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新型コロナウイルスの影響で、テナントや一般の入居者から家賃の支払いに関する相談を受けているというオーナーもいることだろう。

今回は、オーナーが家賃の減額などを求められた際、どのような手順で対応していくべきか、また入居者が賃料を支払えるようにし、オーナーが少しでも支出を減らすためにどのような制度が利用できるのかについて、税理士の大野晃男さんに解説してもらった。

まずは「お金の流れ」を意識しよう

突然ですが、家賃はどこから入ってくるのでしょうか。当然、入居者さんからですね。では、入居者さんはそのお金をどこから手に入れたのでしょうか。会社員の方であれば会社からの給料ですし、事業者の方であれば、商売の売上ですね。

このように、まずは大家さんを取り巻く「お金の流れ」を理解しておく必要があります。そうすればどの部分に対処すべきかが見えてきます。

そのうえで、「1.収入を増やす(減らさない)」「2.支出を減らす」「3.税金を抑える」という3つの観点から、大家さんのキャッシュフローの悪化を防ぐ方法具体的な方法を9つに分けて考えていきましょう。

1.収入を増やす(減らさない)

方法1:入居者の勤務先に「休業手当」を活用してもらう

勤め先が休業となってしまった入居者さんから「家賃が支払えない」と相談があった場合には、会社に休業補償してもらえないか確認してもらいましょう。会社は、会社都合により休業した場合、休業期間中の休業手当(平均賃金の60%以上)を支払わなければならないと労働基準法で定められています。

会社側から「不可抗力に該当するから休業手当を支払えない」と言われた場合でも、「雇用調整助成金」を活用すれば休業手当がもらえる可能性があります。コロナウイルスによって要件が緩和され、パート・アルバイトの方も対象になります。

この場合のお金の流れは、国→会社→入居者さん→大家さんとなります。雇用調整助成金については、会社から労働局に問い合せてもらうよう伝えましょう。

方法2:入居者に「住居確保給付金」を申請してもらう

「住居確保給付金」は、仕事を失うなどして家賃を払えない人に、地方自治体が家賃の支払いを補助するものです。原則として3カ月間、最長で9カ月間、家賃が補填されます。4月20日から特例措置が取られ、勤め先が休業のため給料が減少した場合も対象となりました。雇用契約のないフリーランスの方も支給対象となります。

この場合のお金の流れは、各自治体→大家さんとなり、大家さんに直接支給されます。入居者さんから自治体に問い合わせてもらいましょう。

方法3:法人大家さんも対象の「持続化給付金」を利用する

入居者さんがテナントさん(店舗・事務所など)で、売上が減少した場合には、「持続化給付金」の申請をしてもらいましょう。

「持続化給付金」では、コロナの影響により売上が前年同月と比べて50%以上減少している場合に、法人は最大で200万円、個人事業者は最大100万円が支給されます。対象者は資本金10億円未満の法人、個人事業者です。給付金の使用目的として、家賃への支払に利用することが認められています。

この場合のお金の流れは、国→入居者さん→大家さんとなります。2019年の確定申告書類と売上減少月の資料が必要なため、テナントさんに顧問税理士がいる場合には相談するよう伝えましょう。また、お店を休業している場合には、自治体による休業協力金も申請してもらいましょう。

なお、筆者が4月28日に経済産業省に電話で確認したところ、大家さん自身の家賃収入が50%以上減少した場合、現時点では大家さんが法人の場合は支給対象ですが、個人の場合の不動産収入は対象外となるとのことです。

このとき、持続化給付金を受取った場合には収入となり、税金が課されることに注意してください。また、賃料収入を雑収入などの営業外収入や特別利益と計上している場合には対象外となります。

なお、持続化給付金給付規程の第4条3項には、「売上減少」の要件として「新型コロナウイルス感染症拡大の影響等により」とあります。したがって、後日給付金事務局より、今年の売上減少がコロナの影響によるものではないと判断された場合、第10条により給付金の返還やペナルティが課される可能性が考えられます。

方法4:「小規模企業共済」などの貸付制度を利用する

大家さん向けの資金調達方法としては、貸付制度の利用があります。

節税と積立を目的として、中小機構による「小規模企業共済」や「経営セーフティ共済」に加入している大家さんもいると思います。これらには貸付制度があり、たとえば小規模企業共済の「緊急経営安定貸付け」では、一時的な売上の減少により資金繰りが著しく困難なとき、事業資金を低金利で借り入れできます。掛金の7~9割、50万円以上1000万円以内で、金利は年0.9%です。

また「経営セーフティ共済」の一時貸付金は、取引先が倒産していなくても臨時に事業資金を必要とする場合に、解約手当金の95%を上限、30万円以上760万円以内で借入できます。金利は年0.9%で、借入の際に一括で前払いとなります。共済を解約しないままでも借入により短期の資金繰りを改善できます。

一時貸付金の限度額(中小機構Webサイトより)

生命保険の契約者貸付制度は、生命保険を解約することなく解約返戻金の範囲内で借り入れできます。保険会社が定めた利息がかかりますが、申し込みから入金まで短期間で対応してくれる保険会社もあります。