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新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、一部の不動産オーナーは入居付けの苦戦やテナントの退去や家賃減額によって毎月の家賃収入に影響がでている。オーナーとしては利用できる生活支援制度を活用して、収入減少の補填に充てたいところだろう。そんな中、4月30日に納税猶予特例が可決された。

特例その1:2021年度分の固定資産税の減免
特例その2:2020年度分の税金の納税猶予

これにより収入が大きく減少した不動産オーナーは、場合によって固定資産税が全額免除になることも。不動産の固定資産税は物件によっては数十万円と大きな金額になるため、減免にできる条件は是非とも知っておきたい。今回は発表された特例の内容を、税理士業界で20年の経験を持ち税理士YouTuberとして不動産投資にまつわる税金の動画も配信しているヒロ税理士こと田淵宏明氏とともに解説していく。

3カ月間で「前年同月比30%減少」が条件

新型コロナウイルスの影響で事業収入が減少している中小企業者・小規模事業者の税負担を軽減するため、設備や建物等の2021年度分の固定資産税や都市計画税の一部又は全部を免除できる制度ができた。

まず注意したいのは不動産の場合、土地は対象外で建物部分のみが対象であることだ。建物部分といっても中小企業・小規模事業者向けの制度のため、個人の所有する居住用の家屋は対象外になる。ただし、個人事業主として家屋を貸している場合は対象になるので、個人の不動産オーナーも「事業収入」の減少率条件を満たせば利用することができる。

では、不動産投資家にとっての「事業収入」とは具体的に何を指すのか。まず、不動産の家賃収入や、物件に設置された自動販売機の売り上げなどは、すべて事業収入となる。専業大家など不動産投資を本業としている場合は分かりやすいだろう(入居者の退去や家賃減額によって、家賃収入などが30%以上減少すれば、減免の対象となる)。なお、新型コロナウイルスによる持続化給付金などの補助金収入は事業収入には含まない。

家賃猶予は「収入減少」に該当しない

一方、副業で不動産投資をしているオーナーの「事業収入」は何をさすのか田淵氏に聞いた。

「あくまでも事業としての収入が対象になるため、サラリーマンの給与収入は対象外になります。ただし、会社員ではなく自営業の傍らで不動産投資をしている人、例えば、本業が飲食店経営で副業として不動産投資を行っている場合は、飲食店の売上は事業収入に該当するので対象になります」

このように複数の事業を行っている場合、事業の売り上げと不動産投資の家賃収入を合算したものを事業収入とする。続いて田淵氏は新型コロナウイルスの影響で家賃の減額や猶予をした場合について、こう注意を促した。

「家賃の減額をした場合、減収分を事業収入として計算するなら覚書を取り交わす必要があります。しかし、家賃の支払いを猶予した場合は契約内容が変わったわけではないので、猶予したとしても事業収入が減少したことにはなりません。」

ここまでのまとめ

固定資産税減免の対象にならないもの
・不動産の土地部分
・個人の所有する居住用の家屋
事業収入の範囲
・法人の場合、売上高がそのまま事業収入になる
・不動産の家賃収入や自動販売機の売り上げは事業収入に含まれる
・自営業の売り上げは事業収入に含まれる
・個人の場合、サラリーマンの給与収入は事業収入に含まれない
・家賃
「減額」した分は、事業収入に含まれる(覚書が必要)
・家賃「猶予」した分は、事業収入に含まれない

複数物件ある場合、各市町村に申請が必要

続いて、申請方法について紹介したい。
<申請方法>
「認定経営革新等支援機関」にて確認書を発行し、納付市町村に提出
<申請期間>
2021年1月1日~1月31日

※確認書を発行できる時期はまだ未定

「認定経営革新等支援機関」とは中小企業・小規模事業者に対して専門性の高い支援を行うことを目的とし、経済産業省から認定を受けた会計事務所や商工会議所、金融機関などのことを指す。全国に約3万5000の認定支援機関があり、ここから確認書を発行してもらい、物件が所在する市町村に提出が必要である。この確認書とはどのようなものなのか、田淵氏は次のように説明する。

