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人口減少による貸出先の不足、長期にわたる金融緩和などを背景に苦境が続いている地方銀行。2019年3月期の決算では、104行中46行が本業で赤字となった。

そして現在、コロナの影響で融資先企業の業績悪化が懸念される中、将来的な融資の焦げ付きに備えて貸倒引当金の積み増しを強いられるなど、さらに苦しい状況となっている。

一方、コロナ禍で「地銀では顧客の離反も進むだろう」と金融アナリストの高橋克英氏は話す。コロナ禍により経済や社会が変化しつつある中、地銀の未来はどうなっていくのか。高橋氏に語ってもらった。

コロナ禍が2022年まで続く可能性

筆者は、コロナ禍の早期収束には悲観的だ。感染者数などがピークアウトし経済活動が一部再開されたとしても、ウイルスが消滅したわけではない。米国ハーバード大学やミネソタ大学の研究予測が示すように、ワクチンや治療薬の開発か、集団免疫の状態にない限り、コロナ禍による混乱は2022年まで続く可能性も否定できない。

そうなれば、従来のような経済活動、消費、旅行などはしばらく戻らない可能性が高く、特に、東京五輪など大規模イベントは、中止・延期となるなど混乱が続くだろう。このため、この先も企業の業績悪化が深刻化し、その資金繰りを支える地銀にも影響が及ぶことになろう。

地銀の業績はさらに悪化する

コロナ禍がなかったとしても、地銀の2020年3月期決算は減収減益、また一部では赤字決算が見込まれていた。実際、みちのく銀行、清水銀行、島根銀行、十八銀行(単体)、親和銀行(単体)などが最終赤字となった。原因は、人口減少や低金利、デジタル化により、利ざやや手数料収入が減少し、有価証券の含み損が拡大したことなどだ。コロナ禍を受けて、規制当局による自己資本比率規制の緩和、貸倒引当金の柔軟対応などの材料はあるものの、財務内容の悪化傾向は変わらない。

ただし企業倒産阻止、経済再生という名目のもと、金融システムは維持されると考えられるため、地銀を含め、大手行や信金・信組といった預金取扱金融機関の破綻の可能性は極めて低いだろう。公的資金制度などセーフティーネットもすでに存在している。

それでもコロナ禍の影響が本格化する2021年3月期決算では、取引先の業績悪化により不良債権が増加したり、株式など有価証券の含み損などが拡大したりする可能性は高く、地銀の業績悪化はさらに進むことになるだろう。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の調査によると、2021年3月期の連結純利益の見通しを公表した上場地銀73行・グループのうち7割が前期比で減益を見込むという。

地銀窓口に殺到する相談者

こうした状況下、コロナ禍により銀行への相談が急増している。

金融庁の発表によれば、今年3月10日~3月末までの間、貸付条件変更の申請が2万6592件あり、そのうちの2万1834件が地銀への申し込みとなっている。さらには経営相談や新規融資の申し込み、実質無利子・無担保の融資制度の申し込みなど、中小企業や自営業者による相談は多い。

また外出自粛により、巣ごもりし自宅で整理片付けをするなかで、両替や住所変更、口座解約、資産運用相談など個人顧客の来店も増えているという。

一方で、銀行員のコロナ感染も相次いだ。行員の安全と銀行業務の継続を両立させるため、銀行はシフト制の導入、営業店の昼休みなどを導入する一方、不要不急な来店を控えるよう呼びかけ、インターネットバンキングへのシフトを促している。

もっとも、「銀行に不要不急で来ないでほしい」というメッセージは、「行きたくて行くわけではないのに」と、顧客の反感を招くことにもなりかねない。昼休み導入やシフト制の導入により待ち時間が長くなり、顧客満足度の低下を招くことにもなる。「銀行は、いざという時頼りになる」となるか、「銀行は、いざという時使えない」となるか、今まさに試されているといえるだろう。

コロナ禍下で顧客が気付いてしまったこと

しかし残念ながら、顧客はコロナ禍下で気付いてしまったことがある。ネットやスマホの優位性、危機時の日本政策金融公庫など政府系金融の有用性、そして身近にある信用金庫やJAバンクの利便性だ。

