コロナショック 日経平均 ダウ平均 暴落 不景気 ダウ

新型コロナウイルスの影響で世界的に株価が下落し、国内経済も先行き不透明感が強まっているが、不動産投資マーケットは今後どのような未来をたどるのだろうか。不動産投資信託(REIT)の総合的な値動きを示す東証REIT指数が急落する中で、不動産価格の下落や融資の引き締めなど、不動産投資家にとって気になる材料は多い。

「『リーマンショックの再来』はありうる?」「銀行の貸し出し姿勢はどう変化する?」「不動産投資家はどんな物件を狙うべき?」

金融機関事情に詳しい金融アナリスト・高橋克英氏に、「コロナショック」に対する見解を聞いた。

リーマンショックとは決定的に違う

高橋克英氏
三菱銀行、シティグループ証券などで富裕層向けの資産運用アドバイザーとして活動後、独立。現在は株式会社マリブジャパン代表取締役。金融機関事情に詳しく、執筆、講演など広範に活動中。

――新型コロナウイルスの影響で世界的に株価が下落していますが、「リーマンショックの再来」はあり得ると考えますか?

リーマンショックはサブプライムローン問題を発端とした金融危機が実体経済に悪影響を及ぼした形だが、今回は先に実体経済が悪くなりつつあり、今後金融システムや金融機関にどう波及していくかという問題なので、そこが決定的に異なる点。ただし、特に日本の金融システム自体は今のところ安定しているものの、国内の実体経済へのダメージという意味ではすでにリーマンショックを超えているという見方もできる。

――不動産価格への影響については?

REIT(不動産投資信託)ではすでに大きな影響が出ているが、不動産投資ローンの対象となるような現物の不動産価格は株価に比べて遅効性があるので、まだ大きな影響は出ていない。ただ、株価の下落や各種イベントの自粛ムードなどで投資家のマインドは冷めている。今後も問題が長期化して金融危機に発展し、企業活動が滞ったり、東京五輪が中止になったりということがあれば、当然不動産価格にも相当なダメージが及ぶ可能性がある。

――リーマンショックのように、金融機関の融資引き締めによって不動産価格が下がるというシナリオはあり得る?

リーマンショックは金融危機なので、銀行自身が破綻の危機感から貸し渋りに動いた。今回は当時と状況が違い、今のところは金融危機ではなく実体経済危機という形なので、日米ともに金融システムはほぼ健全。金融機関は貸し出し余力があるので、絞るのではなくむしろ積極的に貸し出しをしていくのではないかと個人的には考えている。

「いよいよ我々の出番だ」

――コロナショックによってむしろ融資が受けやすくなる可能性があるという見方ですか?

日本もアメリカも、ゼロ金利政策を取っている限りは蛇口が開いてジャブジャブお金が流れている状態なので、そのお金は株や不動産、債券に行きつくことになる。ある意味での「バブル」がコロナショックによってさらに増幅し、今まで以上に蛇口がめいっぱい開けられた状態が世界で続いているといえる。

――融資が引き締められる可能性はそれほどないとみている?

短期的にはそう予想している。金融システム自体は健全で、銀行側も自己資本がしっかりしているので、表立っては言わないものの「いよいよ我々の出番だ」と、貸し出しを増やして地域社会に自分たちの存在意義をアピールするチャンスだと考えているはず。実際にどの金融機関もコロナ対策室や相談窓口のようなものを設けて、緊急貸し出しで中小企業や個人のローンをサポートしている。

――その姿勢は投資用不動産についても同様という考え方ですか?

中小企業への事業性貸し出しが正しくて、アパートローンや不動産投資ローンが悪いのかというと、そういうわけではないはず。どちらもお金を貸すことは同じで、当然リスクはある。既存のローンに関して条件変更をしたり、約定返済を猶予したりといったことはあり得るので、個々人の状況にもよると思うが、一度金融機関の窓口で既存ローンについて聞いてみる意味はあると考える。

――金利引き下げなどにも応じやすくなる可能性がある?

