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新型コロナウイルスにより停滞していた経済活動が、世界中で徐々に再開しつつある現在。日本では東京の感染者数がぶり返し「第2波」への警戒は高まっているものの、ウイルスとの共生・共存を前提とした「ウィズコロナ」のフェーズを迎えつつある。今後しばらくの間、個人や企業には感染拡大を起こさないよう、工夫しながらの活動が求められることになる。

不動産業界も同様だ。国土交通省が不動産業界団体向けに配布したガイドラインで示したように、IT技術を活用するなどしてできるだけ「対面」での営業を減らすといった変化が求められている。

これまで不動産の現場では、多くの場面で対面でのやりとりが前提となっていたが、各業界でDX(デジタルトランスフォーメーション)の必要性が叫ばれる中、これらのデジタル化、オンライン化を促進するためには何が必要になるのか。現場の声や専門家の見解を通じて考えてみたい。

「数年での普及は困難」

今年5月に楽待新聞でも取り上げたとおり、中小規模の不動産会社の間でも、オンラインによる面談や商談などの認知は広がっている。一方、利用者側からは「オンラインでは現場の空気感が分からない」「微妙なニュアンスが伝わらない」といった意見も聞かれるなど、普及にはまだ壁があるようだ。

そこで緊急事態宣言が明けた6月、編集部は改めて複数の不動産会社に「不動産業界のオンライン化」について話を聞いてみた。以下にそれぞれ紹介していこう。

大手不動産会社で20年近くの勤務経験があり、実需物件から収益物件までさまざまな取引を経験してきたAさんは、「オンライン化ができる場面とそうでない場面がある」と指摘する。

例えば、顧客側がインターネットやオンライン会議ツールに不慣れな場合、それがハードルとなる。顧客が法人の場合は、オンラインツールに慣れているケースが多いことなどから、「やり取りも何ら問題なくできている」と話す。

一方、個人投資家などを相手にする場合には、「高齢者をはじめ、スキル面でオンラインでのやり取りができない場合も多い」という。

Aさんが何よりネックになると見ているのは、物件購入前の現地確認だ。写真だけでなく、ビデオやVRなどを利用した内見サービスも登場しているものの、「実際に現地を見て、気に入れば詳細を検討するという人は多い」(Aさん)。

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現地見学後の商談ややり取りはオンラインでも問題なく、また数は少ないものの、すでにオンライン面談を実施している例もある。だが、「例えば家電を買うにしても、一度家電量販店に行って、現物を見てからという人は少なくない。不動産は金額が張る分、なおさらでしょうね」と話す。

今後、オンラインでの不動産営業は「普及してほしいし、普及すると思う」というAさんだが、数年単位での実現は困難との見方も示す。

「今、不動産業界で働くプレーヤー、特に40代後半以上の人は、『足で稼げ』と教わって育ってきた世代。インターネットを通じてのやり取りは冷たいと感じたり、足しげく通うことで(顧客に)かわいがられるという根強い意識を持っていたりすると思います」

反対に、顧客側もネットだけで済ませるより、何度も直接接してくれる営業マンを信頼しやすいということもあるのかもしれない。「こういった意識が変わらない限り、そして世代が変わらない限り、不動産業界でのオンライン化は難しいとも感じています」(Aさん)

ネックはやはり「オンライン内見」

今回取材を行った不動産会社では、顧客とのオンラインでのやり取りに抵抗はあまり感じていない反面、前述の通り「一番のネックは内見」と指摘する声が多かった。

1人で営業活動を行っている大阪府の不動産会社社長は、「いずれは不動産業界もオンライン化の時代が来るだろう」と見ている。収益物件の仲介をメインに行う同社だが、遠方の顧客も多いため、従来、顧客との商談も電話でのやり取りが多かった。その点では、不動産営業のオンライン化に対する抵抗感は薄い。

だが、同社長は「内見のオンライン化は難しい」と指摘する。収益物件の購入を検討する際、物件を訪れ外観や物件内の見学を行う投資家は多い。

もちろん、区分マンションのオーナーチェンジで内見ができない、あるいは判断基準が確立しており、内見の必要がないなどの理由で内見を行わない人も多数いる。ただ、現地に足を運び、購入を検討する物件の立地、あるいは物件そのものに瑕疵がないか、修繕の必要性などを確認、見極めることは重要だ。

「特に中古・築古の一棟ものや戸建て物件では、雨漏りなどの瑕疵がないかをきちんと見たいというニーズは強い。自分の目で直接見ても見抜けないことも多いのに、ビデオなどを使ったオンライン内見ではより難しいでしょう。不動産業界におけるオンライン化で、内見はネックになると思います」

実需物件をメインに、収益物件も取り扱う株式会社「スマイルホーム」(兵庫県)の営業担当者も、「特に中古・築古物件では、中を見ないで買う人はほとんどいない。自分自身も、現地を見ずには買いたくない」と話す。

高齢の顧客では、オンラインでやり取りをするためのツールを使いこなせない、あるいはまったく使えないというケースもあるうえ、「結局は中を一緒に見て、話をする方が良いです。(オンラインでは)うまくいくものがダメになることもあると感じます」として、「オンライン営業はあまり好きではない」と本音を明かした。

入居者による部屋探しなどでオンライン内見などが実施される例はあるが、収益物件の購入となると、投資家の目はシビア。いらぬトラブルを防ぐためにも、オンラインでの内見は避けたいという本音は当然なのかもしれない。