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いまだ収束のめどが立たない新型コロナウイルス。営業を再開する店舗も増え始めたが、不動産オーナーは気を緩めるわけにはいかない。長引いたコロナ禍の影響で今後、入居者の家賃滞納が増加する可能性があるからだ。

飲食店などのテナント物件はもちろんだが、留学生や就労目的で来日中の外国人入居者は、長期間に及んだ経済自粛の煽りを受け、日本人以上に厳しい生活を余儀なくされている人もいる。そんな外国人入居者と向き合う物件オーナーには今後、どのような心配りや注意が求められるのか。外国人不動産アドバイザーの佐野真広氏に解説してもらった。

訪日外国人「99.9%減」の衝撃

外国人旅行者が押し寄せていた日本国内の様相が、今年2月から一変した。

日本政府観光局によると、今年4月の訪日外国人客は推計2900人、前年同月比で99.9%減と記録的な減少となった。本稿執筆時点(5月中旬)でも、政府はおよそ100の国や地域からの外国人の入国を原則拒否している。今後少なくとも数カ月は、日本国内の外国人数増加は見込めないだろう。

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ただ、この数字はあくまで新たに来日した外国人旅行者を含めた数。国内には当然、コロナ禍以前から定住する外国人就労者や留学生もいる。

昨年6月末時点で、国内における在留外国人数は280万人を越えていた。現在も相当数の外国人が日本国内に留まっていることになる。当然、彼らの中にはコロナの影響で仕事やアルバイトを奪われた者も少なくなく、家賃が払えなくなる可能性もある。彼ら外国人入居者との家賃トラブルを事前に防ぐために、オーナーにはどのような対応が必要になるのだろうか。

「巣ごもり」で仲間を部屋に招く機会が増え

家賃保証会社の元社員で、主に外国人入居者のトラブル解決に携わってきたという高橋正志氏(仮名)に話を聞くと、「現在のような未曾有の事態には、面倒でも物件オーナーが自らの足で外国人入居者のもとに顔を出すべきです」とこう続ける。

「トラブルを起こす外国人入居者の共通点として、オーナーや管理会社とのコミュニケーション不足が挙げられます。特に、外出自粛などで自宅で過ごす時間が長い場合、外国人は親しい仲間を頻繁に自室に呼ぶ傾向が強まります。その結果、自宅でパーティーをして騒いだり、部屋を乱雑に扱ったりするリスクが高まるのです。こうしたトラブルを回避するためにも、オーナー自身が可能な限り入居者のもとに足を運びコミュニケーションを取ることが大切です」

オーナーが入居者に対し「気にかけているよ」という意思表示をするだけでも、入居者のマナーや部屋の使い方は変わり、部屋の汚損や破損に対する一定の抑止効果も見込めるという。遠方に物件があるオーナーは近場の不動産管理会社に連絡して、担当者に訪問してもらうのも1つの手だろう。

「言葉の不安を抱えるオーナーもいると思います。ただ、日本に住んでいる外国人であれば、最低でも片言の日本語は話せる。普段外国人と接するオーナーは少ないかもしれませんが、ここは日本ですから積極的に日本語で声をかけていくべきです。外国人は概して声をかけられることに慣れています。早口ではなく、ゆっくりはっきりした言葉で話せば入居者も耳を傾けてくれるはずです」(高橋氏)

不正入居、無断帰国を避けるために

外国人入居者との対面が実現したら、次に心がけたいのが「不正入居者」の有無、そして日本での「勤務先、緊急連絡先の再確認」だ。

前者は、外国人入居者にありがちなトラブルの1つ。知らないうちに友人、知人が一緒に住んでいるケースは少なくない。特に首都圏では「少しでも家賃を抑えたい」と勝手にワンルームなどでルームシェアを始める外国人入居者は後を絶たない。

筆者も昨年末、外国人入居者が住む横浜市内のワンルームマンションを訪問した際、20平米の部屋に入居者を含めた5人が暮らしている場面に遭遇した。注意した後は、複数入居はなくなったようだが、外国人は入居時、重要事項説明で複数人入居の禁止を伝えても「自室で友人と一緒に住むこと」を悪い事だとは思わない。このため外国人には入居後に改めて理解してもらう必要がある。

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後者の「勤務先、緊急連絡先の再確認」は今後、コロナ禍で入居者が退去する可能性もあるため確実に把握しておかなければならない。通常、外国人が賃貸物件を契約する場合、家賃保証会社は、契約者が就労者であれば勤務先や同僚の連絡先、留学生であれば学校やクラスメイトなどの連絡先を確保する。

だが、現在のような国難とも言える状況では、入居者だけでなく緊急連絡先の外国人も一斉に帰国してしまう可能性がある。その場合、音信不通になり結果的に家賃滞納や無断退去に繋がりかねない。リスクを避けるためにも、オーナー自身が入居者各自の最新の緊急連絡先を把握しておくべきなのである。最低でも1年に1回は連絡先を確認しておきたい。

前出の高橋氏も最悪の事態に備え、物件オーナーにこう警鐘を鳴らす。

「外国人入居者を受け入れる利点は、建物や部屋の細かい点を気にせずに入居してくれること。しかし反面、日本で何か起こった場合に無断で帰国したり行方がわからなくなったりするという懸念もあります。実際、2011年の東日本大震災直後には、首都圏や東北地方に暮らしていた外国人が一斉に帰国し、物件を管理するオーナーや不動産会社、家賃保証会社は、入居者や緊急連絡先の人物と連絡が取れず大混乱に陥りました。家賃も払わず夜逃げのような形で帰国した人もいたため、物件オーナーの中には甚大な損害を被った方もいます」

今回の新型コロナの影響はいまだ続いており、在留外国人の動きも予測不能だ。管理会社や家賃保証会社に頼るだけではなく、オーナー自身が入居者からできるだけ新しい情報を入手しておく必要があるだろう。

「日頃から緊急連絡先を更新できるような関係性を築いておけば互いの安心にも繋がる。家賃滞納や夜逃げのようなリスクも避けられる場合が多いので、今回の災禍を機に是非実践してもらいたいです」(高橋氏)

最後に、今回紹介した内容をまとめておく。外国人入居者とのトラブルを回避するために、以下の3点を覚えておいてほしい。

1. 積極的にコミュニケーションを取る

2. 「不正入居者」の有無を確かめる

3. 日本の「勤務先、緊急連絡先」を定期的に確認する

入居者を確保し継続的な家賃収入を得るためには、管理会社に「お任せ」にせず、オーナー自ら学び、行動することは重要だ。特に外国人入居者を受け入れる場合、積極的な行動が不可欠といえる。

コロナの影響が続き、以前のような日常にいつ戻れるかは不透明だが、21年には今年延期された東京五輪も控えており、外国人との共生が求められる時代であることは間違いない。物件オーナーは今から準備や備えをしておきたい。

(佐野真広)