新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や個人消費の落ち込みによって、社会や経済への影響が深刻化している。感染者の増加に歯止めがかからず、いまだ終息の兆しが見えない中で、各業界で先行き不透明感が強まっている状態だ。

そんな中、不動産投資家にとって大きな関心事の1つが、コロナの問題が投資用不動産の「融資」にどのような影響を与えるかという点ではないだろうか。近年の「不動産バブル」はスルガ銀行の不正融資問題などによって過熱状態を脱した印象があるものの、マイナス金利下で投資用不動産への融資が増えたことが価格の高騰を招いていた面があった。景気低迷で金融機関側がリスク回避の姿勢に走れば、リーマンショック後のように価格が下落局面に入る可能性も出てくる。

日本列島が「コロナショック」に揺れる今、不動産融資の現場では何が起こっているのか? そして、不動産投資家はどのようなアプローチで融資獲得を目指すべきなのか? コロナの問題が不動産融資に与える影響について、3回にわたって紹介していく。

まず今回は、全国の不動産投資家たちの生の声を基に、金融機関の姿勢の変化について探っていきたい。

「出します」と言われた翌日に…

「金消契約の日程が決まった翌日、株価がズドーンと落ちた瞬間に融資が白紙になって…笑うしかありませんでした」

広島県の会社員Tさん(50代男性)は3月初め、自身5戸目となる1600万円の中古区分マンションを法人で購入しようと、以前から取引のある信託銀行に融資を打診した。3月12日に不動産会社経由で「金利2.2%・33年で内諾が出ました」と連絡を受け、10日後に金消契約の日程を組んだ。

しかし、翌13日。日経平均株価が前日比1128円安の1万7431円と3年9カ月ぶりの下げ幅を記録した日の夜、不動産会社から「今回は完全にストップです」と連絡があった。

「前日まで『出します』と言っていて、金消契約の日程まで決めたのに、いきなりゼロ回答というのは正直びっくりしました。理由を聞いても『総合的な判断で…』と言葉を濁して、はっきり答えてもらえない。でも、タイミング的には1つしか考えられないですよね」

今まで断られたことがなかったのに

Tさんと同じように、取引のある金融機関の姿勢の変化に驚いている投資家は少なくない。アパート3棟と戸建1戸を所有する岡山県の会社員Sさんも「今まではメガバンク1行以外、融資申し込みを断られたことがなかったんです。ここ2、3年はどこもいい感じで出してもらっていたんですが、今回銀行回りをしてみて、こんなに厳しいのか…と感じました」と語る。

「1年半ほど前、紹介経由である地銀に5000万円ぐらいのアパートを持ち込んだら、面談翌日に支店長決裁が下りたんです。その後も太陽光の融資を受けたりして、すごくいい関係だった。それが3月末に行ってみたら、個人でも法人でも全くダメだと。一緒にいった知人も同じ対応で、もうサラリーマンに出す気はないような印象を受けました」

その後も複数行を回ったが、よい反応は得られなかった。「アパート3棟と太陽光4基の融資を受けている地銀も、完全に無理というような感じで。仕方がないので飛び込みで別の地銀に行ったら相手にもされず、5分もしないうちにサヨナラと言われました。さすがにへこみましたね」

なぜ、融資姿勢が変化したのか

金融機関はなぜ、融資引き締めに動いているのだろうか? 当然、景気の先行きが不透明な状況の中で、担保評価の低下や家賃下落、空室増、滞納の発生など、金融機関の懸念材料は増えている。そういったリスクを織り込んで融資姿勢が慎重になっているという面もあるが、もう1つ大きな理由がある。

それは、政府が打ち出したコロナ対策の緊急融資などの申し込みが殺到し、どの金融機関も投資用不動産への融資に手が回らなくなっているということだ。

「僕は本当に滑り込みセーフで融資を引けましたが、とにかく緊急融資優先で、他の案件に対応している余裕がないような印象でした」

神奈川県の会社員Mさんは県内の信金から直近で2件、土地から新築の案件で融資を受けた。合計融資額は約2億2000万円で、融資割合は75%ほど。「どちらも正式な融資承認は3月に入ってから、コロナの問題が大きくなる前で本当にギリギリでした。実際に知人は同じような2億程度の新築案件を私より後に持ち込んだんですが、当初の内容より融資額が引き下げられて揉めたみたいなので、方針が変わる直前だったのかなと思っています」

