新型コロナウイルスが、全世界で猛威を振るっています。アメリカでは緊急事態宣言が出され、都市封鎖(ロックダウン)がなされたエリアもあります。

アメリカ・カリフォルニアに移住し、戸建て不動産投資を続ける石原博光さんに、現在のアメリカの生活の様子、そして不動産への影響を緊急取材しました。(取材日=3月30日)

外出禁止令での生活は?

―現在、アメリカ・カリフォルニア州の状態はどうなっていますか?

カリフォルニア州では、3月19日に外出禁止令が出ました。「禁止」と言っても、実質的には「外出の制限」です。病院に行くことや薬局を訪れることは可能ですし、生鮮食料品を扱うスーパーやホームセンターも開いているので、買い物も可能です。一方、レストラン内で食事をすることはできません。開いているのはテイクアウトの店だけですし、例えばスーパー内にあるスターバックスは、企業のポリシーで営業を取りやめています。

反面、運動するために外出することは許可されています。僕も週に6回は家の近くにある公園で走っています。これまではジムで運動していたんですが、ジムが閉まっているので…。

―運動のための外出は可能なんですね

はい。ただ、例えば欧州ではアジア人差別が激しいという話も聞いているので、こちらでもちょっと気を付けてはいます。人とすれ違う時には、大げさすぎるほど遠回りをして、相手に「気を使っています」と伝わるように距離をとっています。

先日、僕の子供が公園を散歩しているとき、少し咳をしてしまったんです。すると、少し離れたところにいた若い2人組の方にかなりにらまれてしまい、危害を加えられるかもしれない、というくらい怖い状況でした。

―買い物などは通常通りできるのでしょうか?

アメリカ全土で緊急事態宣言がなされたあたり(3月13日)で、最初に水や牛乳、卵、トイレットペーパーやキッチンペーパー、サニタイザー(除菌・消毒用グッズ)が店から消えました。外出禁止令が出た翌日には、スーパーの肉があっという間に売り切れました。

しばらくの間は、スーパーの開店する数時間前から行列ができ、開店と同時に買い物をするという状態が続いたようです。店側は、開店後1時間は高齢者を優先したり、個数制限を設けたりなどの対応をとっていました。

外出禁止令の出された直後のスーパーでは、棚の商品がほとんど消えた

―外出禁止令が出てから日が経ちましたが、今もその状況は続いていますか?

先日スーパーに行ったところ、だいぶ商品棚に物が並んでいました。まだ消毒用アルコールやサニタイザーは品薄ですが、それ以外のものはほとんどが手に入る状況です。100%の復旧とまではいきませんが、7~8割くらいは回復しているという印象です。

―外出禁止令に違反した場合、どのような措置がとられるんでしょうか?

罰金などが科せられます。実際、ロサンゼルスの友人から聞いた話では、公園で友達同士で話していたところ、1人400ドル(約4万3000円)の罰金を取られたそうです。ただ、この措置は緩い方かもしれませんね。逮捕されたり、もっと高額な罰金を科せられたりというニュースも見ますし、僕の住むベーカーズフィールドでは、公園で友人数人が集まっておしゃべりしている様子もまだまだ見受けられます。

自宅近くの公園で運動する石原さんの後ろには、距離をとりながらおしゃべりに興じる女性グループが

―不便に感じることなどはありますか?

生活に必要なものに困ることはありません。通販で物を買うことはできますし、もちろんそれを自宅まで届けてもらえます。郵便局も開いていますし、ガソリンも売っています。野菜やフルーツなどは時間を見計らって、お客さんが少ない時に買い物に出る、というような生活です。基本的に自宅であっても友人たちとの交流を避けるように言われていますので、友人家族の3歳の男の子の誕生会では、お友達たちが車の窓から、次々と庭先にプレゼントを投げ入れていました。男の子は無邪気に大喜びしていましたが、複雑な心境ですよね。

もちろん、将来の生活に不安を抱えている、その不安に押しつぶされそうという方もたくさんいるはずです。

―諸外国では、握手などを自粛しているという報道も見ました

そうですね。例えば管理会社の担当者と会う時なんかは、通常であれば会って握手をしていました。それが、2月あたりから腕と腕をぶつけ合うあいさつになり、国が緊急事態宣言を出してからはそういった接触はしませんし、対面で会うこと自体をみんな避けている状態です。

不動産業は「エッセンシャル」、物件売買はストップ

―石原さんは米国で不動産仲介業もなさっていますが、不動産業への影響はいかがでしょうか?

「エッセンシャルビジネス」、つまり生活に必須な仕事は行って良いとされており、このうちの1つに不動産業はカウントされています。なので、不動産業は営業して良いことになっています。

先日、米国に物件を所有する日本の不動産投資家の方が「管理会社を変更したい」とのことで、そのお手伝いをさせていただきました。この状況下ですから心配もあったのですが、結局は管理会社の引継ぎもまったく問題がなく、また、退去した部屋のクリーニングもきちんと手配してもらえましたね。清掃が終わる前に入居希望者も現れ、家賃を少し上げることにも成功したようです。

―賃貸仲介業への影響は少ないと言うことでしょうか?