お金に色はないので、中小企業経営者が「運転資金の返済が難しくなったので2%から1.5%に下げてくれ」というのと、個人が「給料が減ったので住宅ローンを2%から1.5%に下げてほしい」というのは同じロジック。それがアパートローンや不動産投資ローンだと応じられないというのは矛盾があるので、実際に対応してくれるかどうかは金融機関にもよるが、相談してみる価値はあると思う。

投資家にとってはチャンス

――投資用不動産への新規貸し出しについては?

現状、金融機関の体力は問題ないので、新規の投資用不動産ローンについても基本的に貸し出しはしたいはず。だから新規ローンについても「こういうときだから不動産をちょっと買い増したい」「新規の借り入れができますか」といった相談も足元では可能だと思う。

――コロナショックでダメージを受けた会社に対する事業性融資が優先され、投資用不動産への融資が後回しにされる可能性についてはいかがですか?

コロナショック以前から、ここ数年は新規の投資用不動産ローンについて積極的に取り組んでいる金融機関は多くなかったはず。そういう意味では従来と同じく保守的な姿勢で基準に達した人には貸すというスタンスで、急激に締まるというシナリオは考えにくい。

――金融機関関係者などから、融資を抑えるというような情報は入っていない?

表立って「ウチは絞っています」というのは現状聞いたことがないし、日本政府や金融庁も金融機関に対して「困っている人をサポートしてほしい」というメッセージを出している。少なくとも受け入れる体制になっていることはたしかなので、一度金融機関窓口に行って、既存ローンの条件変更や新規融資の相談をするには絶好のチャンスかと思う。

――そういう意味では、地域に根差した金融機関ほど積極的になる可能性がある?

危機的状況の時に新規貸し出しによって地域を支えるという意味では、地域金融機関の方がその使命が大きいといえる。逆に、この状況下で貸し出しを渋るという判断をすれば批判の的になってしまう。むしろこういうときこそ従来の審査基準を少し緩めて特別対応で支えるというスタンスになるのではとみている。

貸し渋りの可能性も

――コロナショックが金融機関の経営自体に与える影響については?

この問題が夏や秋まで長引き、実体経済が悪化し続けて失業や倒産が増えた場合、金融機関は保有株式の含み損が大きく膨らみ、不良債権化が進行する。そうなると決算が赤字になって自己資本が毀損していくので、最悪債務超過や破綻に至ることも考えられる。

――その場合は先ほどの楽観論の逆パターンで、融資引き締めに動く可能性もある?

金融機関も公共性を掲げていて、体力が残っている状態であれば「社会のために」と貸し出しによって顧客を助けたいと考える。しかし、当然ながら最終的には自分たちの経営が最優先。不良債権が増えて自己資本比率が下がり、自分たちの経営が危なくなってくれば、リスクのある貸し出しはストップすることになると思われる。投資用不動産ローンについても、先ほど言ったこととは真逆で、貸し渋りが起きたり条件変更が難しくなったりといったシナリオもあり得る。

――このまま実体経済の悪化が続けば、融資引き締めに舵を切る可能性が高い?

ただ、政府も金融機関がそれだけ内向きの状況になるまで放置する可能性は低いと考えている。その前に財政出動など実体経済を立て直す政策を取るし、金融機関の倒産が懸念されるような状況に至れば、過去と同じように公的資金の投入や合従連衡の促進によって救済することになると思う。

――経営基盤の弱い地域金融機関の経営状態が傾く恐れはあると考えますか?

コロナショックでダメージを受けているのは、旅館やホテル、観光業など、地場の中小・零細企業が多い。そういった企業が倒産した場合は、付き合いが濃い地銀や信金・信組など地域金融機関の不良債権が増えて経営に悪影響が及ぶ可能性はある。一方で、メガバンクもアメリカや中国など海外でもビジネス展開をしており、そちらのダメージが大きければ経営が厳しくなる可能性もある。

――コロナショックが物件の家賃にまで影響を及ぼす可能性は?

コロナショックが長引けば所得も減るし、失業も増えていく。今まで5万円の家賃を払っていた人が、3万円の住まいに変えるといった行動もあり得るので、空室率が上がる、家賃が下がる、不動産価格が下がるという負のスパイラルが起きる可能性が出てくる。ただ、今すぐにそうなるわけではないし、どこかで下支えされることになると考えている。