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まち探訪家・鳴海侑さんが個人的に注目しているまちに、不動産投資家の代わりに足を運び、そのまちの開発状況や歴史についてレポートする本企画。今回は、数年前に注目度が急上昇していた武蔵小杉のお隣、穴場エリアの「元住吉駅」周辺をピックアップして紹介します。

武蔵小杉のお隣駅、「元住吉」の魅力に迫る

元住吉駅を語るうえで欠かせないのは、やはり「都心へのアクセスの良さ」でしょう。

元住吉駅には、東急東横線と東急目黒線の2路線が乗り入れています。東急東横線を使うと、渋谷駅へ約20分、直通する東京メトロ・副都心線の新宿三丁目駅へは約25分です。また、中目黒駅で東京メトロ日比谷線に乗り換えることができるため、六本木や霞ヶ関方面へのアクセスも容易です(六本木駅までは約30分)。

さらに、近年オフィス集積が進んでいるみなとみらい21エリアにも約20分。勤務地が逆方向のカップルや共働き世帯にも都合のいい立地です。

もう1つの乗り入れ路線である東急目黒線は、東京メトロ南北線と都営三田線に直通しています。南北線を使えば永田町駅や四ツ谷駅まで約35分、三田線を使えば内幸町駅まで約30分です。東京都心東西どちらの拠点にもほぼ乗り換えなしでアクセスすることができます。

元住吉駅は高架の上にあり、日光を遮りすぎない白い幕屋根のおかげで明るい印象を受けます。東急東横線と東急目黒線の線路は並んでいるのでホームまでの動線がシンプルで、迷わずに乗れるのもいい所です。

白い幕屋根に覆われた元住吉駅の入り口。駅舎は高架を走る線路のさらに上に設けられている(著者撮影)

元住吉駅の乗降客は1日あたり平均約6万8000人(東急電鉄・2018年度)。隣の日吉駅が約20万8000人(同)、武蔵小杉が約22万6000人(同)ですから、隣接駅に比べて利用者が多い駅ではありません。東急東横線・東急目黒線ともに、各駅停車のみが停車します。

活気の源は商店街

各駅停車しか止まらなくとも、元住吉は活気あるまちです。その原動力が「商店街」です。駅の東側には「オズ通り商店街」が伸びています。少々入り組んだ印象を受ける商店街ですが、歩行者メインで歩きやすくはあります。さまざまな飲食店が建ち並び、一人暮らしでも夕食に困らないでしょう。

元住吉駅から東に広がる「オズ通り商店街」(著者撮影)

こうした歩行者メインで飲食店が中心となった商店街が駅前から伸びているところは東急東横線沿線では珍しく、初めて元住吉駅を訪れたら驚く人もいるかもしれません。また自転車の数が多いのも、沿線の他のエリアにはない特徴でしょう。

ただ、「オズ通り商店街」は奥行きはあまりありません。「綱島街道」と呼ばれる道路にぶつかったところで途切れ、その先は住宅街が広がっています。それなりに郊外の立地ではありますが、近くに慶應義塾大学の日吉キャンパスがあることや、川崎市内に工場や事業所が多い関係なのか、マンション、アパートが比較的多くなっています。

綱島街道の東側に広がる住宅街。アパート、マンションが多く見られる(著者撮影)

モール化で活性化に成功

再び元住吉駅に戻り、今度は西へ歩いて行きましょう。西側に延びるのが「ブレーメン通り商店街」です。約550メートルに渡って伸びており、非常に活気のある商店街です。アーケードこそありませんが、歩く人の多さや通る自転車の多さを見ていると、まるで大阪の商店街にでも迷い込んだかのような錯覚を覚えます。

元住吉駅から西にのびる「ブレーメン通り商店街」(著者撮影)

このブレーメン商店街は1989年にモール化(街路の整備やアーチ、モニュメントを設置して統一したイメージを持たせること)を行い、熱心に活性化に取り組んできた商店街で、行き交う人の多さにまさに成果が現れていることがわかります。

また近年は、商店街は全国的に衰退傾向にあり、2階に店が入っていなかったり、事務所になっていたりするケースが多く見られます。しかし、ブレーメン通り商店街では2階にもしっかりと店が入っていて、にぎわいが感じられます。

それでも広い範囲から人を集めているという感じがしないところが、この商店街の特徴でしょう。地域に親しまれ、地域の人に利用されているのです。このことは対外的にも評価され、2015年には「かながわ商店街大賞」を受賞、2016年には経済産業省の「はばたく商店街30選」を受賞しています

