「キラキラ大家」「共食い大家」という言葉を聞いたことがあるだろうか。

自身の華々しい成功を書籍やSNSでアピールし、初心者をカモにセミナーやコンサルティングで稼ぐ。業者と結託して初心者に物件を売りつけ、紹介料やキックバックを得る。そういった不動産投資家たちを指す不動産業界の俗語だ。

不動産投資の世界には、「不動産コンサルタント」を名乗ってコンサル料で荒稼ぎする投資家や、何も知らずに飛び込んできた初心者を「食い物」にする大家の会が少なからず存在する。「これだけ投資規模を拡大しているのなら」「書籍も出しているのなら」と信頼して相談した初心者が、巧みな手口でハメ込まれてしまうケースは少なくない。

今回はそんな「キラキラ大家」「共食い大家」の被害に遭ったと語る3人の覆面座談会を企画。顔出しなし・完全匿名という条件で、被害の実態について語ってもらった。

もちろん、勉強不足のまま相手の言葉を信じ込み、他人に判断を委ねてしまった被害者にも大きな落ち度がある。ただ、不動産業界に蔓延る「闇」について、「被害者予備軍」ともいえる不動産投資初心者が理解を深めるきっかけになればと思う。

 

Aさん:「洗脳」で消費者金融を10社回らされて…

「ろくに勉強もせず欲の皮だけ突っ張っていた自分が完全に悪いんです。自分にできることは、同じような被害者を増やさないために体験をすべてお話しすることだと思いました」

中国地方在住の会社員Aさん(30代)は3年ほど前、不動産投資への興味を持ち、友人から「ちょうどやっている知り合いがいるから連絡してみたら?」と、不動産投資家のV氏を紹介された。

さっそく連絡を取り、事務所へ会いに行った。V氏は不動産業者と並んで座っていた。

「最初に『コンサル料は月5万円』と説明されました。高いな…と思ったんですが、V氏は『本当は半年で100万円とかなんですけど、知り合いの紹介なので月5万でいいですよ』と。なんだか会った時点で『先生と生徒』みたいな関係になってしまって、『この人に好かれなきゃいい情報もらえないのかな』と思って必死に『はい、はい』と聞いていました」

2回目の面談で、ある物件を紹介された。東海地方の築30年のRCで、価格は5400万円、表面利回りは10%。「今考えると賃貸需要もないような田舎で、赤字にしかならないボロ物件でした。でもV氏に『これからどうにでもなる物件ですよ』と説明を受けて、なるほど…と思い、融資のアテもないまま、よく分からず売買契約書にサインしてしまったんです」

買わなければいけない状況に追い込まれ、金融機関を回ったが、全く物件評価が出なかった。ようやく内諾が下りた銀行も4000万円までしか伸びず、1200万円以上ショートしている状態。困り果ててV氏に相談すると、驚きの言葉が返ってきた。

「足りない分は消費者金融回って借りてこい」

言われた通り、消費者金融を10社回ってカードローンを組んだが、3社で計100万円ほどしか借りられなかった。「それをV氏に報告したら、『嘘をつくな』『親に頼み込んで借りろ』『親戚中回って金引っ張ってこい』と。業者と2人で『みんなあなたのために本気になってるんだ』と詰められて…。どうやって逃げればいいのか、とずっと考えていました」

契約は融資特約付きだったため、Aさんはやむを得ず強硬手段に出た。「ちょうど転職した時期だったんですが、銀行には前の会社名で融資申し込みをしていたんです。だから、通帳を作るときにあえて転職先の新しい会社名を銀行に伝えて、それが虚偽報告ということで融資を受けられなくしました」

それを知ったV氏は激怒した。

「『あなたは何人もの大人に迷惑をかけた』と説教をされ、『本来なら違約金として物件価格の2割の1000万払ってもらうんだが、100万円でいいから払え』と言われて…。とにかくヤクザみたいで怖かったし、4カ月分のコンサル料20万円にプラス100万円を払って縁を切りました。向こうは陰で手叩いて笑ってたでしょうね」

