世界的な景気後退入りはもはや確実なものとなっている。「新型コロナウイルス」による影響が拡大する中、この先、世界経済や日本経済、そして不動産市況はどのように動くのか。

リーマンショックを経験した不動産投資家ら7人に取材し、今後の見通し、そして現在の投資戦略を聞いた。(取材日:3月18~26日)

「2~3年かけて3割下落」

アパート8棟を所有しているという東京都の不動産投資家Kさんは、現在の状況を「リーマンショック時の雰囲気に似ている」と感じている。Kさんが不動産投資を始めたのはリーマンショック直前の2007、8年ごろ。2棟の物件を購入した少し後に、不況の波がやってきたのだという。

「私が購入したのは6000万円と4000万円のアパートでしたが、リーマンショック後には同じようなスペックの物件が、3割ほど値下がりしていました。その後買い増ししようと思っても融資が全然下りずに、悔しい思いをしました」

当然、金融危機であったリーマンショックと今の状況は異なるとしつつも、Kさんは今後2~3年かけて、リーマンショック当時と同様に、物件価格はゆっくり3割程度下がると予想。Kさん自身はコロナショック直前に2件の買い付けを入れており、1件は3月末決済で話がついているため、「もうちょっと待っていればよかった」と苦笑いも見せる。

そのため、「現在は静観すべき」時期だと話す。「当然、そのタイミングが来たと自分が判断すれば買っていきたいと思いますが、今は所有物件のバリューアップや修繕をしながら、市況の様子見です」。リーマンショック時の苦い思い出から、「金融機関の担当者ときちっと連絡はとって、つながるようにはしています」といい、さらには「2~3年後に備えて、手元の資金を厚くしたい」と語る。

入居者への影響を懸念、対応はどうする

今後の買い場への意欲も見せる一方で、Kさんは所有物件の運営面で不安も抱く。Kさんの物件では、現在、サービス業に従事しているという入居者の1人から「家賃の支払いが厳しい」という相談の連絡があったといい、「ほかにも飲食店で働いている方などが入居者の中にいるので、少し懸念はしています」と明かす。

同様に、大阪府在住、年間家賃収入1200万円超という不動産投資歴15年のかーとさんは、「今回の景気悪化では、株などに関係のない人の被害も甚大になりそうで心配をしています」と吐露。「入居者の中には金銭的体力のない人たちもいますし、そういう方々から『家賃が払えない』という相談が来るのをドキドキしながら待っている状態です。今のところ相談はありませんが、ここから数カ月、ちょっとずつキツい状況になっていくと思います」

もし入居者からこうした相談があった場合、一時的な滞納であれば基本的には1カ月分の家賃を分割し、12回で支払ってもらうように対応するつもりだという。「大家業も慈善事業ではないですから、万が一回復が見込めないのであれば、もう少し安い部屋を探そう、という方向の話になるとは思います。ですが、一生懸命やっている入居者に、悲しい思いをしてほしくない。基本的には彼らの話を聞いて対応したいと思っています」

だが、かーとさんが最も懸念しているのは、こうした入居者が増えることによって退去が相次ぎ、運営が危うくなる大家が続出することだという。

「不景気で、今まで通りの家賃を支払える人が少なくなることもあり得ます。例えば今まで6万円で借りてくれていた部屋が5万円でしか貸せなくなれば、そろばんをはじき直す必要があります。フルローン、あるいはそれに近い額の融資を引いていたら、入居率や家賃の変化で返済がキツくなる大家は出てくるでしょう」

競売物件は増加か

20年以上株式投資も行っているかーとさんは、現在の経済情勢を「給料が上がっていないという話を大勢から聞いていましたし、非正規や契約社員が増えていることもあり、もともと一昨年くらいから国内の景気は落ち始めていると感じていました。それが、このコロナショックで表に出てきたという印象です」と語る。

普段チェックする大阪府の物件では、価格が若干下がり始めていると感じている。反面、リーマンショック時よりサラリーマン投資家をはじめプレイヤーが増えていることもあり、「急落するかは不明」だという。

そのような中で、かーとさんも現在は静観の構えだ。「今はなるだけ、よっぽどの物件が出ない限りは買わないでおこうと思っています。上がってくる家賃収入を貯めて、何かあった時に備えたり、買いのチャンスが来た時に現金を突っ込める状態にしたりしておくべきという考えです」

また、住宅ローンが支払えなくなることによって、多数の実需物件が競売や任意売却に流れるとも推測。「今年は競売物件が増えると踏んでいます」という。

「今までは不動産バブル」、適正への下落と予想

株式投資歴30年、不動産投資歴も20年を超えるという投資家の原澤さんは、「厳しい状況だとは思います。こうした不況は十数年に1度は必ず起きていますから、慌てふためくことはありません。ただ、今回のようにウイルスの影響というのは記憶になく、多くの人が対応策にも苦労しています。(この影響が)長引けば長引くほど不況が広がり、企業にとっては大きなダメージでしょう」と話す。

ワクチンの開発などによって景気は一定の落ち着きを見せると推測しているものの、「今回のコロナは、あくまで景気低迷の1つのきっかけだったような気がしています。そもそも不況の入口に立っていたのが、今回の件を機に表面化してしまったのではないでしょうか」とも。東京五輪延期なども絡み、「年内の景気回復は難しい」というのが原澤さんの予想だ。

自身の実感としては、不動産価格も徐々に下がってきているという。「特に、この先実需物件は値下がりすると思っています。不景気が長引けば購入意欲も衰える。取引件数が減れば、値が下がる。こうした実需の値下がりに収益物件も引っ張られて下がると見ています」。一方で、「今までが少し不動産バブルのようになっていた」という原澤さんは、「適正な水準に修正される、という意味で(価格が)下がっていくのではないでしょうか」という。金融不安を発端としたリーマンショックと今回の状況は異なるため、急激な値下がりも期待していないそうだ。

原澤さんは、「不動産にしても、株にしても、後から『あの時買っておけば…』と思うもの。ですが、実際その時にはなかなか買えません。今は落ち着いて、買える準備だけはしておきたいと考えています」と話す。

そのため、取引のある金融機関とのコンタクトを密にし、金融機関が今後どのような動きをするのか、融資に対するスタンスなどの情報収集に動いている。

「チャンスは逃したくないという気持ちの一方で、冷静に、客観的に判断できるようにしたいと思います。『今が値下がりだ、チャンスだ』と慌てるのが一番後悔を生むパターンですから、落ち着くのが一番だと自分に言い聞かせています。一番安く買って、一番高く売るというのは、神様ではありませんから不可能です。自分の思ったよりも、良い物件をちょっとでも安く買えれば幸運ですから、そのために今こそいろいろ勉強したり、情報収集をしたりすべきだと考えています」(原澤さん)