「中小企業者や小規模事業者に該当するか、事業収入が本当に減っているのか、所有する物件が事業収入を目的とした物件であるのか、この3つを『確認した』ということを、書面で発行してもらいます。そのため、自社や1人で申請することはできないので、まずは現在相談している税理士に聞いてみてください」

それでは確認書はいつから発行できるのか、楽待新聞編集部が中小企業庁の固定資産税等の軽減相談窓口に尋ねたところ「必要書類がまだ決まっていないので、時期は未定です」との回答だった。決まり次第、中小企業庁のホームページで公表される見通しだ。

ここで注意したいのは、申請期間が短いことだ。

「異なる市町村に複数物件を持っている不動産オーナーは、各物件の納付市町村にそれぞれ出向いて申請する必要があります。申請期間が1カ月間と短いので、申請漏れがないように注意していただきたい」(田淵氏)

最後に、2020年中にこれから買う物件も対象になるのかを田淵氏に聞くと「固定資産税の減免は2021年1月1日時点に物件を所有していれば対象となるので、減免を受けられる人で物件を購入できる余力があるなら、今年中に購入する物件も減免の対象になります。その場合、認定支援機関に再度確認書を発行してもらう必要があります」

納税猶予は会社員の「給与収入」も含む

2020年の固定資産税については「減免」の対象にはならないが、納税「猶予」制度が適用できるので続いて紹介していこう。国会の補正予算で固定資産税の減免の他に、納税猶予の特例制度が創設された。条件を満たせば無担保かつ延滞税なしで固定資産税などの税金の支払いを1年間猶予できるという内容だ。猶予後の支払い方法は一括になるので、2021年度分を含めた2年分を支払うことになる。これについて田淵氏は「もし、一括で2年分支払うのが困難の場合は、一般の納税猶予制度を利用して分割することができます」と話す。

納税猶予は「固定資産税の減免」とは違い、納税者の経常的な収入を対象とするため、会社員の「給与収入」を含む収入が対象になる。また、個人の「一時所得」は新型コロナウイルスの影響により減少するものではないと考えられるので、条件の対象である「事業等の収入」には含まれない。納税猶予できる不動産投資に関する税金について田淵氏に聞くと「固定資産税だけでなく、所得税、法人税、消費税、登録免許税」が挙げられた。

申請方法は国税庁のホームページから申請書をダウンロードし、納付期限までに所轄の税務署に提出する。また、既に納付期限が過ぎている未納の税金についても、6月30日までならさかのぼって特例を適用することができる。あくまでも猶予なので最終的には支払わなければならないが、新型コロナウイルスの影響で収入が大きく減少して納税するのが困難なオーナーにとってはありがたい制度だ。

固定資産税の減免は、「持続化給付金」などの生活支援制度とは違い現金を受け取れるものではないが、多額な支出を抑えられるので来年のキャッシュフロー向上につながる。この制度について田淵氏は「税理士として業界に20年いますけれど、ここまで税金が免除される制度というのはなかなかありませんでした」と、新型コロナウイルスが企業に大きな影響を与えていると話した。続いて「テナントオーナーのお客様には『空室になるのは避けたいのでテナントからの家賃減額に応じるしかない』という方が多くいるので、そういった方には大いに役立つ制度だと思います」とも話した。

申請できるのが来年のためまだ先の話ではあるが、申請期間が1カ月と短いので減免の対象になる人は早めに税理士に相談しておくのが望ましいだろう。また、今は対象になっていない人も、コロナ禍で景況はどう変化するかは未知数であるので、このような制度があることをぜひ知っておいて欲しい。

取材協力:田淵宏明(たぶちひろあき)氏
税理士業界歴に20年。29歳の時に会計事務所を設立し、代表税理士を務めている。その経験からYouTubeチャンネル「税理士YouTuberチャンネル!! / ヒロ税理士」を運営し、ビジネスと税金についての動画を配信。視聴者からの様々な質問に答えている。

(楽待新聞編集部)