賑わうブレーメン通り商店街の青果店(著者撮影)

「ブレーメン通り商店街」は生鮮食料品を扱う店が何店舗もあり、いい意味で競争しているのが特徴的です。こうした生鮮食料品を扱う店舗が多いことは商店街の活気を生み出すポイントになりますが、とりわけブレーメン通り商店街では多く、どの店舗も活気があります。

さて、周辺へ目を転じると、戸建てと中小のアパート・マンションが多く立地しています。探せば中小規模の良い物件がありそうです。

「ブレーメン通り商店街」周辺の住宅街。戸建てが主体だが、ところどころアパートや中小規模のマンションがある(著者撮影)

ただ、あまり商店街や駅から離れてしまうと物件の魅力が大きく落ちるのではないかと思いますので、駅から歩いてみて「このくらいなら遠いと感じなさそう」というところを上手く探ることをおすすめします。

元住吉は「おいしいとこどり」

さて、元住吉のよいところは、アクセスや地元の商店街だけではありません。やはり、お隣の武蔵小杉駅周辺に大型商業施設があることも大きな魅力です。

商店街は日用品や食品の買い物には便利ですが、雑貨や洋服などの買い物では物足りないと感じることがあると思います。

しかし、隣の武蔵小杉駅までいけば、駅直結の「東急スクエア」、「ららぽーと」を運営する三井系の「ららテラス」、イトーヨーカ堂が運営するショッピングモール「グランツリー」と、大型商業施設がいくつもあります。休日や、ちょっと買い物をして帰りたい平日の夜にサッと寄れる大型商業施設が隣駅に集積していることは、生活を豊かにするという意味でもありがたいことではないでしょうか。

武蔵小杉駅。駅の上と西側(写真右側)には「東急スクエア」があり、駅の東側(写真左側)には「ららテラス」がある(著者撮影)

ちなみに武蔵小杉といえば、周辺では近年JR南武線沿いに武蔵新城や武蔵中原の人口が大きく伸びており、こちらも注目されています。しかしながら、私があえて元住吉に注目する理由は、JR南武線の混雑がおすすめできない状況と東急東横線と東急目黒線の存在にあります。

武蔵中原や武蔵新城も決して住環境は悪くないまちなのですが、JR南武線は朝の混雑率が184%と、国内の路線でワースト7(国土交通省調査、2018年度)の混雑ぶりです。

さらにいえば、定期券代や所要時間が有利なことから、JR南武線のユーザーはJR横須賀線・JR湘南新宿ラインに乗り換えることが多く、近年はホームの混雑や乗り換え通路の混雑がよくピックアップされています。JR横須賀線はJR南武線よりも混雑が激しく、混雑率は197%(国土交通省調査、2018年度)にもなります。

しかし、元住吉駅であれば、東急東横線と東急目黒線および直通路線の活用で武蔵小杉の乗り換え混雑を回避できます。また、1本でアクセス可能な範囲も東京都心や副都心だけでなく横浜も含まれ、とても広いです。

そして、2023年には日吉から東急新横浜線が新横浜まで開業することになっており、東急東横線や東急目黒線から東急新横浜線を介して新横浜まで約10分程度と気軽にアクセスできるようになります。東海道新幹線を利用した出張が多い人にも大変魅力的な立地といえます。

さらに東急新横浜線は相鉄新横浜線ともつながり、相鉄線とも直通運転を行いますので、大和や海老名といった神奈川県央へも1本でいけるようになります。神奈川県央エリアも事業所は多く、1人は神奈川県央エリアへの通勤、1人は東京都心への通勤という夫婦やカップルにもおすすめできます。お出かけスポットが欲しい子育て世代にも大変おすすめできる場所と言えるでしょう。

つまり、元住吉は地元商店街に活気があっておすすめできる場所というだけでなく、武蔵小杉の欠点である朝の混雑を回避しつつ、立ち寄りやすい立地という「おいしいとこどり」ができる場所であり、今後の伸びしろもある場所なのです。

ただ、こうした利便性の高い土地ですので、不動産相場は決して安くはありません。また、利便性が高いといっても都心からそれなりに時間がかかる場所ですので、そこが敬遠される可能性があります。しかしながら、アクセスや地元商店街、周辺のまちといった面から見ても十分不動産取得を検討できる場所です。

「武蔵小杉周辺でどこかいいまちはないだろうか」と思っている方はぜひ元住吉を検討してみてはいかがでしょうか。

(鳴海侑)