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世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスだが、日本国内では徐々に感染者数が減少し、25日に全国で緊急事態宣言が解除された。感染者の増加ペースが落ち着き始めたヨーロッパでも、段階的に規制緩和が進んでいるようだ。

今回は、スペイン移住5年目で、バルセロナに投資用の区分物件2戸を所有する「スペイン大家」さんに、新型コロナの影響や現地の不動産事情についてリポートしてもらった。

「ゴールデン・ビザ」でスペインへ

はじめまして、スペイン大家と申します。

本業はWEBデザイナーで、スペイン・バルセロナに移住して5年目になります。2015年に、「ゴールデン・ビザ」という永住権取得プログラムでサグラダ・ファミリア近くに自宅用の物件を購入しました。その後、ワインセミナーで仲良くなったセニョーラ(既婚女性)に勧められ、投資用に小さな区分物件2戸を購入。スペインでの大家さん生活も4年目になります。

大学の卒業旅行で訪れたバルセロナ。天気も良く、食べ物も美味しく、そしてなんといっても魅了されたのはいまだ建設中であるサグラダ・ファミリアの壮観な姿でした。バルセロナは2日間の滞在ながら、2日連続で朝、夜と見に行ったぐらいです。その印象は非常に強く、日本で就職してからも「いつかバルセロナに住んでみたい」と思っていました。

現在も建設中のサグラダ・ファミリア

「ゴールデン・ビザ」は2013年にスペイン経済の振興を目的に導入されました。スペインの不動産(住居、商業物件、ビル、事務所など)を50万ユーロ以上購入すれば、スペイン政府から永住権までもらえるという、私にはとってはラッキーなプログラムだったんです。

スペインでは2008年のリーマンショックをきっかけに不動産バブルが崩壊し、海外からの投資が必要になりました。このゴールデン・ビザも、移住目的の外国人を呼び込む目的で導入されたという経緯があります。

ゴールデン・ビザの申請に必要な50万ユーロは当時のレートで約6000万円。私はもともと日本でも地方で区分マンション投資をしていたんですが、管理費などの諸経費が高いわりに空室率が高く、この時に2戸売却して現金化しました。さらに投資信託の売却と家族からの借金で、申請までこぎつけました。

自宅探しは外国人向けの不動産会社と日系不動産会社の両方に連絡し、航空券が安い2015年の2月に渡航。5日間で12物件を内見したんですが、スペインは古い建物を大事にする文化なので、築100年以上というような物件もありました。最終的には、やはり言葉の壁もあって日系不動産会社で購入する運びとなりました。

ちなみに、このゴールデン・ビザ。新型コロナによる不況を受け、再び外国資本を呼び込もうと、基準額が50万ユーロから半額程度に下がるという噂があります。またスペインでは不動産取得にかかる税率が自治州によって異なり、私がカタルーニャ州で買った時は10%だったんですが、この税率を下げることも政府で検討されているとのこと。これらが実現すれば、スペインに移住したい人にとっては朗報でしょう。

スペイン不動産の特徴とは

実はスペインでは、投資といえば株やFXなどではなく、不動産投資が一番人気という印象です。「株やFXは金融関係で働いている人がするもの」という考え方で、金融投資に関するサイトやアプリもあまり充実しておらず、個人投資家の数はそれほど多くありません。

それに対し、不動産投資は毎日取引画面を見たり経済情勢を調べたりする必要がそれほどないからなのか、人気があります。私に不動産投資を勧めてくれたセニョーラによると、スペインは歴史的にみてもリーマンショック時以外不動産価格が落ちたことはなく、近年も上昇基調で不動産投資の注目度が高まっていました。

私はそのセニョーラに勧められ、2016年と2017年にサグラダ・ファミリア近くで投資用の区分物件を2戸購入しました。物件はスペインの不動産サイトでもチェックしてみましたが、日系の不動産会社に頼んで何件か探してもらって内見して決めるという流れでした。

1戸目は築48年の2LDKで、23万ユーロ(当時のレートで約2700万円)、表面利回りは5.2%という物件。修繕費が5000ユーロかかりました。2戸目は築80年の1DKで、15万7000ユーロ(当時のレートで約1900万円)で購入。表面利回りは6.3%です。

