「不動産投資で失敗してしまった」と感じている相談者に、不動産投資家でファイナンシャルプランナーの五十嵐未帆さんが厳しくも愛のあるアドバイスを送るこの企画。

4人目の相談者は、2018年に2億円で新築木造アパート2棟を購入したという兵庫県の会社員・紺田元治さん(仮名・48歳)。1年半で6回退去が発生し、収支状況が悪いので不安があるという相談です。

「頭金ゼロで」というネット広告を見て…

soud

今日はよろしくお願いいたします。

igar

よろしくお願いします。さっそく、現在の状況を教えていただけますか?

soud

はい。一昨年に新築木造アパートを2棟購入しまして、2年が経ちました。当初、業者からは「新築なので退去は少ないですよ」と聞いていたんですが、案外退去が多くて、埋まったら出る、埋まったら出る、みたいなのを繰り返しているのがちょっと困っています。

igar

わかりました。不動産投資はどうして始めようと思ったんですか?

soud

現在、高3と中3と中2の子供3人がいるんですが、塾の費用などがかかる時期に「頭金ゼロで…」というようなネット広告を見て興味が湧いて、そこから入っていったような感じですね。

igar

1年半の間に6回ほど退去が発生ということですが、退去の理由は確認しましたか?

soud

一応メールで受け取ってはいて、転勤が2人ほどで、あとは一身上の都合や結婚とか…。

igar

2棟で約2億円もの融資を引くことに不安などはなかったんですか?

soud

最初は1棟だけのつもりで、1億ぐらいだったのでそこまで大きな不安はなかったんですよね。1棟目のCFが少し少ないと感じて、業者から「合わせて2棟いけるよ」みたいな話があって、さすがに2億は大きいかなとは思ったんですが…シミュレーションしてみて、一応大丈夫かな、という感じで。

この投資は…

igar

結論から言うと、この投資は利回りの低い新築をオーバーローン・フルローンで2棟立て続けに購入した時点で終わっています。高金利ローン地獄でございます。

soud

そうですか…。

igar

楽待のCFシミュレーション機能を使って、1棟目の収支を試算してみましょう。

※クリックで拡大

igar

こういった感じでCFは当初からずっとマイナスで、35年後の累計CFはマイナス3894万円というシミュレーションになります。

soud

マイナスですか…。

igar

どうですか? このシミュレーションをご覧になって。

soud

まさかこんな感じになるとは思ってなかったんで…。

何が問題だった?

igar

1つ1つ、問題点を指摘していきたいと思います。最初の問題点としては、物件自体の評価に見合わないオーバーローン・フルローンを引いてしまっていることです。これでは借り換えや金利交渉も難しい。木造の法定耐用年数22年に対して35年と長い融資を引いていますが、これはキャッシュが出るように見せかけるためのマジックです。

soud

なるほど…そうだったんですか。

igar

返済比率は計算しましたか?

soud

いや、してないですね。

igar

計算してみましょうか。ローン返済額を家賃収入で割ると…64%。これはよくないですよね。安全な賃貸経営を目指すなら、50%未満にしておかなければいけません。管理費やインターネット代、清掃料、空室発生時の広告費や原状回復費などを考えると、すぐにキャッシュアウトしてしまう可能性がある危険な返済比率です。

soud

しっかり計算すべきでした。

igar

あと、イールドギャップ(表面利回り-借入金利)という数字があるんですが、利回り6.8%から金利2.7%を引くと4.1%しかないんです。安全に回すためには、6%ぐらいはほしいところです。

soud

そこもチェックしていませんでした。

igar

物件の評価は自分で計算されましたか?

soud

やってはみましたが、そんなによくなかったと思います。

igar

そんなによくなかったのに買ってしまったんですか…。全国地価マップというサイトの情報を基に積算評価を計算すると、土地2585万円+建物4440万円で、7025万円。収益還元評価も、家賃収入をエリアの相場利回り8.4%で割ると7842万円。どちらも購入価格の9612万円を大きく下回っていて、実勢価格より高値掴みしているということになります。

igar

業者さんのシミュレーションも見ていきます。入居率の試算が2年目以降ずっと95%になってるんですが、この通りに回るんだなって思いましたか?

soud

いや、ここはちょっと怪しいなと思ったので、自分のシミュレーションでは少し下げて計算したんです。

igar

それはいいことですね。私は新築の場合、入居率は90%で試算しますし、20年以降は80%ぐらいで見た方がいいと思います。それと業者さんのシミュレーションでは家賃が21年目以降ずっと同じ金額という試算になっていますが、こちらはいかがですか?

soud

そこは説明のときに、「20年経ったらだいたい家賃の下落はないんで」みたいな話で、ちょっとよくわからなかったので、そのままでシミュレーションした気がしますね。

igar

家賃が6万1000円で設定されていますが、築古になったときにどれぐらいの家賃設定になるか調べていきます。賃料相場のサイトでみると、10年後には5万円台前半ぐらいまで家賃が下がる可能性があります。そうなると、この想定の収支が得られなくなります。

igar

次に金利ですね。変動金利なので、金利の上昇局面で上がっていく可能性があります。あとは毎月の「原状回復費等」が10万円という試算ですが、広告費や水道代、光熱費などの経費がこれだけで済むのかという問題もあります。また、このシミュレーションには不動産取得税大規模修繕費が入っていないので、どんどん計算が違ってきます。ちなみに2棟目もCFシミュレーション上は35年後の累計CFがマイナス3298万になっています。