
PHOTO:Ababsolutum/iStock
新型コロナウイルスの感染拡大が勢いを増す中、保有物件で感染が広がることを懸念する不動産投資家も多いのではないだろうか。実際、過去にはマンション内でウイルスの集団感染が発生した事例もある。そういった「マンションクラスター」のような事態が起これば、賃貸経営に支障をきたしかねない。
保有物件内での感染拡大を防ぐために、オーナーとしてできることはあるのだろうか。不動産コンサルティングを行う株式会社さくら事務所で、マンション管理コンサルタントを務める土屋輝之氏に聞いた。
過去のマンション内感染はこうして起きた
2003年、香港の高層住宅街「アモイ・ガーデンズ」でSARS(重症急性呼吸器症候群)の集団感染が発生した。香港衛生福利・食物局の発表によると、感染者は300人を超え、40人以上が死亡した。

2003年、SARSの集団感染が発生した香港の高層住宅街「アモイ・ガーデンズ」の写真(2017年撮影、PHOTO:ウィキメディアコモンズ)
集団感染の原因について、土屋氏は「排水管の不具合にある」と話す。クラスターが発生したアモイ・ガーデンズのマンションは、各階が垂直方向に走る排水管で繋がっており、その排水管に異常があったことで感染が拡大したのである。

排水トラップが正常に機能していれば、排水管に溜まった水が「封」の役割を果たし、下階の臭気やウイルスが上階に侵入するのを防いでくれる(左) 一方、排水トラップの水が蒸発するなどの異常があると、封をすることができないため上階にもウイルスが拡散されてしまう(右)
通常、排水管には「排水トラップ」と呼ばれる仕組みが用意されている。これは、排水管の一部に水を溜めて、下水からの臭気やガスが室内に侵入しないよう封をするものだ。しかし、クラスターが発生したアモイ・ガーデンズのマンションでは「排水トラップの水が切れている」という報告が時々上がっていた。原因は定かではないが、水を流す頻度が少なくなると排水トラップの水が乾燥・蒸発して機能を果たさなくなる恐れがある。アモイ・ガーデンズでも、このような原因で排水トラップの水が切れ、ウイルスが排水管を経由し、下の階から上の階へと拡散されていった可能性が考えられる。
土屋氏によると、日本でも同様の事態が発生することはあり得るという。例えば、入居者が長期間不在の場合や、換気システムが正しく使えていない場合だ。
通常、室内の換気をする際は、部屋から空気を排出した分、給気口から同等量の外気を取り入れる必要がある。しかし、
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