その信金の担当者は「区からもコロナ関係の緊急融資を重点的にやってほしいと要請があって、3月中旬ぐらいからは地元の飲食店やホテルからも急に相談が増えているので、他に手が回らなくなっている」と話していたという。「あとは新築だと、トイレなど水回りの供給が止まってしまって信金内で問題になっている案件もあるようで、『不動産への影響がどこまであるか見極められない』と困っているみたいでしたね」

Mさんは「大家仲間に聞いても、融資流れの案件がかなり増えているような印象です」と語る。「南関東の地銀2行なども年収や物件の評価、エリアなど全体的に条件が厳しくなっているようで、内諾が出ていた案件が本部で却下されるケースもあったとのこと。ちなみに私が3月の決済で会った司法書士の方も『直近で3件も内諾が流れた案件が出て、仕事がなくなった』とぼやいていました。この状況なら、今は手元資金を厚くする時期なのかな、と考えています」

「ほかの案件をやっている余裕はない」

このように投資用不動産の融資に手が回らない状況は、どこの金融機関でも起こりうるのだろうか。

地銀に長年勤める現役銀行員で、投資家でもあるFP大家さんは「こういった危機のタイミングでは、各金融機関は緊急融資の貸出高や返済猶予などの実績を金融庁にけっこうタイムリーに上げていかないといけないんです。行員の数は変わらないので、緊急融資に注力すると他の案件の審査が後回しになる部分はどうしても出てくる。特に投資用不動産は担保評価や収支シミュレーション、賃貸需要の検証などに審査に時間がかかりますから」と語る。

某銀行で支店長や本店審査部門の中核を担った経験のある仮面銀行マンKさんも「リーマンショックを経験してよくわかっているんですが、この3カ月ぐらいはどこも全力でコロナ対策の緊急融資に走るはずなので、ほかの案件をやっている余裕はないと思います」という見方。「『来月の支払いができない』というような相談が殺到するので、銀行としてはとにかく必死で倒産を食い止めることに心血を注ぐ。それをしないと金融庁から怒られてしまいますしね」

「二つ返事」の信金が3カ月待ち

実際に、コロナの問題が大きくなるにつれて審査期間の長期化を実感している投資家も多いようだ。一棟アパート6棟と戸建3戸を所有する東京都の会社員Aさん(50代男性)もその1人。

「借り換えを含めて3棟取引実績のある都内の信金なんですが、預金をかなり入れていることもあって、これまでは申し込み翌日にOKが出るなど『本当に審査してるのかな』というぐらい早かったんです。それが、今回はとにかく回答が遅い。1月下旬に築30年・2000万円ほどの中古アパートを持ち込んだんですが、いまだに回答がなく、『4月いっぱいはかかりそう』と言われています」

条件面では相当譲歩しているというAさん。「いつもはだいたいフルローンか頭金1~2割、融資期間25年ぐらいで組んでいるところ、今回は『10年でもいいし、半額融資でも大丈夫』と言っているのに、全然結論が出ない。理由を尋ねても『社内的に…』という曖昧な回答なので、本当にコロナの影響かどうかは分からないんですが…」

別の地銀でも、短期間で融資姿勢の急変を感じる経験があった。

「東海地方の地銀なんですが、1月下旬に本社にいる担当の方が『ウチ、しばらくやめてたんですが、また始めますよ』とわざわざ連絡してきたんです。でも、『あらためて連絡しますね』と言ってきたきり全く音沙汰なし。そもそもこの地銀は口座から金を動かすと必ず『不動産ですか?』と毎回電話がきていたんですが、今回は3月に現金戸建の決済と塗装工事で900万円ほどの送出金があったのに一切連絡がない。方針がガラッと変わってしまったのかなと思いました」