが良いという。

室内チェック

○雨漏り

まず、雨漏りについて確認した。雨漏りについては、壁や天井の全体を見て、雨染みや汚れがないかを見るという。外壁面にひび割れがあったりすると、そこから雨が浸み込んできて雨染みが発生したり、クロスの裏側でカビが生えたりするそうだ。

また、窓の周りでも雨漏りが起きているかどうか確認する。窓の角のところから外壁がひび割れていたりすると、そこから雨水が内側に入って雨漏りの原因になるそうだ。そのため、雨漏りの確認をする際は、外観と室内の両方から見る必要があるという。室内からは、室内の壁や床、天井などにカビや汚れがないかということを確認する。

今回の物件では、建物の耐久性にかかわるような雨漏りは発見されなかった。

 

○壁・柱

2階にある和室もチェックする。和室でよく見かける、柱が見えているデザインは「真壁(しんかべ)」といい、柱が壁で覆われていないのが特徴だ。一般的な洋室の壁は「大壁(おおかべ)」といい、柱全体をボードなどで覆っているのが特徴的な壁だ。

2階の和室では、「散り切れ」と呼ばれる現象が起きていた。「散り切れ」とは、真壁の和室において柱と壁の間に隙間ができることだ。大川さんによると「散り切れ」は、地震や台風などで建物が揺れて変形した痕跡として位置づけられているという。そのため、散り切れがたくさん発生していると、地震や台風などで建物が揺れやすい、もしくは建物全体が沈んでいるのではないかと予測できるという。

今回の物件は、設計図がなかったので確認できなかったが、設計図がある場合は「柱の直下率」についても見ておきたい。

2階建て以上の建物の場合、2階の柱と1階の柱が同じ位置にあると柱の直下率は高くなり、上の階の重さが直に柱を通じて基礎まで伝えられ、安定した建物になるという。

しかし、2階と1階の柱の位置が異なると直下率が低くなり、上の階からの重さが基礎まで伝わらない。新築の設計時に柱の直下率を低くせざるを得ない間取りにする場合は、2階部分の水平部材(床梁)を太くするなどして、重さが1階の柱に伝わるようにする必要がある。

こうした「柱の直下率」は目視でチェックするのは難しいため、図面を一級建築士などの専門家に見てもらうことが重要だという。そういった図面がない場合でも、現在の間取りを平面に起こしたものを見てもらうとよいそうだ。

一棟ものに比べて安く購入できることの多い戸建て物件。今回の物件のように築古の建物も多く、構造や耐久性が気になるケースもあるはずだ。実際に現地を訪れたものの、物件チェックでどこを見ればよいのかわからず、とりあえず物件を購入してしまうのはとても危険だ。

事前に案内された資料と物件に相違がないかを見極めることが難しい場合や物件チェックでどこを確認すべきか分からない場合は、一級建築士のような建物のプロに物件資料の確認や現地調査の同行を依頼して、きちんと購入の判断をしてもらいたい。

 

※本物件情報は一部編集しています。
※物件所有者に許可を得て撮影しています。

(楽待新聞編集部)