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新型コロナウイルスの感染が拡大する中、大手建設会社が工事の一部を中止する動きが出ている。
西松建設は8日、緊急事態宣言の対象地域に所在する作業所を閉所する方針を発表。13日には清水建設も工事の中断を発表するなど、大手ゼネコンの相次ぐ発表が業界を揺るがした。
大手建設会社のこうした動きが今後、中小規模の工務店やリフォーム会社に波及していく可能性も考えられる。物件を新築中の不動産投資家からすると、新築工事が予定通り進むのか心配なところだろう。仮に完成が遅れた場合、工事遅滞による違約金は取れるのだろうか。そして、金融機関へのローン返済はどう対応すればいいのか。実際に新築一棟マンションの完成が延期になった投資家に話を聞いた。
大手ゼネコンが続々「中止」要請
西松建設は8日、緊急事態宣言の対象地域である7都府県で工事中止・現場閉所することを基本方針にすると発表。13日には同じく大手ゼネコンの清水建設が工事中止を発表した。清水建設はコロナウイルスの感染により1人の従業員が亡くなったことも同日に公表したためか、ホームページが一時的に繋がりにくくなるほど注目を集めた。
大手建設会社が軒並み工事を中止するとなれば、工事の下請け会社をはじめ、現場で働く職人への影響も大きい。楽待新聞編集部が清水建設に「下請け会社、現場の職人への補償はどうするのか」と尋ねたところ、「具体的な話は何も決まっていない。これから各企業と話し合っていきたい」との回答だった。
緊急事態宣言を受けて、上記2社に加えて東急建設も「工事中止」を発表している。大手ゼネコンが動いたことで、他の大手だけでなく中小企業にも影響を及ぼすのかが投資家にとって気になるところだろう。
既に工事が遅れている個人投資家も
今回の大手建設会社の動きと直接は関係ないが、新型コロナウイルスの影響で新築物件の工事に遅延が発生している個人投資家もいる。
楽待コラムニストの溝口晴康さんは、2月末に新築マンションが完成する予定だったが、完成予定日が伸びに伸び、当初の予定日から約2カ月遅れの完成予定となってしまった。依頼していたのは従業員数10人未満の小規模な工務店で、着工の時点で書類の取り交わしに不備があるなどスケジュール管理に不安な点があったが、新型コロナウイルスの影響で、中国からトイレが納品されず完成の延期が決定的となった。
「もともと遅延した理由は、工務店のスケジュール管理が不足している部分があったんですが、そんな中でコロナの問題が起こり、トイレが納品できないなどの直接的な影響もあって完成が延期になった。工務店に理由を聞くと、『職人さんがあまり現場に行きたくない』という回答でした。自分も外出を控えている身なので、職人さんが行きたくない気持ちもわからなくはないですが…」
また、4月10日に予定していた完成日に合わせ、この物件に入居を予定していた人にも影響が出た。
「部屋の準備ができていないためキャンセルせざるを得ない、という人もいました。また、既に引っ越しの手配をしていた方もいて、まだ入居できないのでトランクルームを手配して荷物を入れてもらい、物件が完成するまでの宿はホテルを手配して宿泊してもらうようにしました。もともと4月15日を予定していた物件の完成が21日までさらに延びたので、追加で宿を取ったばかりです」
完成が延期になったことで生じたトランクルーム代やホテル代は、誰が負担するのだろうか。
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全39話
2020年、世界中を大混乱に陥れている新型コロナウイルス。経済への影響も甚大で、リーマンショック級の災禍に見舞われるとの見方も出ています。そうした中、不動産への影響はどうなのか? 編集部の取材記事をお届けします。
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