PHOTO: iStock.com/Yuuji

2020年2月、新型コロナウイルスの影響で中国から部品を輸入できなくなり、大手メーカーでトイレやキッチンなどの住宅設備機器が生産できない事態が起こった。そして2月中旬ごろには、商品を発注しても納品日の目途がたたず、工期に間に合わない建設現場やリフォーム現場が多く発生した。

それから3カ月が経過し、緊急事態宣言が解除された今、住宅設備機器の商品不足は解消されたのだろうか。複数のリフォーム業者に話を聞いてみた。

大手メーカーの在庫は回復傾向

最初にメーカーの現在の生産状況を見てみよう。住宅設備機器大手のTOTO、LIXILの2社は、2月以降、主な住宅設備機器の納品までの状況をホームページで公表していた。3月中旬までは2社ともに多くの商品で納期に遅れが発生していたが、現在は通常の納期に回復した商品もあるようだ。

参照:TOTO、LIXILの各ホームページ

TOTOのホームページによると、トイレの納品に遅れが発生しているものの、ユニットバスやシステムキッチン、洗面化粧台などおおむねの設備で生産状況が回復してきているようだ。

一方、LIXILではまだ多くの商品で納期の遅れが発生している。しかし、ホームページにある納期の遅れが発生している商品リストを見ると、「一部のシリーズの商品で納期遅れが発生」とも記載があるので、徐々に生産状況が回復しているのであろう。どれくらいの納期遅れが発生しているのか、楽待新聞編集部がLIXILに取材を試みたが「納期までの期間については発注者にしか回答していない」とのことだった。

メーカーに発注できない時期もあった

住宅設備機器の商品不足が発生した2月頃、実際の工事現場ではどれくらい商品の納期が遅れていたのだろうか。部材を仕入れて現場でトイレなどを設置する建築内装の会社を経営している楽待コラムニストの上野厚さんに納品が遅れていた頃の話を聞いた。

「1月の下旬くらいに、中国の武漢がロックダウンしたため各メーカーの工場が止まるかもしれないという通達が商社から届きました。その時はまだ納期通り発注できていたので、あまり危機感はありませんでした」

ところが、通常であればメーカーから納期を知らせる通知がくるはずが、2月になるとこの通知が出なくなった。上野さんは当時の状況を次のように振り返る。

「納期回答がもらえなくなってからは、国内に在庫のある商品は納品できましたが、在庫のない商品は中国の工場が停止して生産できないので、いつ納品できるかはわからない状況になりました」

上野さんによると、在庫が足りなくなったのは主に「トイレ」と「ユニットバス」。2月中旬から3月中旬までは大手メーカーに発注ができなくなるほど、商品不足が続いたと話す。

3月下旬ごろにはようやく回復の兆しが見え始め、注文の受付が開始されたものの、「中国の工場がまだ本稼働していなかったようで納品日の見通しが立たない状態が続き、5月になってようやく『3月下旬に発注した商品が5月末に納品できる』という連絡が届きました」と上野さんは言う。

国内生産している商品で代替

住宅設備機器の納品遅れが発生する中、工事の納期を遅らせないために上野さんはどのようにリカバリーしたのだろうか。納品遅れの影響があった2件のリフォーム現場について話を聞いた。

「1件目は戸建のリフォームで、ユニットバスの納期がわからないため工期までに間に合わなくなりそうな現場がありました。ここは指定の商品を設置するよりも工事を完了させることを優先していましたので、国内生産しているメーカーの商品に切り替えて、工期を間に合わせました」

上野さんによると、国内生産しているメーカーの商品は在庫切れしていなかったため、賃貸物件の一室など戸数が少ない現場で代替品として使われることがあったと言う。

一方、分譲住宅や同じ商品が複数必要な物件では設置する商品が決まっていることが多いので、発注した商品が納品されるのを待つしかなかったようだ。実際に上野さんもトイレ交換が30個必要で温水洗浄便座の代替品を用意できない工事があったと話す。

「1棟のテナントビルを4月末までに全館フルリニューアルする工事がありました。トイレの便器と便座は30個全て用意できたのですが、外付けの温水洗浄便座の納品が間に合わない状況に…」

温水洗浄便座は、この現場のために発注した物で、ほかの現場では利用できなかった。代替品を用意できないため、納品を待つことに。

「納品が遅れるのは仕方ないので、ビルオーナーと相談して温水洗浄便座を付けずに工事を完了させ、納品後に別途設置することにしました。工事完了後、5月末にようやく納品されることに決まりましたので、これから設置する予定です」

予定より2カ月遅れてトイレが納品

納品遅れは全国で発生していたため、どの現場でも上野さんのように機転を利かせて対応していたことが想像できる。大阪で主に賃貸物件やテナントのリフォームを手掛けている株式会社「関西Exceed」は、3月に移転する飲食店のリフォーム工事で納期遅れが発生した。

その現場ではトイレの納品が工期に間に合わず、納品されたのは発注から2カ月後。

「あらかじめ、どの現場でも設置できるようなトイレを自社で確保していましたが、その飲食店は通常より高価なタンクレストイレの設置を予定していたため、代替品を利用することができませんでした。発注したトイレの納品日がわからないまま工期が近づいたので、納品されるまでの間は移転前に利用していたトイレを移して設置しました。もともと移転前の店舗はスケルトンの状態で返す予定だったので、代替品として対応することができました」

4月中旬から納期遅れは回復傾向へ

各リフォーム業者が住宅設備機器の確保に追われる中、商品不足はいつ頃に解消されてきたのか。東京都で分譲住宅や賃貸住宅のリフォーム工事をしている株式会社「協和パートナーズ」は、4月中旬くらいから納期の大幅な遅れは解消されたと話す。

「3月下旬から徐々に商品の受注受付は再開されましたが、発注が集中しすぎたためかトイレは再度発注できなくなりました。幸いなことに、私は再停止になる前に発注できたので良かったのですが、それでも納期は遅く、通常なら3日くらいで届くのが8週間もかかりました。その後、4月中旬くらいにはトイレを含めた大半の商品の発注ができるようになり、5月中旬には商社から送られる各メーカーの商品リストが豊富に揃っていたので、商品不足はほとんど解消されたと思います」

続いて、これからリフォームを計画している大家さんに向けて気を付けるべき事はないかと聞くと、「商品がいつ入手できるかわからないという時期は過ぎたので、在庫のある商品を選んで発注すれば工期が遅れるようなことはないと思います。また、特定の商品を設置したい場合は、事前にリフォーム業者を通じて在庫と納品予定日を確認してもらうのが良いと思います」と回答した。

トイレやユニットバスが納品されず、工期までに間に合わないという事態は解消しつつあるものの、まだ全ての商品の生産数が回復したわけではない。商品の在庫状況は常時変動しているので、商品は余裕をもって発注するのが良いであろう。

また、今後は緊急事態宣言の解除とともに経済活動が徐々に再開されていくが、新型コロナウイルスの第2波はいつ起きるかはわからない。今回のように住宅設備機器の商品不足が起こるかもしれないので、大家は国内生産しているメーカーの商品や、ホームセンターなど直接購入できるお店を事前に調べておき、商品の入手ルートを複数知っておくことも大事になりそうだ。

(楽待新聞編集部)