スペインで仕事をしていなかったため最初は融資で苦戦したんですが、日本人を含め外国人の融資が通りやすい銀行が見つかり、無事に受けることができました。頭金を4割ほど入れ、金利は変動0.89%、期間30年という条件でした。

1戸目の物件

スペインの不動産は日本と比べると固定資産税や共益費などのランニングコストがかなり安く、収益性は日本の区分マンションより高いと感じています。賃貸に関しては、良い気候を求めて若いIT系の外国人エンジニアなどが移住してくるケースが多く、私の物件の入居者さんもそう。また、ドイツやフランスのリタイア層がセカンドハウスとして借りることも多いので、需要は安定している印象です。

数年後に完成すると言われているサグラダ・ファミリア近くの物件は外国人投資家にとって魅力的なので、買い手が絶えないと思って購入しました。このあたりは年々価格が上がっていて、2戸目の1DKは今年3月に査定したところ、4年間で10万ユーロも評価額が上がっていました。

家賃も1年ごとに50ユーロずつ上がっています。今後も上がる余地があると思うので、10年ほどはインカムゲイン狙いで持ち続けたいと考えています。もし家賃が上がらないようであれば、フランスやイタリアなどの外国人投資家や移住者などへの売却も視野に入れていく予定です。

ちなみに私は当時、イギリスのブライトンやドイツのベルリンの不動産も検討したんですが、これらの都市では価格が高すぎて、郊外や地方でしか買える物件はありませんでした。イギリスでは、同じような部屋の広さで比較した場合はスペインの3倍ぐらいの価格。またポルトガルのポルトなども物件余りの状態で、観光客向けの物件は海外投資家の買いが入っていたんですが、長期用、短期用ともに空室率が高い状態でした。

外出禁止令を破れば罰金

新型コロナの影響で、スペインではどのような影響が出たかについても少しお伝えします。

スペインはイタリアと同じく早くから感染が広がり、3月12日に行きつけの美容院の中国人に「今後ウイルスがやってくるから私も店を閉める」と言われました。不況が来てもビジネスをし続けるような印象の中国人が店を閉めるというのははただ事ではない、と思った翌13日、スペイン政府が緊急非常事態を発令し、外出禁止令が出されました。

外出規制1日前のバルセロナ市内

スーパーや薬局、病院以外の外出ができなくなり、飲食店も全て閉店。警察や病院関係、交通機関など以外の従事者は在宅勤務に切り替わりました。日本のように要請ではなく「禁止令」という法律だったため、規則を破った個人や企業は罰金を科されていました。

ただ、他のヨーロッパの一部の国のように、大勢が罰金を取られるような状況にはなりませんでした。というのも、毎日増え続ける感染者数、死者数の報道に、国民の緊張感が日に日に高まっていったからです。

スペインは日本とは桁違いに新型コロナによる死者数が多く、4月2日には1日で950人もが亡くなりました。5月20日現在では感染者27万9000人、死者数2万7000人に上ります。死者は80歳以上が70%で、大半が老人ホームや障害者施設、病院で感染して亡くなっています。

段階的な規制緩和

現在は徐々に感染者数が減少し、少しずつ規制緩和が進んでいます。まず4月26日から子どもが1日1時間、自宅から1キロ圏内の遊びや散歩ができるようになりました。その後、5月2日からフェーズ0〜フェーズ3の4段階での規制緩和が始まっています。

例えば、フェーズ0は散歩や個人の運動のみ可能で飲食店はテイクアウト限定、フェーズ1は飲食店のテラス席50%まで集客できて農業活動も可能になる、といった具合です。私が住むバルセロナやマドリードも25日からフェーズ1に移行し、徐々に活気が戻りつつあります。

規制緩和で感染者が増えることも危惧されましたが、実際は減ってきています。これは外出できる時間帯を年齢ごとに制限している効果もあるかもしれません。自宅から1キロ以内、他人と1メートルを開けることを条件に1日1時間以内の散歩や遊びが可能なのですが、6〜10時は14歳以上、10〜12時は70歳以上などと時間が決まっているのです。