シェアハウス

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新型コロナウイルス感染拡大の影響で、一部の不動産投資家にとっては受難の日々が続いている。入居者の生活苦による滞納の発生や賃料の減額要請、そして外出自粛に伴う申し込みの減少など、賃貸経営に直結する部分でダメージを受けている投資家も多い。

そんな中、一般賃貸と比べて入居者同士の「濃厚接触リスク」が高いシェアハウスの現状はどうなのだろうか。感染を恐れる入居者の退去は増えているのか。そして、感染防止対策として必要なことは何なのか。現場の状況を探った。

管理会社「清掃・ゴミ出しはできません」

「外国人入居者の人たちはマスクもせずバイトで外出しているので、ウイルスが持ち込まれるんじゃないかという不安はあります。シャワーやトイレも共用で使わないといけないし…」

昨年6月から都内のシェアハウスに住む会社員のRさん(24)は不安げな表情でそう語る。共用部にはテーブルやキッチン、テレビ、ソファ、パソコンなどがあり、現在もそこで食事をとっている入居者は多い。「窓を開けて換気し、2メートルの間隔を取るようにはしていますが、『もしこのシェアハウス内で感染者が出たら自分も濃厚接触者になるかも…』という怖さはあります」

都内のシェアハウスで暮らすRさん

家賃は光熱費やWi-Fi代込みで5万円。全11室の入居者の大半は、アジア系の外国人だという。「引っ越し業者やコンビニなどでバイトしている人が多くて、今も普通に外出しているみたいです。みんなマスクはしていません。オーナーさんや管理会社には、入居者にマスクを支給したり、外出を控えるように伝えたりしてほしいと思うんですが…」

以前は週1回清掃が入っていたが、緊急事態宣言後は管理会社の出入りもなくなり、「当面は管理会社で清掃やゴミ出しができないので、入居者で行ってください」という内容の掲示が貼られた。「今は入居者が自分たちで清掃をしていますが、リビングもけっこう汚れが目立つようになってきました。衛生的にも大丈夫かな…という不安はあります」

管理会社の清掃業務がストップし、リビングも汚れが目立つ

交通利便性の問題などから、今のシェアハウスを退去する予定のRさん。

しかし、次の引っ越し先もシェアハウスだという。

「もちろん感染リスクはシェアハウスの方が高いですが、一般のアパートに住むことは考えていません。シェアハウスは初期費用が10万円前後ですが、アパートなら30、40万円ほどかかる。これはすごくもったいない。そんなに払うならもっと他のことに使いたいし、もちろん感染は怖いですが、これからもずっとシェアハウスに住み続けるつもりです」

キャンセルは増えているが…

日本シェアハウス連盟が2019年に公表した「シェアハウス市場調査」によると、全国のシェアハウスは約4800棟・5万6000室。特に東京23区内の世田谷区、杉並区、足立区など、都心部から離れたエリアに全物件の大半が供給されている。

コロナの影響でシェアハウスの入居率には変化が現れているのだろうか。

シェアハウス大手のオークハウス(東京都)によると、管理する約6600室の稼働率は現在約93%。例年の繁忙期の97、98%程度と比較すると落ち込んではいるものの、同社によると「退去数は例年より増えていない」という。

稼働率の低下は、春から来日予定だったアジア人の留学生や社会人のキャンセルの影響が大きい。「入居者の割合はこれまで日本人45%、外国人55%程度だったんですが、外国人のキャンセルの増加で一気に逆転しました。ただ、退去に関しては思ったより影響がない。一般賃貸に移るにもお金がかかるし、行動が制限されているので家にいるしかなく、外国人も本国の入国制限で帰るのも難しい状況なんだと思います」

金銭的に引っ越せない

「例年なら3、4月は5室ぐらい退去が出るんですが、今年は1室だけ。ずっと満室が続いていて、『コロナ退去』というのはないですね」

都内の好立地で全14室のシェアハウスを運営する神奈川県の会社員Sさん(50代男性)はそう語る。入居者は20~30代の女性で、家賃は共益費込みで4万9000円という物件だ。

「家賃設定的に収入面が苦しい入居者の方も多いので、もしシェアハウスから一般のアパートに引っ越すとなれば、敷金・礼金など初期費用の負担が大きい。今は外にもなかなか出られないので、例年より動きが鈍くなっているんだと思います。3月末にコロナと無関係の理由で1室だけ退去があったんですが、1週間たたずに入居がつきました」