そうですね。テキサスで賃貸仲介に携わる友人にも話を聞いてみましたが、現時点では賃貸市場で特に問題はないとのことでした。

一方で、売買仲介に関してはどこもストップしているような状態です。やり取りはメールでも完結できますし、理論上売買することは可能なのですが、物件を現地に見に行くことがためらわれたり、また、この先物件価格が上がるのか、下がるのか、様子見したりということで、ほとんど動きがありません。住宅ローンの金利が下がったことと、公務員の利点を生かして数日前に新築を契約した友人の例もあるのですが、とはいえ緊急事態の今、ほとんどの方は家を売ったり買ったりというマインドではないんでしょう。

―今後、アメリカの物件価格はどうなると思いますか?

正直に言うと、わかりません。過去の経験からすると、不動産の場合は時間をかけてゆっくり下がっていく印象があります。今回もそういう影響は避けられないのかな、と考える一方で、金融機関に貸し出すお金がないために経済が収縮しているというわけではない。心配とともに注視している状態です。

―失業保険申請が増えているという報道も目にしましたが、入居者への影響はありますか

確かに、失業保険申請は増えています。レイオフ(一時解雇)が大量に行われているからです。通常、レイオフされるとカリフォルニア州では1週間後から失業手当がもらえるのですが、今は緊急事態ということで、レイオフ翌日から手当を受け取ることができるようになりました。最大約6カ月半、手当を受け取ることができます。手当をもらっている人の中には、「わざわざ外で仕事をしてコロナウイルスにかかりたくない」と考えている人も多いようです。

―市民への経済支援の状況はどうでしょうか?

3月27日に過去最大の2兆ドル(約216兆円)規模の景気刺激法案が可決し、市民への直接給付が可能になりました。「Economic Impact Payment」といい、前年度の所得に応じて最大で納税者1人当たり1200ドル、子供にも500ドルが給付されます。

国税庁(IRS)が自動的に計算して小切手を郵送してくれるそうで、助かる家庭も多いと思いますね。

―家賃を払えない人も多くなるのではないでしょうか

入居者の方のお支払いが厳しくなって、家賃をいただけない可能性は大いにあると思っています。平常時であれば、家賃を支払えない場合、退去していただくために立ち退き訴訟(イビクション訴訟)を行うのですが、暫定的に5月31日までこの訴訟は禁止となっています。この状況で家を追い出してしまったらパニックに陥ってしまいますからね。終息宣言をした後、最長6カ月以内に、支払っていない家賃を払えば良いということです。

ただ、これで割を食うのは大家さんですよね。融資を引いている場合は返済もしなくてはなりません。この支払い猶予をどうするか、金融機関として対応しなくてはいけない、という議論もいま起こりつつあります。

ちなみに、僕の自宅は住宅ローンを引いて購入しました。ローン会社からは、「支払いが困難な場合は相談を受け付ける」というアナウンスが来ています。住宅ローンだけではなく、クレジットカード会社からも同様の連絡が来ていますし、水道光熱費についても「支払いができなくても、私たちはインフラを止めることはしません」ということだそうです。

ただ、もちろん支払いがチャラになるわけではないですから、払える人は払ってくださいね、とも書いてありました。支払い猶予だからといってほかのことにお金を使ってしまって、後で破産する人も出てくるかもという予感がしています。

―事業者への支援融資の状況はどうでしょうか?

米国中小企業庁(SBA)は、一時的なつなぎ融資として、金利3.75%で最大2万5000ドル(約270万円)や、本格的な支援の融資として金利4%で最大200万ドル(約2億1600万円)、そして雇用維持のために、平均月額給与の250%までを金利0.5%、また期間2年で最大1000万ドル(約10億6000万円)など用意しています。さらに上限1万ドル(約108万円)まで、承認後に最短3日間で入金される緊急貸付もあります。これらは基本的に従業員500人以下のスモールビジネスに向けたものです。

―商業系テナントへの影響が甚大のようですね

厳しい状況だと思います。僕の知人で、小さな商業店舗が集まったミニモールの売買を取り扱っている人がいるのですが、その売買もすべてストップしてしまったそうです(取引自体は可能)。売り出し価格自体は下がっていないそうですが、今後は大きく指値が通せるようになるのではないかと言っていました。

―今後は価格が下がりそうなんですね

商業系はこういう時に、大きく影響を受けますね。僕個人としては、アメリカでは現金で戸建て投資をしているので、もっとも影響が少ない部類でしょう。レジデンスは、こういったときにも手堅いものだと思いますし、そう信じたいです。

ただ、先ほども言った通り、家賃が半減する、あるいはまったくもらえなくなるという可能性もあります。アメリカは生活費が高いですし、皆さん同じだとは思いますが、不安はありますね。

 

(楽待新聞編集部)