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新型コロナウイルス感染防止のため、臨時休業をする企業が増えてきている。そんな状況下でも、休業中の労働者の生活を守るため、事業主側の都合により休業する場合、事業主は労働者に対し休業手当(賃金の最低6割以上)を支払うよう、労働基準法第26条で定められている。

そこで今回取り上げるのが、厚生労働省が管轄する「雇用調整助成金」制度である。休業手当の一部を国が支給してくれる制度となっているが、長期的な経営見通しをたてていないと、助成金を受け取っても破綻してしまうケースもあるという。

4月7日の緊急事態宣言を受けて休業した場合でも休業手当を支払う義務が発生するのか、いまのところまだはっきりしていない。しかし、事業主だけでなく、さまざまな労働者に住居を提供しているオーナーにも、今後のために知っておいてほしい取り組みだ。社会保険労務士法人ローム代表の牧野剛氏とともに同制度の内容を確認しながら、注意点を解説していく。(4月10日更新)

休業する事業主に支給される「雇用調整助成金」

「雇用調整助成金」制度が創設されたのは1981年(昭和56年)。過去にはリーマンショック、昨年発生した台風19号など、災害時や事業活動が滞るタイミングで主に活用されてきた。制度の目的は労働者の失業防止だ。

例えば、新型コロナウイルス感染防止のため休業を余儀なくされている飲食店の場合、休業すると売上はほぼゼロになるが、従業員には「休業手当」として賃金の最低6割以上を支払わなければならないことが労働基準法で定められている。

ところが、売上が減少している店側は休業手当を支払うことができず、労働者の解雇に踏み切るケースも想定される。そうした事態を防ぐため、事業主が雇用を維持できるよう、休業手当を国が一部負担する制度が「雇用調整助成金」である。

この「雇用調整助成金」について、インターネット上などでは「月給の9割が国から支給される」と勘違いしている人も見られるが、正しくは「休業手当」に対する助成金なので、間違わないようにしたい。

具体的な支給金額をイメージするため、月に30万円の給料を受け取っている人を例に簡単だが計算してみる。

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