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新型コロナウイルスの影響で経済的に困窮し、家賃が支払えない入居者が増えている。

一方、オーナーによっては家賃が唯一の収入であるケースや、家賃を銀行への返済に充てているケースも少なくない。先日編集部が行ったアンケート調査でも、2割のオーナーが「家賃支払い延期や減額には応じたくない」と回答した。

こうした状況の中、家賃相当額(上限あり)を自治体が支給する「住居確保給付金」という制度に注目が集まっている。入居者側が申請を行い、一定の要件を満たせば、家賃が直接、貸主(大家)の口座に振り込まれる仕組みだ。コロナウイルスの感染拡大を受け、対象者の拡大や求職要件の撤廃といった拡充がなされている。

本記事ではこの「住居確保給付金」について、その概要や拡充となった利用要件などを紹介する。家賃の支払いについて相談を受けたオーナーも、入居者にこの制度を知ってもらうことで、急場をしのぐことができるかもしれない。

(4月30日 追記)

「住居確保給付金」とはどんな制度か

住居確保給付金は、一言で言うと「期限付きの家賃代理納付制度」だ。

離職や経済的な困窮を理由に住まいを失ってしまった人、あるいは仕事が休業になるなどして家賃を支払う目処が立たず、これから住まいを失うおそれのある人が対象。

申請は入居者が行い、一定の要件を満たしていれば、原則として3カ月(最大9カ月)の間、家賃がオーナーの口座に直接振り込まれる。パートやアルバイト、フリーランスで働く人も対象だ。

この給付金は、2015年に施行された「生活困窮者自立支援制度」に基づく。元となるこちらの制度は、生活困窮者向けに相談窓口を設け、家計の相談や就労の支援などを幅広く行うというもの。そのうちの1つに「住居確保給付金」も含まれている。過去に働いた実績がある人、そしてこれから働こうとしている人に向けて支援を行うことで、生活保護の受給に至らないようにするセーフティネットとしての効果が期待されている。

給付の条件が一部緩和に

ではさっそく、住居確保給付金を受けるための条件について見ていこう。まずは以下の図を確認してほしい。

主な要件は、対象者(入居者)の収入や資産状況、就労の有無など。ただし新型コロナウイルスの影響を考慮し、4月1日以降、いくつかの要件が緩和された。また4月20日の申請分以降については、さらなる要件の緩和が行われている。以下で詳しく見ていこう。

<1.離職者以外も対象に(4月20日実施済み)>

4月20日以降申請分に行われる緩和として特に注目したいのは、図中「対象者」の項目の「離職後2年以内」という部分だ。4月20日以降の申請分では、「離職後2年以内」の人だけでなく、「当該個人の都合や責に帰すべき理由によらないで、給与等が減少」した人も支給対象に含められる。具体的には、勤めていた会社の休業や、子どもの休校などで仕事ができず、家賃支払いの目処が立たない人にも給付されるようになる。

<2.ハローワークでの求職活動が不要に(4月30日実施済み)>

加藤厚生労働大臣は4月24日に会見を開き、これまで給付の条件に含まれていた求職活動要件を不要とすると発表。給付対象がさらに拡充されることとなった。これまで、雇用契約によらず働いているフリーランスや自営業の人にとってこの要件がネックとなっていたが、この改正によりフリーランスや自営業の人も給付の対象となる。

<3.「65歳未満」の年齢要件が撤廃(4月1日実施済み)>

もともとこの制度では「申請日に65歳未満であること」が要件となっていたが、これは4月1日支給決定分以降は撤廃された。

<4.来月から収入が減る人も対象に(4月1日実施済み)>

給付金を受け取るための収入要件として、従来は「申請月の世帯収入合計額が、基準額+家賃額以下であること」というものがあり、すでに収入が減っている人のみが対象となっていた。

しかし4月1日以降はこれが緩和され、「申請月の翌月から収入額が下回ると証明できる資料」があれば給付対象となる。なお、この「証明できる資料」が具体的に何を指すのかについて厚生労働省に問い合わせたところ「来月からの休業を通知する会社からのメールやシフト表などがそれに当たる」という回答だった。LINEなどでやりとりした文面でもOKだという。

<4.就職活動要件が緩和(4月1日実施済み)>

従来は、ハローワークでの月2回以上の職業相談、自治体での月4回以上の面接支援等を行うことが要件となっていたが、各自治体が必要と認めた場合、来庁が困難な場合は電話等での対応が可能に。また、自治体の判断で回数の減免も可能になるとしている。

一方、注意が必要なのは、先に示した図の「対象者」の項目のうち「国の雇用施策による給付等を受けていないこと」の部分。ここで言う「国の雇用施策による給付等」とは、ハローワークに通う求職者が受け取る「職業訓練受講給付金」のことを指す。また、自治体によっては独自に家賃に関する支援策を実施しているが、そうした制度を利用している人も、この「住居確保給付金」の対象とはならない。

給付までは「2週間」が目安

次に、申請のフローを見てみよう。

申請に当たって必要な書類は、身分証明書のほか、賃貸借契約書の写しなど。これを、自治体が直営または委託して運営している窓口である「自立相談支援機関」に提出し、通知を受けた後に給付が行われる。

 

申請後、給付金が支払われるまでの期間について厚生労働省の担当者に問い合わせたところ「自治体によっても異なるが、書類に不備がなければ概ね2週間ほど」だという。

なお、各都道府県の自立相談支援機関の連絡先や所在地についてはこちらの資料を参照してほしい。

実は以前からあった「住居確保給付金」だが、今回初めて知ったという人も多いかもしれない。要件もやや複雑なためか、2018年度の給付実績は約4000件とあまり多いとは言えないようだ。

厚生労働省の担当者は「実際に滞納が発生してからとなると、オーナー側にも負担が大きい。経済状況が苦しそうな方には、すぐにでもこの制度について知らせてほしい」と話す。オーナーにとっても入居者にとっても有用な制度であることは間違いないので、いざというときに活用できるよう、各自治体のWebサイトなども確認しておくとよいだろう。

なお、改正に当たっての変更点や、学生、外国人への給付が可能かどうかなど、厚生労働省がQ&A形式でまとめた資料も公開されているので参考にしてほしい。

(楽待新聞編集部)