コロナ禍下、わざわざ店舗に足を運ぶ必要がないネット銀行やネット証券の存在。危機的状況で頼りになるのは、国や地方自治体、日本政策金融公庫、信用保証協会といった政府系金融。そして、銀行よりも身近にある信金、信組やJAバンク、郵便局の存在である。一方で、銀行は、ハードルが高く利便性が良いとはいえないということが、今回のコロナ禍でより鮮明になろうとしている。

コロナ禍を機に、この先、融資や金融商品の販売、有価証券運用、預金、決済、送金といった地銀の主要ビジネスは、顧客の支持を集める異業種により代替され、解体されていくことになるだろう。

異業種による地銀ビジネスの解体が加速する

ここまで述べたような地銀ビジネスの解体がどのように起こると考えられるのか。具体的な業務ごとに考えてみたい。

1.融資

まず、地銀の中核ビジネスである融資だが、コロナ禍下、顧客にとって大事なのはコンサルティング営業ではなく、スピードと金利である。実際、来店不要で早く、提出書類も少ない異業種などによるAIレンディングの申し込みが急増しているという。既存銀行と違って人員や店舗がない分、今後、金利面でも差がつくことになろう。  

もっともAIレンディングの本命は、小口金融(個人・中小零細企業)ではなく、大企業向け貸出である。大企業向け貸出こそ、AIレンディングに最適である。なぜなら、株価や格付け、有価証券報告書など大企業は公開資料が充実しており、AI分析が容易だからだ。それでもAIレンディングがいまだ普及しないのは、既存銀行と大企業側双方の既得権益のためだろう。銀行側は花形のRMや審査担当、企業側は財務・経理担当の仕事が奪われることへの抵抗がその背景にあると筆者は考えている。

2.預金・決済・送金

外出、対面での接触が敬遠されるコロナ禍により、ネットバンキングやネット銀行の優位性もより鮮明になった。地銀の預金は、金利水準でネット銀行などに敵わない。地銀側も口座維持手数料を検討するなど儲からない預金の受け入れに難色を示しており、ますます顧客離反が続くことになる。

コロナ禍を契機に、例えば給与の電子マネー払いが実現すれば、決済や送金におけるネット銀行や電子マネーなどへのシフトが加速し、利便性に劣る銀行口座が送金、決済の要から外れる可能性も高まることになる。

3.金融商品販売

コロナ禍では、ネットやスマホ証券の優位性もより明確になった。今回のようなリスクオフ局面に強く、安定型とされるバランス型や分散型ファンドでも、下落時には資産間の相関が高くなってしまい、損失が拡大している。この先銀行は、クレームや訴訟などを多く抱える可能性もあり、一部個人顧客の資産運用離れが進むとみられる。

一方で、リスクテイクする個人投資家、新規に資産運用を始める個人投資家も増加中である。ただし外出自粛もあり、銀行を訪問し運用相談する顧客は少ない。銀行側も不要不急の来店自粛を促している状態だ。コロナが理由とはいえ、優良顧客・潜在顧客を自らシャットダウンしていることになる。

この先、顧客離反、採算性悪化、コンプライアンスリスクの3重苦により、銀行が投信など金融商品販売をやめる日が近づくことになる。島根銀行や山陰合同銀行など地銀が、SBI証券や野村証券に金融商品販売ビジネスを事実上移譲したり、品揃えはあるものの、実際には積極的には販売していない地銀もでてきている。

地銀の不動産投資ローンは残るのか

コロナ禍により、顧客離反を背景に異業種による地銀ビジネスの解体は進むことになる。一方で、今後も地銀に生き残るビジネスとして、地銀のブランド力や信用力を生かした、シニアや富裕層向けビジネス、不動産関連ビジネス、信用保証ビジネスなどが挙げられる。資産運用アドバイザーや不動産スペシャリストといった職種は生き残ることになる。

地銀にとって収益性が高く、顧客との親和性もあるため、地元のシニア富裕層などをメインとした不動産投資ローンのビジネスは地銀の中核ビジネスの一つとして残ることになろう。また、仮に、地銀がこうしたビジネスを縮小・撤退したとしても、上述したAIレンディングの活用により、ネット銀行やフィンテック企業など異業種により、より早く簡便で安く不動産投資ローンが提供される可能性も高い。

銀行やフィンテック企業による融資方針や条件はこの先も経済環境などにより変動することになるが、不動産投資ローンがなくなることはないはずだ。

(高橋克英)