名古屋駅

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国土交通省が3月に発表した今年1月1日時点の公示地価は、全国の住宅地で3年連続、商業地で5年連続の上昇となった。ここ数年は三大都市圏だけでなく、札幌、仙台、広島、福岡を中心に地方圏でも上昇基調が強まっている。

全国的に地価が上昇する中でも、特に注目を集めていたのが名古屋だ。昨年9月発表の基準地価では名古屋市の16区全てが上昇し、名古屋駅東側の中区錦1丁目の住宅地の上昇率は全国6番目となる25.4%。1平米当たりの価格は106万円に上り、これは東京都渋谷区の114万3000円に迫る数字だった。

ただ、昨年9月発表の基準地価、今年3月発表の公示地価はともに、新型コロナウイルスの影響が反映されていない。新型コロナの問題がどれぐらい長期化するかにもよるが、雇用情勢の悪化やインバウンド需要の減退など、これから地価にマイナス影響がもたらされる可能性は高い。

ここ数年、投資対象としても注目度が高まっていた名古屋だが、新型コロナの影響でその風向きは変わるのだろうか。住宅評論家の櫻井幸雄氏に見解を聞いた。

東京の「その次」

日本の不動産市況をリードする場所は「東京」である。それは昔も今も変わらない。問題は「その次」。東京を追いかける場所はどこか、ということだ。

5年ほど前まで、東京の次は「大阪」だった。東京の不動産価格が上昇すれば、その半年後に大阪の不動産価格が上がった。だから不動産業界には「大阪は東京の半年遅れ」という言葉もあったのだが、今の大阪は東京に半年以上遅れている感がある。

大阪に代わり、東京の後を追う場所が「名古屋」だ。

毎年春に公表されている公示地価で、東京、大阪、名古屋の三大都市圏が6年ぶりに上昇したのは2014年。東京五輪開催が決まり、東京の都心部から地価上昇が始まっていることが公に認められた瞬間だった。

2017年の基準地価では都道府県庁所在地別の最高価格で名古屋市が大阪市を抜き、全国2位に躍り出た。名古屋市はその後も地価上昇が続き、2019年の基準地価では住宅地が2.1%上昇。商業地も7年連続で前年比プラスを記録し、住宅地よりもはるかに高い7.5%の伸びを示した。

リニアで国際都市への期待高まる

名古屋で地価上昇の勢いが強いのは、もちろん2027年開業予定のリニア中央新幹線への期待値の高さがあるからだ。リニアは名古屋―品川間を約40分で結ぶ計画で、それを利用しやすい名駅(名古屋駅)周辺は首都圏と同様に便利な場所となる。

世界規模で考えれば、約40分で行き来できる東京と名古屋はほとんど「隣町」のように捉えられるようになるだろう。すると、日本への進出を考える外国企業は「東京にしようか、名古屋にしようか」と悩むことになる。

名古屋にはトヨタをはじめとする製造業が多く、それらと取引のある外国企業であれば名古屋のほうが便利で、名古屋に日本支社をおけば東京にもリニアですぐに移動できる。名古屋はリニアの開業によって最先端の国際都市になる可能性があり、その秘めた資産価値が大きな期待となって地価を押し上げていたといえる。

名駅と栄の「2核1軸」

リニア中央新幹線への期待から、名駅(名古屋駅)周辺の再開発は急ピッチで進み、大型のオフィスビルや商業ビルが続々誕生。名鉄名古屋駅地区では高さ160~180メートル、南北400メートルにわたる巨大ビルの建設が予定され、名古屋三井ビルディング北館の建設も進んでいる。

加えて注目したいのは、栄エリアでも再開発が始まっていることだ。

栄の中心的存在だった中日ビルはすでに建て替え工事が始まっており、2024年に新たなビルが完成する予定だ。同ビルと向き合うように位置するデパートの「三越」も建て替えが決まり、これは2029年に完成予定。加えて、老舗百貨店「丸栄」の建て替え計画があるし、名古屋のシンボルでもある名古屋テレビ塔のリニューアル工事も進行している。

名駅周辺に続き、栄エリアでも「名古屋再生」の火の手が上がった。そこで、名古屋市が打ち出しているのが「2核1軸構造」の発想。名駅と栄エリアを1つの軸として結び、その周辺を広範囲に活気づけようとする計画だ。

栄の地価は急上昇中

全国の都道府県庁所在地では、駅と繁華街が離れる、という場所が多い。博多駅と天神エリアが離れる福岡県、金沢駅と香林坊エリアが離れる石川県…。大阪も大阪駅がある梅田エリアと心斎橋エリアは離れている。

これらの場所では近年、JRの駅周辺で活気が増し、「駅」と「繁華街」という2つの核が生じ、その中間も巻き込んで街が巨大化するという動きが出ている。

名古屋も名駅エリアと栄エリアは離れている。リニア中央新幹線で名駅周辺の注目度が増す中、さらに大きく都市を成長させるため、栄も巻き込んだ再編に取り組んでいるところだ。いまのところ、その狙い通りに進んでいると感じられる。

実際、栄のある中区の公示地価はこの7年間で170%以上の上昇を示し、特に18年から20年にかけて大幅に上昇している。2014年から地価上昇が始まっていた名駅周辺に一気に追いついたという状況だ。