撤退か、継続か―。民泊オーナーが岐路に立たされている。

観光庁が3月31日に発表した「宿泊旅行統計調査」(速報値)によると、今年2月に日本のホテル・旅館などに宿泊した外国人の延べ人数は、前年同月比でマイナス40.4%の492万人。新型コロナウイルスの感染が拡大した3月はさらなる落ち込みも予想される。

収益をインバウンド需要(外国人旅行客)に頼るケースが多い民泊や簡易宿所はまさにコロナショックの直撃を受けた格好で、事業の撤退に追い込まれるケースも目立ってきている。オーナーはこの窮地をどう切り抜けようとしているのか。複数の投資家と事業者に取材した。

「稼働率ゼロ」の衝撃

「いま、この場所で旅館や民泊で稼ぐのは不可能でしょうね」

こう話すのは、昨年の11月から浅草エリアで民泊の運営をスタートさせた会社員の田中さん(仮名)。今年の1月まで稼働率9割を誇っていた民泊物件のオーナーだ。

田中さんは昨年、浅草駅と周辺の2駅からいずれも徒歩5分以内という好立地に、4階建て築40年の鉄骨造1棟を9000万円で購入。4階と3階はそれぞれ約55平方メートルの1フロアとなっており、4階は自宅として使用、昨年11月からは3階を民泊として運用している。間取りは1LDK、布団とベッドを併用して6名前後が宿泊できる広さだ。1階、2階には、田中さんが購入する以前から現在まで、物販系の会社の事務所がテナントとして入居している。

田中さんが民泊として運用している1LDKの室内。リビングに2人用のベッド、隣接する和室に4人分の布団が準備されている。クロスなどの内装はかなりきれいだ(取材・撮影=3月24日)

「賃貸併用住宅を探していたところに、インターネットのポータルサイトでこの物件を見つけました。住居としては4階の1フロアだけで十分だったので3階をどう使うかいろいろと考えたのですが、立地もよいので民泊を選んだという感じです」(田中さん)

昨年の7月に、ほぼ同じ間取りの4階自宅と合わせて大がかりなリフォーム工事を実施。トイレや浴室などの水回りも新設するなど、約1100万円の費用をかけた。

この部屋の宿泊料は通常、1万円台半ばから3万円程度。浅草という土地柄もあり、利用客のほぼ全員が外国人旅行客だ。昨年11月のオープンからすぐに予約が入り始め、予約サイト「Airbnb」のスーパーホストにも認定。稼働率は9割を超え、1月の売り上げは30万円ほどに達していた。

「浅草は民泊やホテルの超激戦区。民泊サイトには新しい部屋が定期的に増えているし、建設予定地の半分以上がホテルです。それでも稼働率が落ちないのは、宿泊施設が増える以上のペースで世界中からゲストが来ていたということでしょう」(田中さん)

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