今も後悔の念は消えない。「洗脳というか、催眠術みたいなものにかかっていたんだと思います。お金を払って教えてもらっているんだから、きっといい物件なんだろう…っていう。完全に上下関係が出来上がってしまって、怖くて何も言えなくなってしまっていた。人を信用して投資はするな、事実と数字だけを信じろ、というのが教訓ですね」

Bさん:キックバックとブローカー代で荒稼ぎする男

Aさんの事例のような個人のコンサルではなく、近年は複数の初心者がハメ込まれてしまう「大家の会」の存在を指摘する声も多い。

「私の場合はハメられたというわけでもないんですが、新しくできた大家会に入ってみたら、そのクオリティがなかなかにひどかった、という話ですね」

東京都在住のBさん(40代)は以前、新規に発足した大家の会への入会を決めた。「会を主宰するW氏の本にLINE@のアカウントが載っていて、セミナーに参加してみたのがきっかけです。勉強もできて物上げ能力もあると評判で、話を聞いてみても『絶対に損はさせない』と自信満々に語っていた。それで入ろうと決めました」

50万円の入会金を払って会に入ったが、W氏の態度は入会前と一変していた。

「毎回のセミナーの内容は超雑でしたよ。いつも中身のない話ばかりで、直前になって『何が聞きたいですか』と質問してきたり。最初はW氏以外に講師の人も結構いたんですが、どんどん辞めていった。最終的には入会金を払って参加しているメンバーに登壇させていましたからね。入会者は結局、1年後には1割も残っていなかったです」

W氏は会員に物件の紹介もしていた。

「紹介されるのはまともな物件もあるんですが、例えば築40年超えのRCとか、既存不適格の長屋とか、初心者の手に負えないようなものも勧めてくる。資金力のある会員に現金で買うよう促したりとか。ある程度勉強している会員も多くて、ババ物件を掴む人はそんなに多くなかったとは思いますが、ひどい目に遭った人もいるはずです」

会員の間でもW氏に対する不信感は募っていたという。「W氏が1億1100万円で会員に紹介していた新築案件があったんですが、物元に当たったら9980万円で売り出されていましたから。その物件の資料には『ブローカー代50万円』という記載があった。要するに業者からキックバックをもらって、さらにブローカー代でも稼いでいるわけです」

BさんもAさんと同じく、「会の中では(W氏に)意見を言えないような雰囲気があった」と振り返る。「キャッシュで億持っているような高属性のサラリーマンもけっこう入会していましたが、かなり後悔しているでしょうね。やっぱり主宰者の評判をよく調べて、少しでもヤバそうな話があったら立ち止まって考えるべきだと思います」

Cさん:区分、築古アパート、地方RC…3連続でやられた

「私は今までに『3回』やられています」

東京都在住の会社員Cさん(30代)は、別々の時期に3人のコンサルタントによって痛い目を見たという。

まず1件目は2015年。「会社員3年目ぐらいでそこそこ貯金もできた時、ある投資本に出合いました。都内の区分マンション投資を勧める本で、『こんな投資方法があるんだ、詳しく聞きたいな』と思って、著者のX氏にアプローチしたんです」

X氏からは「じゃあ不動産屋を紹介するよ」と言われ、区分マンション業者の営業マンと引き合わされた。その営業マンから紹介されたのは、都内の築8年の区分マンション。価格は2100万円、表面利回り5.2%という物件で、金利2.2%・35年のフルローンという提案だった。

「毎月の収支はプラス8000円ほどの想定でした。当時は知識がなくて、都内だから価格も下がらない、入居も安定する、生命保険代わりになる…といった説明に納得して買うことを決めました。もともとはその1戸だけの予定だったんですが、契約の前日ぐらいに同じような1800万円の区分も紹介されて、一気に2戸『大人買い』しちゃったんですよね」

2戸とも5年ほど所有し続け、入居は安定しているが、税金などを差し引くと手残りはほぼゼロ。Cさんは「区分は銀行からの評価もよくなく、住宅ローンにも不利に働くことが分かりました」と、購入を強く後悔している。

「後からその営業マンに聞いて知ったんですが、紹介した人が物件を買うと50万円のキックバックがもらえる契約だったそうです。つまり、X氏は私が購入した2戸で100万円のキックバックをもらっていたということ。2戸目を買った後も『3戸目買わないか』と持ち掛けてきたんですが、さすがに断りました」