Sさんが所有するシェアハウス

今のところ退去には結びついていないものの、コロナの影響で家賃の支払いが困難になる入居者が出てきているのは懸念材料だ。

「夜のお仕事をしている入居者さんがいるんですが、今は出勤できていないのか、家賃が1カ月半遅れています。そういう人にはスマホ決済での分割払いなどにも応じていますし、保証人さんとも密に連絡を取るようにしていますね。あまりニュースなどを見ない人もいるので、給付金など政府の緊急経済対策については逐一LINEグループで周知して、なんとか払ってもらえるようにサポートしています」

入居者のLINEグループで政府の緊急経済対策について紹介するSさん

先行きには不安も

Sさんの場合、懸命に満室を維持しなければならない事情もある。

実はこの物件、2014年にスルガ銀行から金利4.5%で1億3000万円の融資を受けて新築した「かぼちゃの馬車」と同タイプのシェアハウス。2017年末にサブリース賃料の支払いが停止し、14室中12室空きの状態で55万円の返済がのしかかる非常事態となったが、その後、自主管理に切り替えて共用部の改善や精力的な入居募集に取り組み、なんとか満室までこぎつけたという経緯がある。

スルガ銀行との交渉で金利を4.5%から1.0%まで下げ、返済の最終月に支払う金額を増やす「テールヘビー」も実施することで、現在は毎月27万円のCFを生み出している。ただ、コロナの影響で問い合わせは例年の3分の1程度に減っており、今後のシェアハウス運営には不安な点もある。

「今は入居者さんもなんとか頑張って家賃を払ってくれていますが、この状況が長く続いたら立ち行かなくなって破綻する人が出てくるかもしれない。とにかく入居者さん1人1人と向き合って満室を維持し、残債を減らしていけるように頑張ろうと思います」

「交流メリット」と「家賃メリット」

テレビ番組などの影響もあり、ここ10年ほどで人気が高まってきたシェアハウス。入居者は何を魅力に感じてシェアハウスを住まいに選ぶケースが多いのだろうか。

シェアハウスは家具・家電付きで敷金・礼金もないのが一般的で、入居者としては初期費用が抑えられるという利点がある。また共益費の中に光熱費やインターネット代、トイレットペーパー代などが含まれるため、日々の生活費も少なくて済む。

国土交通省が2016年に実施した「シェアハウスに関する市場動向調査」では、シェアハウス入居者の入居動機は「家賃が安いから」が55.3%と最多で、「他の居住者とコミュニケーションが図れるから」の22.4%を大きく上回っている。つまり、現状は「交流メリット」より「家賃メリット」でシェアハウスを選ぶ入居者が多い傾向にあるといえる。

「高価格帯」は問い合わせ半減

「交流メリット」と「家賃メリット」。入居者がそのどちらを目的にしているかという点も、コロナによる入退去に影響を与えているようだ。

コンセプト型集合住宅の企画・運営を手がけるLivmo(東京都)代表の源侑輝氏は「管理物件の入居状況は物件の家賃帯によって完全に二極化している」と語る。

「『安いからシェアハウスに住みたい』という入居者はこういう時期でも関係なくどんどん内見に来ていて、かぼちゃの馬車など5万円以下の物件は入居率95%を超えている。むしろ家賃という固定費を下げたいニーズが高まっていて、ネットカフェで8万円ぐらいのマンスリープランで暮らしている『ネカフェ難民』からの問い合わせもかなり増えています」

逆に、交流目的でシェアハウスを選ぶ層は動きがぴたりと止まっているという。

「家賃6万〜10万円程度の物件は問い合わせが例年の半分ぐらいに激減して、入居率も8割を切っています。このような物件の入居者は家賃の安さというより『シェアハウスが好き』といった理由で選んでいる人たちですが、今はさすがに外出を避けて自粛ムードという感じですね」

これまでターゲットとしていた「交流メリット」の入居者が激減したことで、仕方なく家賃設定を見直さざるを得ないオーナーも出てきている。「以前は8万円ぐらいの設定で常に満室だった物件が、コロナの影響で全く埋まらないといった状況が生まれている。6万円ぐらいまで下げてようやく『家賃メリット』の入居者の目線に乗るという感じで、一部のオーナーさんにとってはかなり苦しい状況になっています」